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72話 イフリートの獲物2
しおりを挟むアンバレはもう一度、風のをイフリートにぶつけてはね飛ばす。
「殿下、イフリートは竜輝石の魔力を狙っているようです!」
「やはり、伯爵もそう思うか?!」
「はい!」
「クソッ…!」
「このまま戦っても全員が死に、竜輝石の杖をイフリートに奪われることになるでしょうね…」
話をしながらアンバレは、王太子から遠ざけようとイフリートに連続で、風の玉を打ち込んだ。
「最悪だな…!」
王太子もアンバレに負けず、すかさず大きな氷の玉を作り、イフリートにぶつけてはね飛ばす。
攻撃でダメージは与えられないが、はね飛ばすことだけは出来るのだ。
「殿下、杖が持つ魔力を、一撃につぎ込んでみては?!」
「奪われる前に、竜輝石の魔力を使いきれということか?!」
「はい」
「そうだな… やってみよう!」
「申し訳ありません、殿下!」
正直、ここまで攻撃が通じないとは思わなかった! 竜輝石の杖があれば、もっと有利に戦えるのではないかと、希望を持っていたが、私の考えが甘かった!
思わずアンバレは苦笑いを浮かべた。
「いや、伯爵がそこまでいうなら仕方ない!」
王太子が竜輝石の杖を構えると、いっきに周囲の温度が下がり始め… 瓦礫の山をはうようにゆらゆらと燃えていた、暗く青い炎が冷気の膜につつまれ、凍りつく。
ガアアァァァァ――――――!!!!
杖を奪おうと活発に動いていたイフリートは、宙に浮かんだままピタリと止まり、不気味な雄叫びあげた。
「……っ」
すごい冷気だ!!
隣に立つアンバレのはく息は白く、騎士服も王太子の魔法に影響をうけ、ぱりぱりと表面が凍りついていた。
宙に浮かぶイフリートの足の下に巨大な魔法陣が発現した。
続けてイフリートの頭の上、左右の側面、背面、前面と順番に魔法陣があらわれ、ギュッ… と魔力を凝縮させるように縮んだ。
「おお…! 殿下の魔法で、イフリートの炎が消えて行く!」
近くにいた王太子の護衛騎士が、歓喜の声をあげる。
イフリートを覆うように燃えていた青い炎がじょじょに小さくなり…
ガアアァァァァ―――!! ガアアァァァァ―――!!
罠にはまった獣のようにさけび、頭の上に浮いていたイフリートは地面にドサッ…!! 落下した。
王太子が放つ魔法の冷気はさらに強まり、イフリートを分厚く覆うとビシッ! ビシッ! と音を立てて氷の棺を作りあげる。
竜輝石の魔力をすべて使い切るまでには至らなかったが、氷に覆われたイフリートは完全に動きを止めた。
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