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11話 放蕩者の役割3 ベルナールside
しおりを挟む私は全力で誘惑しようと、目を細めてジッ… とウォルコート子爵夫人アンヌの瞳を見つめ続け、「君と2人っきりでもっと話したいな」 …とヒソヒソと囁いた。
「うふふっ… ベルナール… 私も同じことを思っていたの」
私の誘いの言葉を待っていたらしく、アンヌは頬を少女のようにバラ色に染めた。
恥かしそうに扇で唇を隠し、ニッコリと微笑む。
「2人になれる、良い場所はあるかな?」
「ええ、あるわ……」
エスコートの腕をアンヌに差し出した。
「私も… ずっとアナタと2人っきりで、話をしたいと思っていたのよ? ベルナール……」
ねっとりと舐めるようなアンヌの視線が、私の身体を這いずるように上から下へと移動する。 顔を見ているだけで、アンヌの頭の中が見える気がして、ゾッ… と服の下で鳥肌が立つ。
「君の夫には悪いが… 光栄だよアンヌ…」
「夫も今頃、別の女性と2人っきりになっているわ」
「おやおや…」
「もしかして、夫に嫉妬しているのかしら?」
人差し指で自分の唇に触れながら、アンヌは首を傾げて私に期待の目を向ける。
「この後、どうなるかによるかな?」
「あら! ふふふっ…」
アンヌは私の腕に胸を押し付けしがみついて来た。 その不快な感触で、表情を歪めないでいるのに苦労する。
「……」
さてと。 どうやって目的の地下室まで誘導してもらおうかな?
アンヌに連れられラプリー伯爵邸の奥へと進み、無人の部屋へと入った。
部屋の扉に鍵をかけると、アンヌは私に抱き付き唇にキスをしようと背伸びをしたが… 肩をつかみ押しとどめた。
「どうせなら、幸福な夢の世界でアンヌと遊びたいなぁ… 君はアレを持っている?」
「まぁ、ベルナール! あなた… もしかしてアレが目的で、私を誘ったのではないでしょうね?」
「さぁ、どうかな?」
「悪い人!」
アンヌはドレスのポケットに手をいれ、小さな小瓶を出すと私の前で振って見せる。
「それは幸福な夢の世界へ行ける… 麻薬?」
「ええ、そうよ!」
「一本だけ? 私の分はないのかな?」
やっぱり持っていたか。 この女なら、絶対に持っていると思ったんだ。
「うふふっ… 地下の遊戯室へ行けば、あなたの分もあるわ」
小瓶の栓を抜き、アンヌは私の顔をうっとりと見つめながら、麻薬を飲んだ。
「私を遊戯室へ連れて行ってくれる? アンヌ……」
恐らくそこが麻薬に溺れる、クズ野郎たちが集う場所だな? その地下の遊戯室とやらに盗聴用の魔道具を仕掛ければ、今夜の仕事は終わる。
「いいわ。 特別に連れて行ってあげる」
「嬉しいよ、アンヌ」
良いぞ、女狐。 その調子だ!
扉を開くとアンヌの手を取り部屋の外へ出た。
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