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84話 埋葬
しおりを挟むイフリートとの戦いで騎士の数が半数に減り、王太子の要請とカルムの懇願に負け、アンバレが王立魔法騎士団の団長職に復帰してから1年近く過ぎた。
騎士団長の騎士服に身をつつむアンバレとともに、ソレイユはオルドナンス公爵家の墓地を訪れていた。
「オルドナンス公爵、このたびは快く引き受けて下さり、ありがとうございます」
「聖女エクレラージュ殿は私の先祖でもありますから、当然のことですペイサージュ伯爵、それに奥方も良く来てくださった」
アンバレが丁寧にお辞儀をすると、オルドナンス公爵は気さくに笑った。
「公爵様、お会いできて光栄です」
ああ… オルドナンス公爵様は、エクレラージュ様の恋人ロアン様に良く似ている! 何だか胸がいっぱいになってきた。
ダメだわ、涙がこぼれそう…
胸に小さな息子を抱き、ソレイユもオルドナンス公爵にお辞儀をする。
貴族の集まりに小さな子供を連れて来るのは、マナー違反だと知っているが… ソレイユは自分の息子を、夫の命の恩人エクレラージュに、どうしても会わせたかったのだ。
王宮の霊廟で聖女エクレラージュの聖なる力を使い、ソレイユが呪毒に侵されたカルムや騎士たちの浄化を、大量におこなったあと… エクレラージュの遺体から、急激に聖なる力が失われていることが判明した。
魔法騎士団で1番、魔法が得意な騎士フロアの分析では…
『生きている聖女なら、食事と睡眠、休みをとれば聖なる力は自然と回復していゆくが… 亡くなった聖女の遺体では、使った分の力を回復させる術が無いから、弱まるのは当然ですよ』
今では常人と変わらない程度まで、聖女エクレラージュの遺体に宿っていた聖なる力は弱まっている。
そこでアンバレは王太子クリストフの許可をもらい、オルドナンス公爵家の墓地に埋葬して欲しいと、公爵に依頼した。
遺体が入っていない空の棺だけが埋められた、120年前のオルドナンス公爵ロアンの墓の隣に… 『イフリートと勇敢に戦ったロアンの妻』と彫られた墓石が置かれ、エクレラージュはひっそりと埋葬される。
聖女エクレラージュの埋葬に立ち会った、オルドナンスの神殿の神官長(最初に『聖なる試み』をソレイユとアンバレに提案した神官)が、鎮魂の祈りを捧げた。
「ペイサージュ伯爵、伯爵夫人… よろしければこの後、当時のオルドナンス公爵とエクレラージュ様のお話を聞かせてくれませんか?」
オルドナンス公爵の要望に、ペイサージュ伯爵夫妻は喜んで応じた。
「ええ、もちろんです公爵様! 私も公爵家の皆様にお話しできたらと、ずっと思っていました」
私の中のエクレラージュ様の記憶が、時とともに消えてしまう前に、ぜひお話ししたいわ!
この日からペイサージュ伯爵家と、オルドナンス公爵家の交流が始まった。
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