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攻略キャラは男前と決まっている
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明日からでもぜひお願いしたい、とのことだったので、俺は翌日、ウキウキしながら学校へ向かった。
寮に入る前に、試しに絵画モデルの仕事をするように言われた為、二階にある美術室に来ていた。
(俺が知ってる美術室じゃない!講演会ホール並にでかい!)
中を覗くと、ホールの中央に円形のステージがあり、そのステージを取り囲むように、百個以上の椅子が並べられている。
(まさか、あの中央のステージに俺が行くのか!?こんな大人数に取り囲まれると思ってなかった······ヤバい、緊張してきたぞ。)
少しすると、授業を受ける生徒達がぞろぞろと教室の中へ入っていく。制服は来ておらず、性別も年齢も様々だ。
美術教師の女性が俺のところへ来て、軽く説明をしてくれた。
「クライン様から聞いてます。イアン君ね?絵画モデルは初めてよね?引き受けてくれてありがとう。ただ楽にしていてくれればいいから、あまり緊張しないでね。この学校は、美術を学びたい民間人向けに作られた学校なの。もちろん貴族もいるけど、性別、年齢、身分は関係ないわ。」
「あの、質問なんですが、例えば顔が痒くなったら、かいたりしていいんでしょうか?くしゃみはしても?」
「あはは!君面白いわね。もちろん大丈夫よ。大きくポーズを変えなければ、リラックスしてもらっていいの。途中眠くなってしまうモデルさんもいるのよ。」
転生前の授業中であれば、眠くなってあくびを噛み殺しても、うつらうつらして先生が見てるときだけ起きているふりをしてもバレなかったが、ここではきっと大勢にバレてしまうだろう。
「それにしても、イアン君は本当に一般人?学生の絵画モデルにしてはあまりにきれいだからビックリしたわ。本当のモデルさんみたい。」
容姿だけは良くしてくれたゲームの作者に感謝した。人間顔じゃないとはよく言うが、顔が良ければ舞い込んでくる仕事があるのだ。
俺は、渡された白いシャツに着替え、緊張していると悟られないよう、なるべく堂々として教室に入った。
学生達が、一斉にこちらを見た。じっと見られているのが伝わってくる。
何でもない風を装い、ステージの上の椅子に座った。足を組んで、考え込むようなポーズをしてくれと言われたので、その通りにした。
(今から俺は、『考える人』だ。)
教師の合図と共に、一斉に学生達がデッサンを始めた。みんな俺を見つめながら、一心不乱に画用紙に鉛筆を走らせている。
俺を見ているというよりは、俺という物体を見ているんだ、そう考えたら、段々と緊張がほぐれてきた。
1時間ほどすると、俺はだんだん退屈になってきて、学生一人一人にあだ名をつけるという失礼な暇潰しを始めた。
(あいつは、太ってて色白だから『魔神グウ』だろ、あの娘は、髪がくるくるだから『トイプードル眼鏡』だ。)
そして、俺は一人の学生に目が止まった。とんでもない美形のやつがいて、明らかに周りから浮いている。
俺の記憶が正しければ、アイツは確か······
攻略対象の一人、ソラの親友、ブライトだ。
ブライトは平民の幼馴染という設定だったが、この美術学校に通っているという裏設定があったのか·····ということは、ソラの知り合いだ。絶対に関わってはいけない!
ブライトは、金髪だが、俺のようなプラチナブロンドではなく、茶に近いような落ち着いた色の髪色をしている。肩ほどまである髪を後ろにくくり、目も髪と同じ色をしていた。意思の強そうなキリッとした目と眉が印象的で、美青年というよりは、男前という雰囲気である。
俺が凝視していたせいか、ブライトは俺と目が合うと、口の端で少し笑ったようにみえた。
俺はあわてて目線を反らし、時間まで問題なくモデルの初仕事を終えた。
「イアン君お疲れ様!君、学生達から好評だったわよ!書き甲斐があるって。イアン君が出る授業は人気になるかもね~。とにかく、君を寮に案内するように言われてるの。付いてきて!」
女性教師はそう言うと、俺を連れて学生寮を案内してくれた。
寮の部屋の中は、俺の知る一般的な寮と同じような雰囲気だった。二人一組の部屋に二段ベッドがある。
「君の他に、既にもう一人この部屋を使ってるから、その子が来たら仲良くしてね。」
そう言うと教師は出ていった。
(寮の二段ベッドだ!ちょっと憧れてたんだよなぁ。どんなやつが相部屋なんだろう!)
俺が期待に胸を膨らませて待っていると、この部屋の先の住人が戻ってきた。
「───あ、今日から転入生?あれ?あんたさっきのモデル·······この部屋の相方だったんだ?」
そいつは先程絶対に関わりたくないと願った男前の学生だった。
相方はブライトだったのか───!!
BLゲームだし、まぁそうなるよな·····
とりあえず、ここにいる間は仲良くしておくに越したことはない!ソラと知り合いなのは黙っておこうと俺は決めた。
「僕はイアン。今日からよろしくお願いします。」
俺が握手を求めると快く握手を返してくれた。
「俺はブライト。よろしくなイアン。」
ブライトは快活そうな笑顔を浮かべていた。なんとなくだがいいやつそうで良かった。
こうして、俺の美術学校での生活が始まったのだった。
寮に入る前に、試しに絵画モデルの仕事をするように言われた為、二階にある美術室に来ていた。
(俺が知ってる美術室じゃない!講演会ホール並にでかい!)
中を覗くと、ホールの中央に円形のステージがあり、そのステージを取り囲むように、百個以上の椅子が並べられている。
(まさか、あの中央のステージに俺が行くのか!?こんな大人数に取り囲まれると思ってなかった······ヤバい、緊張してきたぞ。)
少しすると、授業を受ける生徒達がぞろぞろと教室の中へ入っていく。制服は来ておらず、性別も年齢も様々だ。
美術教師の女性が俺のところへ来て、軽く説明をしてくれた。
「クライン様から聞いてます。イアン君ね?絵画モデルは初めてよね?引き受けてくれてありがとう。ただ楽にしていてくれればいいから、あまり緊張しないでね。この学校は、美術を学びたい民間人向けに作られた学校なの。もちろん貴族もいるけど、性別、年齢、身分は関係ないわ。」
「あの、質問なんですが、例えば顔が痒くなったら、かいたりしていいんでしょうか?くしゃみはしても?」
「あはは!君面白いわね。もちろん大丈夫よ。大きくポーズを変えなければ、リラックスしてもらっていいの。途中眠くなってしまうモデルさんもいるのよ。」
転生前の授業中であれば、眠くなってあくびを噛み殺しても、うつらうつらして先生が見てるときだけ起きているふりをしてもバレなかったが、ここではきっと大勢にバレてしまうだろう。
「それにしても、イアン君は本当に一般人?学生の絵画モデルにしてはあまりにきれいだからビックリしたわ。本当のモデルさんみたい。」
容姿だけは良くしてくれたゲームの作者に感謝した。人間顔じゃないとはよく言うが、顔が良ければ舞い込んでくる仕事があるのだ。
俺は、渡された白いシャツに着替え、緊張していると悟られないよう、なるべく堂々として教室に入った。
学生達が、一斉にこちらを見た。じっと見られているのが伝わってくる。
何でもない風を装い、ステージの上の椅子に座った。足を組んで、考え込むようなポーズをしてくれと言われたので、その通りにした。
(今から俺は、『考える人』だ。)
教師の合図と共に、一斉に学生達がデッサンを始めた。みんな俺を見つめながら、一心不乱に画用紙に鉛筆を走らせている。
俺を見ているというよりは、俺という物体を見ているんだ、そう考えたら、段々と緊張がほぐれてきた。
1時間ほどすると、俺はだんだん退屈になってきて、学生一人一人にあだ名をつけるという失礼な暇潰しを始めた。
(あいつは、太ってて色白だから『魔神グウ』だろ、あの娘は、髪がくるくるだから『トイプードル眼鏡』だ。)
そして、俺は一人の学生に目が止まった。とんでもない美形のやつがいて、明らかに周りから浮いている。
俺の記憶が正しければ、アイツは確か······
攻略対象の一人、ソラの親友、ブライトだ。
ブライトは平民の幼馴染という設定だったが、この美術学校に通っているという裏設定があったのか·····ということは、ソラの知り合いだ。絶対に関わってはいけない!
ブライトは、金髪だが、俺のようなプラチナブロンドではなく、茶に近いような落ち着いた色の髪色をしている。肩ほどまである髪を後ろにくくり、目も髪と同じ色をしていた。意思の強そうなキリッとした目と眉が印象的で、美青年というよりは、男前という雰囲気である。
俺が凝視していたせいか、ブライトは俺と目が合うと、口の端で少し笑ったようにみえた。
俺はあわてて目線を反らし、時間まで問題なくモデルの初仕事を終えた。
「イアン君お疲れ様!君、学生達から好評だったわよ!書き甲斐があるって。イアン君が出る授業は人気になるかもね~。とにかく、君を寮に案内するように言われてるの。付いてきて!」
女性教師はそう言うと、俺を連れて学生寮を案内してくれた。
寮の部屋の中は、俺の知る一般的な寮と同じような雰囲気だった。二人一組の部屋に二段ベッドがある。
「君の他に、既にもう一人この部屋を使ってるから、その子が来たら仲良くしてね。」
そう言うと教師は出ていった。
(寮の二段ベッドだ!ちょっと憧れてたんだよなぁ。どんなやつが相部屋なんだろう!)
俺が期待に胸を膨らませて待っていると、この部屋の先の住人が戻ってきた。
「───あ、今日から転入生?あれ?あんたさっきのモデル·······この部屋の相方だったんだ?」
そいつは先程絶対に関わりたくないと願った男前の学生だった。
相方はブライトだったのか───!!
BLゲームだし、まぁそうなるよな·····
とりあえず、ここにいる間は仲良くしておくに越したことはない!ソラと知り合いなのは黙っておこうと俺は決めた。
「僕はイアン。今日からよろしくお願いします。」
俺が握手を求めると快く握手を返してくれた。
「俺はブライト。よろしくなイアン。」
ブライトは快活そうな笑顔を浮かべていた。なんとなくだがいいやつそうで良かった。
こうして、俺の美術学校での生活が始まったのだった。
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