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34話 キス3 エドガーside
しおりを挟む早急で強引だった自覚があるエドガーは、自分の求婚をジュリーが本心から受け入れたのかを確認したくてキスをした。
そしてもう1つ… 使用人たちの前で、2人が仲良くキスをする必要があった。
『ファゼリー伯爵のエドガーが求婚して、ジュリーがその求婚を受け入れた』
…と、その場面を男爵邸の使用人たちに見せつけ、刺激的な印象を残すためである。
「……」
どうかジュリー、私を拒まないで欲しい!
数ヶ月前に使用人たちの前で、アリアーヌとジョナサンが最初に起こした騒ぎと同じことを、私は君と起こしたい。
さりげなさをよそおい、エドガーは素早くジュリーの唇にキスをする。
世間体を気にするセイフォード男爵。
ジュリーを男爵家にしばりつけようと考える父親を、エドガーはこの騒ぎを利用して強引に捩じ伏せ、いっきに結婚まで突き進めるつもりなのだ。
「……まぁっ?!」
ジュリーは驚きながらも、エドガーのキスを拒む様子はなく… 顔を真っ赤にして、初々しい態度を見せた。
エドガーはキスをジュリーに拒まれなかったことを、内心でホッ… としたのと同時に、ある重要なことに気がつく。
「……っ?!」
えっ?! もしかしてジュリーは唇のキスは初めてだったのか?! 元婚約者だったジョナサンと、キスはとっくに経験済みだと思っていたけれど……?
……ああ、そうか! ジョナサンはジュリーを薄情だと嫌っていたから、手を出さなかったのか。
…なんだ。 ふふふっ…
些細なことだが、意外と嫉妬深いエドガーは大いに喜んだ。
「ジュリー… ありがとう。 私の求婚を受け入れてくれて!!」
ああ、私は本当にジュリーを愛していたんだな。 ジュリーに受け入れられて、こんなに嬉しいなんて!
長男と長女だから結婚は出来ないと、昔から異性として愛する対象からジュリーを外してていたけれど… ジュリーほど気持ちと考えかたが合う女性はいなかった。
「……っ」
私は本当にジュリーを妻にするのだな…
顔を赤くして恥ずかしがるジュリーの姿に、エドガーの胸の中で熱いものが急激に込みあげてくる。
エドガーを心から受け入れ、ジュリーが嫌がらないかの確認だけなら、キスは1度でじゅうぶんだった。
それに使用人たちがパラパラと屋敷中から集まって来て、どことなくお祝いムードで2人を見守っている。
すでにエドガーの目的は果たしている。
だが……
初々しく恥ずかしがる、甘い砂糖菓子のような可愛いジュリーを前にして… エドガーはキスを我慢できなかった。
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