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近づく2人

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翌日から、ルイは学園に来なくなった。

セリーナとイオの証言から、ルイがセリーナに対して乱暴をしようとしたと判明し、学園を退学となった。

ルイは最後まで「セリーナに呼び出された。乱暴はしていない。」と否定していたが、状況的に信憑性が薄いと判断されたのだった。

ルイを殴ったイオに関しては、暴力は良くないが、女子生徒を守ろうとした行動は処分に値しないとして、おとがめなしとなった。

セリーナは、あんなことがあったのに、翌日から学園に来ていた。

そして、登下校時や昼休み、休み時間など、セリーナの隣にはなぜかいつもイオがいるようになっていた。

リナリーがイオに、

「なんであんた、いつもセリーナにくっついてるわけ?」

と聞くと、

「セリーナは、襲われたことで人間不信になったらしいんだよ。で、最初に発見したのが俺だったから、当分落ち着くまでは、俺が近くにいた方が安心するって言われてさ。先生たちも、『それなら、君ができる限り付き添ってあげて』って感じで頼まれちゃって・・・」

「はぁ??なんであんたがそこまでしなくちゃいけないのよ?セリーナ無事だったんでしょ?断りなよ!」

リナリーがそういうと、ラリーが反論した。

「リナリーは人の心がないの??セリーナは、健気に学校に来ようとしてるんだよ。イオがいれば安心するんだったら、助けてあげるべきだろ?セリーナはクロエの恩人でもあるんだぞ!」

2人の口論をあわあわして聞いていたクロエは、名前を出された瞬間ビクっとした。

セリーナとイオが、常に一緒にいるのはすごく嫌だったし、もう2度とアリオンの時のような思いはしたくないと思っていた。

しかし、セリーナがクロエの危機を助けてくれたのは本当に感謝している。

今がセリーナの危機であるのなら、クロエはセリーナが回復するよう、応援しなくてはならなかった。

「そうよ。セリーナは私のこと助けてくれたもの。襲われた時はすごく怖かったはずだし、イオといると安心するなら、手助けしてあげた方がいいと思う。」

クロエがそう言うと、リナリーは何か言いたげだったが、それ以上は言い返してこなかった。

イオは、少し複雑そうな表情を浮かべ、

「分かってくれてありがとう、クロエ。時間がある時は、いつもみたいにみんなと過ごしたい。」

と言った。

(イオならきっと大丈夫。優しいから断れなかっただけ。私に待っててって言ったもの。私が信じなきゃ)

クロエはそう自分に言い聞かせていた。

しかし、その後しばらくしても、イオが時間を作れることは少なくなり、前のように4人で昼食を食べることもなくなってしまった。

あの秘密の丘なら、セリーナの相手に疲れたイオが来るかもしれないと思ったが、いつ行っても、イオが現れることはなかった。

ある日、クロエはセリーナとイオが一緒にいるところを見かけた。

以前はセリーナに対して、一歩遠慮したような態度を取っていたイオが、まるで4人で過ごしていた時のように、心から気を許し、楽しんで話している様子が伝わってきた。

セリーナに対して疲れているとはどう考えても言い難かった。

相変わらず、セリーナのイオに対する距離は近く、冗談を言ったイオの背中や腕を触ったりしていた。

クロエはそのまま2人に出くわさないよう帰ろうと思ったのだが、逃げるのもおかしいと思い、話しかけてみることにした。

「イオ、セリーナ、こんにちは。」

イオとセリーナがクロエに気づいた。

「クロエ!久しぶり。最近会いに行けなくてごめん。」

イオは申し訳なさそうに言った。

「私からもごめんね。イオを独り占めしちゃって。。。イオと話してると居心地良くて、いつもわがまま言っちゃうの。」

全く申し訳なさそうにセリーナが言った。

『わがままを聞いてくれるほど、セリーナはイオにとって特別な存在である』と自慢されたような気がして、クロエはカチンとした。

「そうだったのね。じゃあ、私も今日はイオを独り占めしてもいい?放課後、2人のあの場所で待ってる。」

わざと『2人のあの場所』という言い方をした。セリーナは知らないはずだ。

イオは、

「分かった。必ず行くよ」

と言った。セリーナは、イオのその言葉が嬉しく、やはりイオの特別は自分なんだと思えた。

しかし、その日の放課後、いくら待ってもイオは現れなかった。
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