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メアリの告白

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 アリオンとクロエが、昼食を食べるために屋上に向かう途中、食堂の方から女子生徒の悲鳴が聞こえた。

 何事かと思っていると、食堂で一部始終をみた男子生徒が、

「メアリって女子生徒が、ナイフ持ってる!」

 と周囲に言い回っていた。

 食堂には、リナリーやラリー、イオもいるかもしれない。クロエは心配になってきた。

「近くまで行ってみよう。」

 クロエは頷くと、アリオンと一緒に食堂へ走った。

 ◇

 メアリは、目を血走らせて、ナイフを両手に構え、周りを威嚇していた。

「セリーナ!!!!!」

 緊迫した食堂にメアリの声が響き渡った。

 メアリは、一歩、また一歩とセリーナににじり寄っていた。

 セリーナは、メアリの狙いが自分だと分かり、目の先に見えたイオ達の席へ逃げてきた。

「イオ助けて・・・!」

 セリーナはイオの背中に隠れ、震えていた。

「全部、あんたのせいよ!!!」

 メアリは正気じゃないのか、顔色が悪く、髪もボサボサだった。

「ルイに襲われたって?あんた、ルイを掌で転がして遊んでたじゃない!!アリオンに乗り換えて、ルイを切り捨てたんでしょ?それで、今はその子がターゲット??ルイは退学させられて、家からも勘当され、追い出されたわ。私には分かってる。あんた、ルイを嵌めたんでしょ?」

 メアリは語り続けた。

「それに、花祭りの日、あんた、襲われたクロエの傷を治したって、英雄扱いされてたわね。」

「あの男はね、私が雇った!あんたに薬品をかけるよう、私が依頼したの。そうしたら、あの男、よりにもよって、クロエにかけてしまった・・・!!」

「クロエでもアリオンでもなくて、あんたが被るはずだったのよ、セリーナ!!」

 その話が聞こえたアリオン、クロエ、イオ、リナリー、ラリーは、あの日の真実に驚いていた。

「人のものばっかり奪いやがって!!!あんたなんか死ねー!!!」

 メアリが半狂乱になって叫んだとき、近くにいた男子生徒が、一瞬の隙をついて、メアリを取り押さえた。

 その後、教師達がすばやくメアリからナイフを取り上げ、メアリは拘束されながら連れていかれた

 誰も怪我人が出なかったので、クロエはほっとした。

 それも束の間、皆セリーナを見て、ざわざわと噂し始めた。

「え?セリーナがルイを嵌めたの?」

「アリオンとクロエが婚約解消になったのも、セリーナが原因?」

「セリーナの代わりに、クロエが怪我したの?」

 皆がざわざわとし始め、セリーナはイオの後ろから飛び出し、大声で反論し始めた。

「違うのよ!!!メアリは頭がおかしいのよ!?見たでしょ?ナイフなんか持って・・・!!」

 確かに、メアリの思い込みである可能性はあったが、メアリは大人しく、模範的な生徒だった。

 そんな生徒をあそこまで半狂乱にさせるとは、セリーナにも何か問題があるのでは、と皆に思わせるのには十分な出来事だった。

「私のせいじゃない!!」

 と言ったセリーナに対し、リナリーが面と向かって口を開いた。

「メアリの話が本当だとしたら、今までの事全部辻褄が合うんだけど?あんたさ、イオに近付くために、ルイに襲われたって嘘ついたんでしょ?あの時間、武道場にイオが行くこと知ってたもんね。」

 リナリーがそういうと、セリーナは

「何ですって!?いい加減なこと言ってんじゃないわよ!このクソ女!!」

 と叫んだ。セリーナのあまりの豹変ぶりに、男子生徒は皆引いてしまっていた。

「ねぇ!なんとか言って、イオ!!」

 セリーナは、イオの腕を掴み、甘えた声で必死に助けを求めた。

 イオは険しい顔つきでセリーナを見つめた後、

「セリーナ。さっきの話、俺には本当の話に聞こえた。メアリが一番悪いのは間違いないけど。君の日頃の行いのせいで恨まれて、代わりにクロエが怪我したんだとしたら・・・俺はもう、君の顔見たくない。」

 セリーナは絶望的な顔になった。

「イオ!!違うのよ・・・聞いてっ!」

「もう俺に話しかけんな。どっか行って。」

 イオに冷たく突き放されたセリーナは、泣きながら食堂を出ていった。
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