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11話 リアンナの縁談5 アルベールside
しおりを挟む使用人のように荒れていた、伯爵家の令嬢らしからぬ手を見たときから… アルベールが感じていたリアンナの違和感の正体がわかった。
「まさか… あのリアンナ嬢が、婚外子だったとは…?」
誰よりも淑女らしい彼女が、こんな大きな秘密を抱えていたなんて? そういえば、おしゃべりなジョアシャンがリアンナ嬢は伯爵家が引き取った養女だと言っていたが… こういう秘密を隠したくて、ペルサル伯爵は自分の婚外子を養女にしたのか…? それなのに使用人あつかいをしているだって?! 僕には理解できないな…
一通り、リアンナのことを考えたアルベールは、ハァ――ッ… とため息をつき、やれやれ… と首を横にふると、リアンナのことを考えるのはやめた。
リアンナの境遇に同情はしていても、アルベールに出来ることは何もないからだ。
それどころか、今のアルベールは『どうすればエヴァと結婚できるのか?』 …という大きな問題をかかえている。
コンッ! コンッ! コンッ!
ふいにアルベールの部屋の扉をたたかれる音が室内にひびき、エヴァがあらわれた。
「ねぇ、アルベール! リアンナ様の婚約が決まったことを知っている?!」
突然、アルベールの前に顔を出したかと思えば、エヴァは開口一番で、リアンナの婚約を話題に出した。
アルベールはうんざりした気分で、返事をする。
「ああ、エヴァ…… 君までリアンナ嬢の話をするのか?」
「あら! アルベールはもう知っていたの? 私はついさっき、お友だちといたカフェで会ったジョアシャン卿に、教えてもらったばかりなのに?」
「僕もそのジョアシャンに教えてもらった」
まったくジョアシャンは紳士とは思えない、おしゃべりなやつだな?
精神的に疲労を感じたアルベールは、自室のソファセットの長椅子に座り、だらしなく脱力した手足を投げ出す。
そんなアルベールの隣に、瞳をキラキラとさせて興奮した様子のエヴァがいそいそと腰をおろした。
「なら、説明しなくても良いわね? それで、アルベールはこの話をどう思う?」
「『どう?』 …て何が?」
お願いだからジョアシャンみたいに、下品な想像を僕に聞かせないでくれよ?
アルベールはチラリッ… とエヴァに視線をむける。
「私… リアンナ嬢の婚約は、私たちにとって幸運をまねくお話だと思うの!」
「『僕たちの幸運をまねく』だって?! エヴァ… いくら君でも、今のは聞きずてならないぞ?」
いったいエヴァは何を言っているんだ? リアンナ嬢の不幸な政略結婚が、どうして僕たちの幸運に結びつくんだ…?!
エヴァの考えていることが、まったくわからず… アルベールは眉間にしわをよせてキラキラと輝く瞳を見つめる。
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