12 / 34
11話 リアンナの縁談5 アルベールside
しおりを挟む使用人のように荒れていた、伯爵家の令嬢らしからぬ手を見たときから… アルベールが感じていたリアンナの違和感の正体がわかった。
「まさか… あのリアンナ嬢が、婚外子だったとは…?」
誰よりも淑女らしい彼女が、こんな大きな秘密を抱えていたなんて? そういえば、おしゃべりなジョアシャンがリアンナ嬢は伯爵家が引き取った養女だと言っていたが… こういう秘密を隠したくて、ペルサル伯爵は自分の婚外子を養女にしたのか…? それなのに使用人あつかいをしているだって?! 僕には理解できないな…
一通り、リアンナのことを考えたアルベールは、ハァ――ッ… とため息をつき、やれやれ… と首を横にふると、リアンナのことを考えるのはやめた。
リアンナの境遇に同情はしていても、アルベールに出来ることは何もないからだ。
それどころか、今のアルベールは『どうすればエヴァと結婚できるのか?』 …という大きな問題をかかえている。
コンッ! コンッ! コンッ!
ふいにアルベールの部屋の扉をたたかれる音が室内にひびき、エヴァがあらわれた。
「ねぇ、アルベール! リアンナ様の婚約が決まったことを知っている?!」
突然、アルベールの前に顔を出したかと思えば、エヴァは開口一番で、リアンナの婚約を話題に出した。
アルベールはうんざりした気分で、返事をする。
「ああ、エヴァ…… 君までリアンナ嬢の話をするのか?」
「あら! アルベールはもう知っていたの? 私はついさっき、お友だちといたカフェで会ったジョアシャン卿に、教えてもらったばかりなのに?」
「僕もそのジョアシャンに教えてもらった」
まったくジョアシャンは紳士とは思えない、おしゃべりなやつだな?
精神的に疲労を感じたアルベールは、自室のソファセットの長椅子に座り、だらしなく脱力した手足を投げ出す。
そんなアルベールの隣に、瞳をキラキラとさせて興奮した様子のエヴァがいそいそと腰をおろした。
「なら、説明しなくても良いわね? それで、アルベールはこの話をどう思う?」
「『どう?』 …て何が?」
お願いだからジョアシャンみたいに、下品な想像を僕に聞かせないでくれよ?
アルベールはチラリッ… とエヴァに視線をむける。
「私… リアンナ嬢の婚約は、私たちにとって幸運をまねくお話だと思うの!」
「『僕たちの幸運をまねく』だって?! エヴァ… いくら君でも、今のは聞きずてならないぞ?」
いったいエヴァは何を言っているんだ? リアンナ嬢の不幸な政略結婚が、どうして僕たちの幸運に結びつくんだ…?!
エヴァの考えていることが、まったくわからず… アルベールは眉間にしわをよせてキラキラと輝く瞳を見つめる。
87
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

それでも好きだった。
下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。
主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。
小説家になろう様でも投稿しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

婚約者が言い寄られようとも何も言えなかった公爵令嬢は、自分を変えようと決意する
andante
恋愛
婚約者が言い寄られようと不満を口にできなかった公爵令嬢。
このままではいけないと思い、自分を変えようと決意した。

婚約者は一途なので
mios
恋愛
婚約者と私を別れさせる為にある子爵令嬢が現れた。婚約者は公爵家嫡男。私は伯爵令嬢。学園卒業後すぐに婚姻する予定の伯爵令嬢は、焦った女性達から、公爵夫人の座をかけて狙われることになる。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる