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13話 エヴァとリアンナ
しおりを挟む学園のはしにある人が滅多にこないガセボで、リアンナは昼食を食べ終えると、図書室で借りて来た領地の運営に関する本を読み始める。
しばらくすると不意に誰かの足音がして、リアンナが顔をあげると… そこには小柄な少女がニコニコとほほ笑みながら立っていた。
少女の顔には見おぼえがある。
「……っ!」
あら、このかたは確か… アルベール様がつれていた恋人ではなかったかしら?
「こんにちは、リアンナ様! 私はエヴァと言います… 少しだけ私とお話をしませんか?」
エヴァと名乗った少女はリアンナの許しをえる前に、さっさと隣に腰をおろす。
「お話? ええ… 良いですわよ」
何かしら? もしかしてこのガセボでアルベール様と密会を楽しみたいから、明日から場所をゆずれとでも言われるのかしら?
ほんの少し緊張をおぼえたリアンナは、手に持っていた本をパタッ… と閉じて、身体を強張らせた。
「お昼の休憩時間が終わってしまうと、いけないので… 単刀直入に言いますが、私とアルベールを助けて下さい!」
「助ける?」
やっぱりこのガセボを2人の密会場所に使いたいのね? ここは落ち着くから、気に入っていたけど… でも、こんなことで争いたくはないから、私がゆずるべきね…
リアンナはため息をつく。
「お願いします… リアンナ様!」
神殿で女神に祈りをささげる時のように、エヴァは両手を組み合わせてリアンナを上目づかいで見つめる。
「私にできることなら…?」
「アルベールと結婚して下さい!」
「……?」
リアンナは一瞬、エヴァが何を言ったのか理解できなかった。
「私たちのために、アルベールと契約結婚をして下さい!」
エヴァは組みあわせていた手をとくとリアンナの手を両手でギュッ… とにぎり、子犬のような大きな瞳をうるうるとさせる。
「ア… アルベール様と契約結婚?!」
図書室で読書をしていると、ゴシック小説の話題で花を咲かせる令嬢たちが… そんな単語を使っているのを聞いたことがあるわ? エヴァ嬢がそのことを言っているのかしら?
「リアンナ様もローンヘッド男爵様との縁談で、お困りだと聞きました… 私たちとリアンナ様が協力しあえば、お互いが幸せになれると思いませんか?!」
「エヴァ様…? まずはその、契約結婚? …とは、何をするのか先に教えてください」
リアンナは首をかしげて、エヴァにたずねた。
「ああっ! 私ったら… つい先走ってしまって」
ギュッ… とにぎっていたリアンナの手をはなすと、エヴァは嬉しそうにパチンッ… と手のひらをたたき合わせる。
エヴァから話を聞き終わった後、不思議とリアンナは悪戯を思いついた子供のように… ワクワクとした気持ちでエヴァと一緒にほほえんでいた。
無邪気に笑いながら、夢中で話すエヴァの影響を受けたのだ。
今まで友人がいなかったリアンナには、エヴァとの会話は新鮮な体験となった。
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