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17話 母親
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妹アリアーヌと元婚約者ジョナサンの結婚式が終ったら自分で嫁ぎ先を見つけようと、考えるようになったジュリーは積極的に結婚式の準備を手伝うようになった。
当日の主役となるアリアーヌ自身は、神官に責められたことをいまだに気に病み体調を崩して、自室に閉じこもったままである。
「ごめんなさいねジュリー… あなたにこんなことまでさせてしまって…」
ジュリーの母親は複雑そうな表情で謝った。
アリアーヌとジョナサンが恋人関係にあると発覚してから… ずっと心を痛めているのだ。
「大丈夫よ、お母様。 私はもう平気だから… アリアーヌのために良い結婚式になるよう手伝うわ」
「あなたが手伝ってくれると、とても心強いけれど… でも本当に嫌なら無理はしないでね?」
貴婦人らしい白くふくよかな手で母はジュリーの日焼けした頬を優しくなでた。
「ええ…」
「私はあなたを男の子のように領地の運営に関わらせることは、ずっと反対していたのよ。 でもお父様が長女だからやらせると、私の意見を聞いてくださらなくて…」
母親が悔しそうな表情を浮かべる。
「そうだったの?」
「あなたを普通の女の子たちのように甘やかすことを、お父様が許してくださらなかったの。 あなたもお父様について領地をまわることを、楽しんでいるように見えたから… 私も口を出すのをやめたのだけど」
母親は日焼けした肌が気になるらしく、ジュリーの頬に散ったそばかすにも触れる。
アリアーヌを出産した時に身体を壊し、3人目の子どもを身籠れないと知った母親は… 後継者の男子が産めないという負い目があった。
ジュリーのことで夫に強く抗議すれば離縁されるかもしれないと恐れ、口を閉じていたのだ。
「知らなかった…」
今までずっとお母さまはお父様と同じ気持ちなのだと思っていたわ。
「本当にごめんなさいジュリー! こんなことになるなら… お父様が何を言っても、やめさせるべきだったわ」
母親はけしてジュリーに無関心だったわけではなかったのだ。
自分の頬をなでるやわらかい母親の手を取り、ジュリーはニコリッ… と笑う。
「お母様、心配しないで… 私は本当に大丈夫よ」
なぜなら… こうして結婚の準備を手伝っていると、私は神殿やドレスの仕立て屋へ頻繁に通うことになる。
そういう場所には他の貴族や裕福な商人たちが出入りするため、私の嫁ぎ先になりそうな家のうわさ話が集まるから……
同時に、自分に関する嫌なうわさ話も聞くことになるけれど。
ジュリーの脳裏に仕立て屋で自分の陰口をたたく貴族たちのヒソヒソ話が、耳に入った時の衝撃がよぎる。
『“妖精姫”と呼ばれるほど美しいアリアーヌ嬢が妹では… ジュリー嬢が婚約者に捨てられるのも無理はないわね』
『彼女… まるで少年のように日焼けしていて、あんなに容姿が悪くては次の嫁ぎ先を見つけるのが大変だわ』
自分の日焼けした手を見下ろし… ジュリーはしょんぼりと思う。
「少年のよう……?」
これからは日にあたらないよう、気を付けないと… もう男爵領のことを考えなくても良いのだから。
母親と居間で結婚式を飾る花の種類を決めていると、ジュリーは父親に呼ばれた。
「ジュリーお嬢様、旦那様がお呼びです」
「お父様が? 何かしら…」
私の婚約解消が決まった時に話したきり、私は領地の運営に関わることをやめてしまったから。
お父様と話すことが何も無くて、食事の時でもほとんど口をきいていないのよね。
「お話があるから執務室へ来るようにと…」
「そう、わかったわ」
お父様… いったい何の話かしら?
当日の主役となるアリアーヌ自身は、神官に責められたことをいまだに気に病み体調を崩して、自室に閉じこもったままである。
「ごめんなさいねジュリー… あなたにこんなことまでさせてしまって…」
ジュリーの母親は複雑そうな表情で謝った。
アリアーヌとジョナサンが恋人関係にあると発覚してから… ずっと心を痛めているのだ。
「大丈夫よ、お母様。 私はもう平気だから… アリアーヌのために良い結婚式になるよう手伝うわ」
「あなたが手伝ってくれると、とても心強いけれど… でも本当に嫌なら無理はしないでね?」
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「ええ…」
「私はあなたを男の子のように領地の運営に関わらせることは、ずっと反対していたのよ。 でもお父様が長女だからやらせると、私の意見を聞いてくださらなくて…」
母親が悔しそうな表情を浮かべる。
「そうだったの?」
「あなたを普通の女の子たちのように甘やかすことを、お父様が許してくださらなかったの。 あなたもお父様について領地をまわることを、楽しんでいるように見えたから… 私も口を出すのをやめたのだけど」
母親は日焼けした肌が気になるらしく、ジュリーの頬に散ったそばかすにも触れる。
アリアーヌを出産した時に身体を壊し、3人目の子どもを身籠れないと知った母親は… 後継者の男子が産めないという負い目があった。
ジュリーのことで夫に強く抗議すれば離縁されるかもしれないと恐れ、口を閉じていたのだ。
「知らなかった…」
今までずっとお母さまはお父様と同じ気持ちなのだと思っていたわ。
「本当にごめんなさいジュリー! こんなことになるなら… お父様が何を言っても、やめさせるべきだったわ」
母親はけしてジュリーに無関心だったわけではなかったのだ。
自分の頬をなでるやわらかい母親の手を取り、ジュリーはニコリッ… と笑う。
「お母様、心配しないで… 私は本当に大丈夫よ」
なぜなら… こうして結婚の準備を手伝っていると、私は神殿やドレスの仕立て屋へ頻繁に通うことになる。
そういう場所には他の貴族や裕福な商人たちが出入りするため、私の嫁ぎ先になりそうな家のうわさ話が集まるから……
同時に、自分に関する嫌なうわさ話も聞くことになるけれど。
ジュリーの脳裏に仕立て屋で自分の陰口をたたく貴族たちのヒソヒソ話が、耳に入った時の衝撃がよぎる。
『“妖精姫”と呼ばれるほど美しいアリアーヌ嬢が妹では… ジュリー嬢が婚約者に捨てられるのも無理はないわね』
『彼女… まるで少年のように日焼けしていて、あんなに容姿が悪くては次の嫁ぎ先を見つけるのが大変だわ』
自分の日焼けした手を見下ろし… ジュリーはしょんぼりと思う。
「少年のよう……?」
これからは日にあたらないよう、気を付けないと… もう男爵領のことを考えなくても良いのだから。
母親と居間で結婚式を飾る花の種類を決めていると、ジュリーは父親に呼ばれた。
「ジュリーお嬢様、旦那様がお呼びです」
「お父様が? 何かしら…」
私の婚約解消が決まった時に話したきり、私は領地の運営に関わることをやめてしまったから。
お父様と話すことが何も無くて、食事の時でもほとんど口をきいていないのよね。
「お話があるから執務室へ来るようにと…」
「そう、わかったわ」
お父様… いったい何の話かしら?
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