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46話 終息2
しおりを挟む大きなため息をつくと、エドガーは神官に向かって催促した。
「やれやれ… 神官殿、婚姻の儀を最後まで進めて下さい! 何としても今日中に、ジュリーを伯爵夫人にしなければならない、理由がありますから!」
「ええ伯爵、そうですね! 後は伴侶の誓いを交わすだけですから… 最後まで終わらせましょう」
疲れた顔の老神官も、エドガーにつられたように、ハァ―――ッ… と大きなため息をついた。
「実はジュリー… 私にはセイフォード男爵家の存続問題よりも、もっと急を要する面倒な問題が、ファゼリー伯爵邸で待っているんだ!」
困った顔でジュリーを見下ろした後… エドガーは嫌そうな顔をして、王太子をチラリッ… と見た。
「エドガー…?」
問題…? 何かしら…?
ジュリーが首を傾げていると…
「ふふふっ… 何だエドガー?! お前、ジュリー嬢との初夜が、そんなに待ちきれないのか?! この、むっつりスケベめ! 恥を知れ!」
王太子マクシミリアンはニヤニヤ笑いを浮かべ、自分の部下を揶揄った。
「初っ…」
ジュリーの顔がベール越しで、真赤に染まる。
「何をおっしゃっているのですか! あなたがその面倒な問題、そのものではありませんか?!」
エドガーは不敬とも取れる発言を冷ややかに放つ。
予告も無しに、いきなりあらわれた王太子のせいで、普段は少人数の使用人で回している、ファゼリー伯爵邸は大騒ぎとなっていた。
「まぁまぁ! お前と私の仲ではないか!」
途中で中断した、ジュリーとエドガーの波乱に満ちた『婚姻の儀』も含めて… 王太子はあきらかに、この状況を楽しんでいる様子である。
フゥ―――ッ… とエドガーは大きなため息を、またついて… ジュリーの手を取りキスをする。
「ある高貴なお方が、お忍びでヒョッコリあらわれたと思ったら… 我がファゼリー伯爵邸に宿泊すると言いだして… ジュリーには早速、男ばかりの我が屋敷で、女主人として力を振るってもらいたい!」
「ああ、そういうことなの?」
確かに… それは大変だわ!
「やってくれるか?」
「ええ、私にできることがあるのなら!」
「すまない、ジュリー! 頼りにしているよ」
「どういたしまして」
ようやくエドガーと王太子の険悪なやり取りの原因がわかり、ジュリーも苦笑した。
社交デビューをした年に1度だけ、他のデビュタントたちと共に、王都で行われた王室主催の舞踏会に出たきり、ジュリーはほとんど地元から出たことが無かった。
そのため、王太子マクシミリアンの顔を知らなかったのだ。
チラリッ… とジュリーが王太子を見ると目が合う。
マクシミリアンはニコリッとジュリーに微笑み返す。
ジュリーは小さくお辞儀をする。
「……」
エドガーの妻になれば、これから王族の方々と、こうして会うことが増えるのね? 覚悟しないと!
中断していた婚姻の儀式は進められ… 祝福の拍手のなか、誓いのキスで締めくくった。
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