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42話 愛する夫と愛する妻3 ベルナールside
しおりを挟む良い機会だから、私はレオニーに職務上の理由で秘密にしていたコトを全部、打ち明けることにした。 こういう話は、後になればなるほど… 話しずらくなるから。
秘密にしていたことを明かして、レオニーに嫌われたら辛いだろうけれど… 私は一生をかけて信頼を取り戻すつもりだ。
「…フレデリックの父親。 先代のウォルコート子爵が麻薬の精製所を、子爵領に作るさい… どこからその資金が出たのかを私が調査したんだ」
第4騎士団で、私が初めて手がけた任務だった。
「精製所?」
「それで資金の出所を調べてゆくうちに… キンレット男爵家が大きな借金を抱える原因となった、使用人に持ち逃げされた事業資金にたどり付いた」
男爵家から金を持ち逃げした使用人は、ウォルコート子爵にかくまわれ… 精製所の責任者として雇われていた。
「……っそんな!」
ビクッ! …とレオニーは私の腕の中で、身体を強張らせる。
「本当にすまなかった、レオニー。 そのことでウォルコート子爵を罪に問えば… 黒幕の ラプリー伯爵の尻尾をつかめなくなる。 だから今まで私はこの真実を、君たちに話せなかった」
「つまり… 私たちの… いえ、リュシアンお兄様の苦労は… 全部、ウォルコート子爵家のせいだったのですか?!」
「そうだ」
私は君たちを… キンレット男爵家を見守ることしか出来なかった。
「ああ… 何てことなの……」
「黙っていてすまなかった。 私は君に責められても、おかしくないコトをした」
「…いいえ、ベルナール様は必要なことをしただけです。 悪いのはウォルコート子爵家だわ! 昔、助けてもらったお父様の恩を仇で返すなんて… 本当の恥知らずよ」
イライラと腹を立てているが、レオニーの怒りが私へ向けてのモノではないとわかり、ホッ… と胸をなでおろした。
「君がそう言ってくれると… 肩の荷が下りた気がする」
「そこまで調べたのに… ベルナール様は何も言えなくて、辛かったでしょうね?」
「うん。 すごく辛かったよ… 君にこんな秘密を持ちたくなかった」
「だからベルナール様は… キンレット男爵家を借金から救おうと、私に求婚したのですか?」
ジッ… と萌黄色の瞳でレオニーは私を見つめる。
「それも求婚の理由だと、否定はしないよ」
「……っ」
一瞬、レオニーが悲しそうな顔をしたから、私は急いで話を続けた。
「…でも王立図書館で君に会い、君を愛し始めたのは本当なんだ! 信じて欲しい」
声を殺して泣き崩れる君に、見守るだけでは我慢できず… 私は咄嗟に声をかけた。
「ベルナール様…」
「君は本当に可愛かったから……」
私が渡したハンカチで涙をぬぐい… 醜い傷だらけの私を『高潔な騎士様』だと微笑む姿は、本当に可愛くて…… 一瞬で恋に落ちた。
レオニーは気付いていないようだけど… 私があの時の騎士だと伝えれば… 私の愛を信じてくれるだろうか?
傷だらけの騎士のコトなど、レオニーは忘れてしまっただろうか?
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