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71話 イフリートの獲物
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大量の瓦礫に阻まれアンバレたちが、地下から出ることに苦労していると… イフリートに捕まった新人騎士たちが、魔力を奪われ足からボロボロと砕け散ってゆく姿を目の当たりにした。
「イフリートは… 人間の魔力を喰っているのか?!」
王太子がぼうぜんとイフリートを見あげてつぶやいた。
「殿下! 捕まった騎士たちに、イフリートが気を取られているうちに、我々はこの大穴からの脱出を急ぎましょう!」
イフリートに捕まった新人騎士たちには悪いが、今は王太子殿下を優先しなくてはならない!
「ああ、そうだな!」
アンバレが王太子と騎士たちを急かすと… コンプレスが王太子に声をかけた。
「王太子殿下、竜輝石の杖を、私にお貸しください!」
「何をする気だ?」
瓦礫を登りながら、王太子はいぶかし気な顔をしたが、コンプレスに竜輝石の杖を手渡す。
「この杖の魔力を使えば私でも…」
杖を受け取ったコンプレスが杖をかざすと、瓦礫の間から植物つるが何本も生え、騎士の1人にのびて巻きつきそのまま地上へと押し上げた。
思わずアンバレは感嘆の声をあげる。
「コンプレス殿は緑の魔法の使い手でしたか!」
「はい、攻撃魔法は不得意ですが、この程度なら杖があれば…」
次々と騎士たちを植物のつるで押し上げ、あっという間に全員が力ら地上へ出ることができた。
上の建物が吹き飛び大穴と化した地下から、全員が無事に脱出したところまでは良かったが… コンプレスの魔法がイフリートの目を引いてしまう。
ボロボロと身体が崩れ落ちた新人騎士たちを放り出し、イフリートがまっすぐコンプレスに向かって下りて来た。
「ひっ…!!」
戦いに慣れていないコンプレスは、声にならない悲鳴をあげて、恐怖で棒立ちになる。
コンプレスの背後にいたアンバレは、咄嗟に大きな風の玉をつくりイフリートにぶつけて、はね飛ばす。
「全員、攻撃を開始しろ――!!」
王太子の号令で、騎士たちはそれぞれの魔法でいっせいに攻撃を開始した。
コンプレスから杖を受け取り、王太子も一度に何十もの氷の矢を作り、イフリートに次々と打ち込んだ。
……だが、いくら攻撃をしても青い炎に阻まれ、イフリートに届く前にすべてかき消えてしまう。
アンバレはチラリッ… と王太子を見た。
イフリートに有効だと言われる王太子が持つ氷結の魔法でも、決定的な打撃を加えられずにいる。
「クソッ…! これだけ猛攻を加えているのに、少しも手ごたえが無い!」
ソレイユから聞いた、聖女エクレラージュの記憶通りだ! 通常の攻撃ではまったく歯が立たない。
騎士たちの攻撃をものともせず… イフリートは狙いをコンプレスから王太子へ変え、突進してきた。
「殿下!!」
アンバレはもう1度、大きな風の玉をぶつけて、イフリートをはね飛ばす。
イフリートはまた、王太子を狙い突進する。
何度か同じことを繰り返すうちに、アンバレは不意に気がついた。
「……っ!」
そうか! イフリートはコンプレス殿や王太子殿下を狙っているのではなく… 大量に魔力を含有する竜輝石の杖を狙っているのか?!
アンバレの読みは正しかった。
その証拠に、王都の街には簡単に手に入る無力な人々が暮らしているが、イフリートはこの場を離れようとはしなかった。
「イフリートは… 人間の魔力を喰っているのか?!」
王太子がぼうぜんとイフリートを見あげてつぶやいた。
「殿下! 捕まった騎士たちに、イフリートが気を取られているうちに、我々はこの大穴からの脱出を急ぎましょう!」
イフリートに捕まった新人騎士たちには悪いが、今は王太子殿下を優先しなくてはならない!
「ああ、そうだな!」
アンバレが王太子と騎士たちを急かすと… コンプレスが王太子に声をかけた。
「王太子殿下、竜輝石の杖を、私にお貸しください!」
「何をする気だ?」
瓦礫を登りながら、王太子はいぶかし気な顔をしたが、コンプレスに竜輝石の杖を手渡す。
「この杖の魔力を使えば私でも…」
杖を受け取ったコンプレスが杖をかざすと、瓦礫の間から植物つるが何本も生え、騎士の1人にのびて巻きつきそのまま地上へと押し上げた。
思わずアンバレは感嘆の声をあげる。
「コンプレス殿は緑の魔法の使い手でしたか!」
「はい、攻撃魔法は不得意ですが、この程度なら杖があれば…」
次々と騎士たちを植物のつるで押し上げ、あっという間に全員が力ら地上へ出ることができた。
上の建物が吹き飛び大穴と化した地下から、全員が無事に脱出したところまでは良かったが… コンプレスの魔法がイフリートの目を引いてしまう。
ボロボロと身体が崩れ落ちた新人騎士たちを放り出し、イフリートがまっすぐコンプレスに向かって下りて来た。
「ひっ…!!」
戦いに慣れていないコンプレスは、声にならない悲鳴をあげて、恐怖で棒立ちになる。
コンプレスの背後にいたアンバレは、咄嗟に大きな風の玉をつくりイフリートにぶつけて、はね飛ばす。
「全員、攻撃を開始しろ――!!」
王太子の号令で、騎士たちはそれぞれの魔法でいっせいに攻撃を開始した。
コンプレスから杖を受け取り、王太子も一度に何十もの氷の矢を作り、イフリートに次々と打ち込んだ。
……だが、いくら攻撃をしても青い炎に阻まれ、イフリートに届く前にすべてかき消えてしまう。
アンバレはチラリッ… と王太子を見た。
イフリートに有効だと言われる王太子が持つ氷結の魔法でも、決定的な打撃を加えられずにいる。
「クソッ…! これだけ猛攻を加えているのに、少しも手ごたえが無い!」
ソレイユから聞いた、聖女エクレラージュの記憶通りだ! 通常の攻撃ではまったく歯が立たない。
騎士たちの攻撃をものともせず… イフリートは狙いをコンプレスから王太子へ変え、突進してきた。
「殿下!!」
アンバレはもう1度、大きな風の玉をぶつけて、イフリートをはね飛ばす。
イフリートはまた、王太子を狙い突進する。
何度か同じことを繰り返すうちに、アンバレは不意に気がついた。
「……っ!」
そうか! イフリートはコンプレス殿や王太子殿下を狙っているのではなく… 大量に魔力を含有する竜輝石の杖を狙っているのか?!
アンバレの読みは正しかった。
その証拠に、王都の街には簡単に手に入る無力な人々が暮らしているが、イフリートはこの場を離れようとはしなかった。
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