婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された

みみぢあん

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28話 求婚3

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 ジョナサンがアリアーヌに会いに来なくなってから2週間がすぎた。
 元々体調をくずふさぎこんでいたアリアーヌの精神状態は、さらに悪化し… ここ1週間は微熱まで出している。

 その間、アリアーヌの世話をするのは侍女のキャロルとジュリーの役目となっていた。
 母親はアリアーヌの結婚の準備に追われ屋敷にいないことが多い。


「もう… 彼は何をやっているの?」
 どうせジョナサンは自分が『おかざりの男爵』にさせられるとお父様に言われて、ねているのでしょうけれど。
 だからと言って自分の婚約者を不安にさせるほど、放置しても良いという言い訳にはならないわ。 本当に無責任よ!

 ジュリーは腹を立てながらアリアーヌの部屋を出た。
 婚約解消からようやく立ち直り、アリアーヌの世話はジョナサンにまかせれば良いのだと… ジュリーがホッ… としたのもつかの間だった。
 
「本当にこれで… 大丈夫なのかしら?」
 だって結婚式まで1ヵ月を切っているのよ? ジョナサンも悪いけれど… 少しはアリアーヌも自分で乗り切る努力をすることをおぼえないと。

 フゥ―――ッ… とジュリーから大きなため息が出る。
 なにげなく廊下の窓から外を見ると、庭じゅうが夕暮れ時の茜色あかねいろで綺麗にそまっていた。

「明日… ジョナサンに手紙を送ろうかしら」
 すてられた元婚約者としては… こんなにウンザリすることは無いわ。 …でもアリアーヌの面倒をみることは婚約者の義務だと、ジョナサンにしっかり自覚してもらわないと。 子供の頃から妹はそういう弱い娘なのだと知っていて、ジョナサンは選んだのだから。
 人を愛すとは… そういうことでしょう?


 ジュリーの眼下がんかで一台の馬車が男爵邸の前にとまるのが見えた。

「あら、ファゼリー伯爵家の馬車だわ? ジョナサンが来たのね」
 
 毎日、アリアーヌに会いに来ていたジョナサンは訪問のうかがいを立てる、先触さきぶれを出すことを最近は省略するようになった。

「でも、こんな時間に来るなんて… どういうつもりかしら?」
 どうやら私が手紙を書いて送る必要は無さそうだわ。 

 アリアーヌやジュリーの部屋がある2階の廊下の窓から馬車を見下ろしていると… なぜか大きな花束を抱えたエドガーが降りて来た。

「…違う! エドガーだわ! どうしたのかしら… 何か問題でも…? もしかしてジョナサンに何かあったの?」


 ジュリーはあわてて玄関ホールへ向かった。






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