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50話 元婚約者2

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  ジュリーはいくら自分が真実を話しても、ジョナサンはその真実をゆがめて受けとめるとわかっていた。
 それほどジョナサンはジュリーのことが嫌いで、自分のプライドを守るために必死なのだ。


「……っ」
 もう、面倒だわ! いつもなら、そんな不毛ふもうな話し合いを続けることに苦痛を感じて、私が先に折れて、適当てきとうに話を合わせてしまうけど…
 でも、今夜の私はエドガーの妻になったのだから。
 ここで私が受け入れれば、夫のエドガーは『私にだまされたマヌケな男性』…だと、認めることになってしまう。
 エドガーの名誉めいよのためにも、私は1つもジョナサンのゆがんだ話を、黙って受け入れてはいけないのよ!


「僕が学園生時代に、少し遊んでいたから… 婚約者だったお前はそのことで嫉妬して、今まで僕を苦しめたんだろう?」
 多少は恥じらいを感じているのか、ジョナサンは包帯ほうたいだらけの顔を赤くしてジュリーに怒鳴った。

「嫉妬はしていないわ… ただ、あなたは浮気を簡単にできる男性なのだと、失望しただけよ! アリアーヌもそのうち気づいて、あなたに失望するのではないかしら?」
 私は男爵家の長女として… ジョナサンがどれだけ不誠実な人でも、受け入れるという選択肢以外は無かったから… 結局、大騒ぎしないで忘れることにしたの。

「お前は、なんて性悪な女なんだ! そのうえ僕がだめだから、次は兄上を狙うなんて…!」

「私は子供の頃からずっと、エドガーを愛してきたわ! 求婚されてどれだけ嬉しかったか… あなたはきっと一生、理解できないわね?」
 ジュリーがどれだけ話しても、平行線になる話に疲れ…
 ハァ―――ッ… と大きなため息をついた。

「だったらなぜ、僕と婚約したんだ? なぜ、今まで僕に何も言わなかった?!」
 フンッ… とジョナサンは嘲笑あざわらった。

「長男のエドガーと長女の私は結婚できないと分かっていて… あなたに私の気持ちを告白して、どうなるというの?」
 昔から仲が良いとはいえなかった、ジュリーとジョナサンの関係が増々悪化するだけだ。

「昔から好きだっただと? そんなウソくさい話を誰が信じるものか! 兄上をたぶらかした詐欺さぎ女! お前なんか伯爵夫人だと認めないからな。 早く兄上に結婚は無効むこうだと言え!」


「…っ」
 ちょうどその時、ジュリーたちがあがって来た階段をはさんだ向こう側から、エドガーが歩いて来るのが見えた。
 興奮して怒鳴り声をあげているジョナサンは、歩いて来るエドガーに背を向けていて、気づいていない。


 本当にそれは、アッ… という間のできごとだった。

 エドガーが悪魔のような顔で走って来て、背中にりを入れ… ジョナサンが吹っ飛んだ。



 兄弟流の話し合いが始まったらしい。






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