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嵌められた俺

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 つかつかとこちらに歩いてきたレインは、ソラに馬乗りになっている俺の胸ぐらを掴み、プールの中に思い切り投げ飛ばした。

 水しぶきと共に俺の体が水中に沈んだ。大量の水を飲んでしまった俺は、咳き込みながらもあわててプールから上がろうと、プールサイドまで泳いできたが、またしてもレインから蹴り飛ばされ水の中に沈んだ。
「····レインやめろよ!もういいって!!」
「やっぱりな!こいつは演技してたんだ。お前をひどい目に合わせてやろうと狙ってた!!!」
 レインが怒りに任せて叫んでいる。
 ソラは既に服を着ており、レインがソラに「大丈夫か?」と声をかけ肩をさすっていた。

 ようやくプールサイドにたどり着いた俺は、苦しくてゲホゲホと咳き込んだ。
 (レインが怒るのは分かる!この状況はどう見ても俺がソラを襲ったようにしか見えない!でも、ソラは!?なんで本当のことを言ってくれないんだ!?)
 素っ裸の俺は、レインの前に手をついて得意の土下座をし、弁解しようとした。
「レイン様!ち、違うんです!僕が一人でプールで泳いでいたところ、ソラが来て、一緒に泳いでたんです。そしたら、下の毛を見たいって言われて、それで、それで·····」
「訳が分からないことをぬかすな!嘘をついてるな?しどろもどろだぞ。」
「レイン····!イアンを責めないで。途中までは普通に遊んでたんだ。でも、途中からスイッチが入っちゃったみたいで·····」
 スイッチが入ったのはお前だろうが!!俺は迂闊だった。ソラは、清純ヒロインじゃなく、腹黒ヒロインだったのだ。
 まんまと嵌められた俺は、この状況を打開する方法が思い付かなかった。
「お前は朝までここから出るな。日が登ったら、お前の処遇について考える。」
 そう言い捨てて、レインとソラはその場からいなくなった。

 びしょ濡れの俺は、とりあえず服を着て、体操座りで余命を待った。
 夜が明けたら、俺はきっと死ぬに違いない。

 ◇

 無情にも朝垣もがきた。ちろん俺は一睡もできなかった。

 レインが無表情で呼びに来て、「帰るぞ。」と言った。
 この場で手首を切り落とされるか、殺されるものかと思ったので、余命が少しでも伸びほっとした。

 馬車に乗り込み帰りの山道を走っていると、突然レインが
「馬車を止めろ!」
 と怒鳴った。

 すぐに馬車がとまり、俺とソラは何事かとレインを凝視した。
「降りろ。」
「へ?」
「イアン!お前は降りろ!!」
 俺はレインに腕を掴まれ、強引に馬車から引きずり降ろされた。
「え·····レイン様、ここで降ろされましても、私はどうしたら·····!!」
 俺が泣いて縋ると、レインは冷たい目で言い放った。
「もうお前は俺の侍従でも何でもない。どこへでも行け。二度と顔を見せるな!」
 レインから突き飛ばされ、俺は地面に転がった。その時ソラが俺に駆け寄り、耳元で囁いた。
「イアン、ごめんね。レインに君を捨てさせるには、こうするしかなかったんだ。夕方になったら、僕が迎えに来る。ここから一番近くの噴水がある公園の、時計台の下で待ってて。」
 何を言ってるんだこいつは?と、俺はぼんやりとソラを見つめた。
「ソラ、放っておけ。行くぞ」
 ソラは意味ありげな目で俺を見つめ返した後、馬車に乗り込み、二人を乗せた馬車は去ってしまった。
 俺は泥だらけで座り込んでいた。
 (これからどうしよう。ソラが迎えに来るとか言ってたけど、どうせまた俺を嵌める気なんだ。このままだとの垂れ死ぬ······もう一度、レインの屋敷に行って、今度は平謝りして許してもらうしかない。昨日は言い訳してしまったからダメだったんだ。性格的に、魔が差したとか言って本気で謝ったら情けをかけてくれる気がする。)

 一縷の望みをかけて、俺は町に向かって山道を歩き続けた。
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