好きだと先に言ったのはあなたなのに?

みみぢあん

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1話 告白

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 学園に入学して1年ほど過ぎたころ、スタッドリー男爵家の令嬢ニーナは… 友人リルベルの婚約者マーカスに、従兄弟いとこのレブデール子爵家の令息ケインを紹介された。
 
 ケインはニーナの手を取り、キスをする。

「ニーナ… 学園に入学してすぐに、君をみかけて一目れだったんだ! 君のことがずっと好きだった!」

 出会って間もないのにもかかわらず、ニーナはいきなりケインに告白され……

「そんな…?!」
 い… いきなりそんなことを言われても、困るわ?! 何て軽い人かしら? 私は初めて会ったのに、好きだというなんて?! とても素敵すてきな人だけど… 本当に困るわ!

 社交デビュー前のニーナは、まだ経験があさく… いきなり男性の告白をうけ、動揺どうようして固まってしまう。


「君には婚約者がいないと聞いたから… それで僕はがまんできずに、従兄弟いとこのマーカスに、君に僕を紹介して欲しいと頼んだんだ!」

 ケインはまるで異国の王子様のように、肩までのばした茶色の髪をうなじで結び、青い瞳を輝かせ、ニーナを魅了みりょうするような笑顔をうかべた。

「失礼よ、ケイン! いきなり人前で淑女しゅくじょに愛を告白するなんて…」
 仲の良い友人のリルベルが、顔を赤くして戸惑とまどうニーナを守る母ライオンように、ケインに抗議した。

「ああ、リルベル… 僕も失礼だとわかっているけど、好きだからしかたないだろう?」
「本当にニーナのことが好きなら、ニーナを立派りっぱ淑女しゅくじょとしてあつかってちょうだい?!」
「ニーナが他の誰かのものになったら、耐えられないから、先に僕の気持ちを知って欲しかったのさ!」

「まぁ! まぁ! まぁ! 2人ともそれぐらいにしろよ? ニーナが困るだろう?」
 リルベルの婚約者でケインの従兄弟のマーカスが、大ゲンカに発展しそうな気配を感じたらしく…
 まゆをつりあげたリルベルと、困った顔で言い返すケインとの間にわってはいる。
 

「////////っ……」
 あ… ありがとう、マーカス! あなたの言うとおりよ!

 言い争いをしていた、親友のリルベルとケインにジッ… と見つめられ、ニーナは真っ赤な顔で、2人にコクコクと首をたてにふり、うなずいて見せた。 

「ほらね! ニーナのために2人ともケンカはやめろよ? ニーナに嫌われるぞ?!」
 どちらかというと、短気なリルベルのなだめ役になることが多い、婚約者のマーカスは… いつもの落ち着いた態度で… いつもと同じく上手にリルベルをなだめた。

「私ったら、ごめんなさいニーナ… 大きな声を出したりして、はしたないわよね?」
「ふふふっ… 大きな声でも、リルベルの声は小鳥みたいに、可愛くて大好きよ…?」

 声をあらげてニーナの前で、怒りをあらわにしたことへの謝罪をするリルベルに… ニーナは謝罪を受け入れ、自分のことで代わりに怒ってくれたことは、少しも嫌ではなかったと伝えるために、ハグをした。
 リルベルは短気だけど、情が深くて本当はとても優しいのだ。

「なんだか… 怒ったら、チェリーパイが食べたくなったわ? ねぇニーナ、そう思わない?」
 ブツブツとリルベルが愚痴ぐちっぽくこぼした。

「食堂に行けば… まだ残っているかしら? アップルパイはきっと無くなっているけどね… 見にいく?」
「なんで、みんなはチェリーパイの方がおいしいのに、アップルパイが好きなのかしら?」
「そうよね? なぜかしら?」


「まったく…! 女の子たちの会話について行くのは大変だな?! 僕にはわけがわからないよ?」
「あはははっ…! 本当に頭が痛くなるな!」

 突然、変わったニーナとリルベルの会話を、そばで聞いていたマーカスと従兄弟のケインは理解出来ないと首をひねる。





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