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31話 求婚6

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 1つ目の砂糖菓子ボンボンはジュリーの口の中で桃の果汁が広がり、天国(行ったこと無いけど)のお菓子みたいに、幸せな味がした。


「んんん~~~~っ……!」
 何て美味しいの…?! こんなお菓子は初めて食べたわ!

 エドガーが次にジュリーの口にいれた2つ目の砂糖菓子ボンボンは… かみくだいた瞬間、濃厚なワインの香りが広がり、食べ過ぎたら酔ってしまいそうな大人の味がした。

 思わずジュリーはうっとりと瞳を閉じて、口の中の大人の味を堪能たんのうする。

「ジュリー? ほら、口を開けて!」

「……っ!」
 まぁ、エドガー! またくれるの? 嬉しいぃ!! 

 子供のようにあ~ん… と口を開けてジュリーが待っていると、ポイッ…! とエドガーが3つ目の砂糖菓子ボンボンを入れてくれる。
 3つ目はオレンジリキュール味だ。

「王都で貴婦人たちに人気がある店の菓子らしい… どうだ、ジュリー… 少しは幸せになったか?」

「うんっ!」
 …? ああ…! 私がお父様に男爵家からとつがせないと言われたことを、エドガーはジョナサンに聞いて… なぐめるために、美味しいボンボンと貴重きちょうな青バラの花束を用意してくれたのね? 本当に優しい人だわ…
 
 エドガーは4つ目を包みから出して、またジュリーの口に入れる。

「んんっ…」
 ああ、もう! お礼を言いたいのにエドガー…ったら! 次から次へとボンボンを私の口に入れるから! うふふっ… でも、こんなに美味しいお菓子をこばむことなんて出来ないわっ!! 


 エドガーは4つ目のボンボンをジュリーの口に入れながら……
 唐突とうとつに言った。

「…ジュリー、結婚してくれ!」


「…?!!!」
 ゴクリッ…! 4つ目のボンボンを口の中で味わう前に、ジュリーは驚いて丸のみしてしまう。

 緊張した表情で5つ目のボンボンを包みから出したエドガーは…
「ジュリー、口を開けて…」

「……」
 あら… 今、求婚されたと思ったけれど、やっぱり私の聞き間違いかしら…?

 ぼうぜんとエドガーに言われるまま、ジュリーは口を開けてボンボンを入れてもらう。
 せっかくボンボンを口に入れてもらったのに… ジュリーは5つ目のボンボンが何味かわからない。


「ジュリー… うん、と言ってくれ!」

「うん………?」
 ジュリーは自分の耳が信じられず、エドガーを見あげたが… 言われるがまま何も考えず… 『うん』と言ってしまった。 


「よし!!」
 嬉しそうにエドガーは笑い、6つ目のボンボンは入れず… ジュリーの唇に素早すばやくキスをする。 

「…っ?!!」
 

 突然、自分に起きたことが信じられず、ジュリーはパチパチと空色の瞳をまばたきして… エドガーの金色の瞳をまじまじと見つめ続けた。






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