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8話 婚約パーティ

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 お見合いの席で、“キツネ狩り”は絶対にしないと、伯爵家長男ジュールの口からハッキリと聞き、ニーナは婚約することにした。
 その後は、あっという間に両家のあいだで話がすすみ… 学園の卒業まぎわに2人の婚約契約がまとまる。
 
 今日はアルセスター伯爵邸で、ニーナとジュールの婚約パーティーが開かれた。

「おめでとう、ニーナ!」
「おめでとう!」

 リルベルとマーカスも、ホッ… としたようすで、ニーナの婚約を喜んでくれた。

「本当に良かったわ… 今度こそ、ニーナも幸せになれそうね?」
 ニーナとハグをした時に、リルベルがグスッ… と鼻をすすり、涙声になってしまう。
 
 ケインが恋の魔法をかけようと、毎日ニーナに“好きだ”と言っていたころ… リルベルとマーカスは『早く婚約すれば?』 …と軽い気持ちで、ニーナをあおってしまったことを、ずっと後悔していたらしいのだ。
 ニーナを傷つけたことで腹をたてた、リルベルはもちろん、従兄弟いとこのマーカスさえも… 今ではケインと距離を置くようになった。

「ありがとう、リルベル… ふふふっ…」
 本当にリルベルとマーカスには、ケインのことでたくさん心配をかけてしまったから… これで2人を安心させられるわ!

「ニーナは良い友達がたくさんいるね?」 

 穏やかに声をかけられ、ニーナはチラリと視線を隣にうつすと… 眼鏡めがねをかけたすらりと背の高い、ニーナの婚約者ジュールが、ニコニコと微笑んでいた。

「はい、ジュール様!」
 ああ、もう! 今日のジュール様の知的な笑顔… 本当に素敵!

 ジュールと目が合い、ニーナもニコリッ… と微笑み、思わず心の中でつぶやく。

 留学を終えたあとすぐに、行政府ぎょうせいふの秘書官として働きはじめたせいか…? それとも外国での生活を、経験しているせいか…?
 ジュールにはケインのような、軽薄けいはくな印象はなく… むしろドッシリとした落ちつきがある。

 ニーナから見ると、3歳年上のジュールは大人の魅力を持っていて、一緒にいると安心感をあたえられるのだ。

「リルベル嬢、それにマーカス君、どうかこれからもニーナと仲良くしてやってください」
 ジュールはキビキビとした歯切はぎれの良い話しかたをする。

「こちらこそ、ジュール様! どうかニーナを… 私たちの大切な友達を、幸せにしてあげてください!」



 ニーナの友人たちと婚約者の心温まる交流のあと… ちょっとした事件が起きた。

 のどがかわいたニーナのために、婚約者のジュールが飲み物を取りに行ったすきに… 招待をしていない、まねかれざる客、“秘密の恋人”ケインがニーナの前にあらわれたのだ。


「ひどいよ、ニーナ! “秘密の恋人”の僕にだまって婚約してしまうなんて!」
「……ケイン、招待状は送ってないのに… なぜ、あなたがここにいるの?」
「もちろん、友達のエスコートだよ!」

「友達……?!」
 どうせ、の“秘密の恋人”でしょう? まったく、気持ちの悪い人!!
 

 ニーナは手に持った扇子せんすを開いて、イライラとあおいだ。




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