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88話 子供たち ーENDー
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穏かな昼下がりにペイサージュ侯爵邸の庭にテントを張り、魔法騎士団の部下たちや親しい友人だけを招待して、ささやかなパーティーが開かれた。
お互いの子供たちを会わせて、友だちを作らせるのが目的のため… 子供たちがはしゃぐ元気な声が響き、大人たちはみんな頬を緩ませている。
その中でも父親にそっくりな、カルムとシュクルの子供たち、アブレミディ男爵家の4人は特に元気だ。
「ディディエ? ばぁ~っ! ばぁ~っ!!」
「あはははっ! あはははっ!」
ソレイユとアンバレの息子ディディエを、カルムの長男が腕に抱き、変な顔をして見せてケラケラと可愛い笑い声をディディエから引き出している。
「まぁ、なんて微笑ましいの? 優しいお兄様に抱っこされて、ディディエはご機嫌だわ! ふふふっ…」
シュクルお姉様とカルムお兄様の子供たちは、本当に面倒見が良いわ!
「4人も子供がいるから… 上の子が自然と下の子の相手をしてくれるようになったの」
シュクルはニコニコと笑う。
4番目に産まれた女の子は、シュクルの長女が抱いて口から出た涎を丁寧にハンカチでふいていた。
子供たちの父親、アンバレやカルムは年長の男の子たちにせがまれ、他の父親たちと一緒に木剣を持ち、剣の稽古をつけていた。
その中にオルドナンス公爵家の息子たちの姿がある。
将来は魔法騎士団の騎士志望だそうだ。
「大丈夫よソレイユ… 子供は親の姿を見て成長するものよ? 侯爵様が息子の相手を良くしてくれるのなら、きっとディディエも下の子が産まれた時は、お父様にならって良いお兄様になるはずだわ」
亡くなったソレイユの母親に代わり、良妻賢母のブルイヤール夫人は子育ての助言をくれる。
「ねぇ、おば様? 私もシュクルお姉様のように、子供を4人産んだ方が良いかしら?」
それなら安心だわ。ディディエが私のお腹にいた時からアンバレ様は息子を溺愛し、ヒマさえあれば、ずっと抱っこしているから…
「ふふふっ…」
シュクルの隣に座るカルムの母ブルイヤール夫人は、腕の中で眠る小さな男の子にキスをすると、ソレイユに微笑んだ。
「……」
アンバレ様がお義母様に頼まれたお金の援助を、キッパリと断ったとたん… リュンヌが産んだリベルテの子が邪魔になり、お義母様はブルイヤール邸に幼い子供を置き去りにした。
自分の孫が可愛くないのかしら?! 信じられない人だわ?!
おば様もおじ様も、子供のことをずっと心配していたから、結果的に引き取れて良かったけれど。
私もアンバレ様のおかげで、あんな人たちと縁が切れて、幸運だった!
新たに作った借金の返済能力がない義母デゼールは、金貸しの手で娼館に放り込まれたというウワサだが… 真実かどうかはソレイユにはわからない。
ソレイユはブルイヤール夫人の腕の中で眠る、男の子の母親ゆずりのふわふわとした金髪に指先で触れる。
長男カルムがアブレミディ男爵となり領地をえたため、ブルイヤール夫妻はリベルテの子を養子にして、ブルイヤール家を継がせる予定だ。
ふと、ソレイユは夫を見ると… 元気な子供たちの相手をしながら、アンバレは額にかいた汗を手でぬぐっていた。
「男性陣と子供たちに、冷たいレモネードを用意した方が、良さそうね…」
ちょうどソレイユが椅子から腰を上げた時… 執事のジェランの案内で王太子クリストフがあらわれた。
「侯爵夫人、私の弟も子供たちの交流会に、参加させて欲しいのだが…?」
王太子クリストフは護衛騎士たちと一緒に、第2王子を連れていた。
弟の母親が廃妃となり、面倒な勢力争いが無くなると… 意外にも王子2人の兄弟仲は良くなった。
冷遇して今までの恨みを晴らすよりも… 幼い弟を受け入れ、王太子クリストフの寛容さを周囲に見せるほうが、有意義だと考えてのことだろう。
「まぁ、殿下… 大歓迎ですわ!」
理由は何であれ、義妹リュンヌのように意地悪をするより、ずっと良いわ! 平和なのが1番よ!!
満面の笑みを浮かべ、ソレイユは王子を受け入れた。
「ありがとうございます、侯爵夫人!」
不安そうに兄クリストフの背後に隠れていた第2王子は、ソレイユの言葉でパッ… と明るい表情に変わった。
ソレイユが子供たちに剣の稽古をつけていたアンバレを見ると… アンバレも王子たちの来訪に気づき、木剣をにぎったまま、こちらにゆったりと歩いて来る。
視線が交わり、ソレイユとアンバレは自然と笑みがこぼれた。
「……」
ああ、幸せだわ!!
ー END ー
ツッコミどころ満載のお話でしたが、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!
また、どこかでお会い出来れば幸いです☆彡
お互いの子供たちを会わせて、友だちを作らせるのが目的のため… 子供たちがはしゃぐ元気な声が響き、大人たちはみんな頬を緩ませている。
その中でも父親にそっくりな、カルムとシュクルの子供たち、アブレミディ男爵家の4人は特に元気だ。
「ディディエ? ばぁ~っ! ばぁ~っ!!」
「あはははっ! あはははっ!」
ソレイユとアンバレの息子ディディエを、カルムの長男が腕に抱き、変な顔をして見せてケラケラと可愛い笑い声をディディエから引き出している。
「まぁ、なんて微笑ましいの? 優しいお兄様に抱っこされて、ディディエはご機嫌だわ! ふふふっ…」
シュクルお姉様とカルムお兄様の子供たちは、本当に面倒見が良いわ!
「4人も子供がいるから… 上の子が自然と下の子の相手をしてくれるようになったの」
シュクルはニコニコと笑う。
4番目に産まれた女の子は、シュクルの長女が抱いて口から出た涎を丁寧にハンカチでふいていた。
子供たちの父親、アンバレやカルムは年長の男の子たちにせがまれ、他の父親たちと一緒に木剣を持ち、剣の稽古をつけていた。
その中にオルドナンス公爵家の息子たちの姿がある。
将来は魔法騎士団の騎士志望だそうだ。
「大丈夫よソレイユ… 子供は親の姿を見て成長するものよ? 侯爵様が息子の相手を良くしてくれるのなら、きっとディディエも下の子が産まれた時は、お父様にならって良いお兄様になるはずだわ」
亡くなったソレイユの母親に代わり、良妻賢母のブルイヤール夫人は子育ての助言をくれる。
「ねぇ、おば様? 私もシュクルお姉様のように、子供を4人産んだ方が良いかしら?」
それなら安心だわ。ディディエが私のお腹にいた時からアンバレ様は息子を溺愛し、ヒマさえあれば、ずっと抱っこしているから…
「ふふふっ…」
シュクルの隣に座るカルムの母ブルイヤール夫人は、腕の中で眠る小さな男の子にキスをすると、ソレイユに微笑んだ。
「……」
アンバレ様がお義母様に頼まれたお金の援助を、キッパリと断ったとたん… リュンヌが産んだリベルテの子が邪魔になり、お義母様はブルイヤール邸に幼い子供を置き去りにした。
自分の孫が可愛くないのかしら?! 信じられない人だわ?!
おば様もおじ様も、子供のことをずっと心配していたから、結果的に引き取れて良かったけれど。
私もアンバレ様のおかげで、あんな人たちと縁が切れて、幸運だった!
新たに作った借金の返済能力がない義母デゼールは、金貸しの手で娼館に放り込まれたというウワサだが… 真実かどうかはソレイユにはわからない。
ソレイユはブルイヤール夫人の腕の中で眠る、男の子の母親ゆずりのふわふわとした金髪に指先で触れる。
長男カルムがアブレミディ男爵となり領地をえたため、ブルイヤール夫妻はリベルテの子を養子にして、ブルイヤール家を継がせる予定だ。
ふと、ソレイユは夫を見ると… 元気な子供たちの相手をしながら、アンバレは額にかいた汗を手でぬぐっていた。
「男性陣と子供たちに、冷たいレモネードを用意した方が、良さそうね…」
ちょうどソレイユが椅子から腰を上げた時… 執事のジェランの案内で王太子クリストフがあらわれた。
「侯爵夫人、私の弟も子供たちの交流会に、参加させて欲しいのだが…?」
王太子クリストフは護衛騎士たちと一緒に、第2王子を連れていた。
弟の母親が廃妃となり、面倒な勢力争いが無くなると… 意外にも王子2人の兄弟仲は良くなった。
冷遇して今までの恨みを晴らすよりも… 幼い弟を受け入れ、王太子クリストフの寛容さを周囲に見せるほうが、有意義だと考えてのことだろう。
「まぁ、殿下… 大歓迎ですわ!」
理由は何であれ、義妹リュンヌのように意地悪をするより、ずっと良いわ! 平和なのが1番よ!!
満面の笑みを浮かべ、ソレイユは王子を受け入れた。
「ありがとうございます、侯爵夫人!」
不安そうに兄クリストフの背後に隠れていた第2王子は、ソレイユの言葉でパッ… と明るい表情に変わった。
ソレイユが子供たちに剣の稽古をつけていたアンバレを見ると… アンバレも王子たちの来訪に気づき、木剣をにぎったまま、こちらにゆったりと歩いて来る。
視線が交わり、ソレイユとアンバレは自然と笑みがこぼれた。
「……」
ああ、幸せだわ!!
ー END ー
ツッコミどころ満載のお話でしたが、最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!
また、どこかでお会い出来れば幸いです☆彡
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