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16話 王都にて…3 エドガーside

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 自分が結婚をけて来た理由を、エドガーが考え直していると… 不意に王太子マクシミリアンが声をかけた。


「それでエドガー! お前の幼馴染おさななじみの令嬢を、私に紹介してくれるのだろう?!」

「殿下… そうやって、私の幼馴染を口実こうじつにして、側妃選抜の時間かせぎに、使う気なのでしょう?」
 殿下は優し気な印象を相手にあたえる人だが… 実際は王族らしく腹の中は真っ黒で、つねに策略さくりゃうめぐらせているような人だ! だまされないぞ?!

「やっぱり、わかるか?」

「わかりますよ、殿下! やめて下さい、そんなことに私の大切な幼馴染を巻き込むのは?!」
 こんな策略家に、まっすぐなたちのジュリーを会わせるなんて、論外だ! 危険すぎる!

「なぜだ? 私の側妃候補に名前があがるだけでも、社交界で嫌でも目立ち… 花婿はなむこ候補が列を作って集まるのではないかな?」
 王族の影響力はそれほど大きいのだ。

「それでも絶対に彼女はダメです! お断りします、殿下!」
 ブリュノの言う通り、私が望むジュリーの花婿候補は… 私が1番、理想的だ!! 私がジュリーと結婚する!
 今までずっと結婚をけて来たが、今の私なら妻や子供を守れるだけの、能力と経験がある!

「エドガー! そう、固いことを言わずにだな…?」

「お断りします、殿下!」
 自分の気持ちを素直に認めよう! 私はジュリーが欲しい! 欲しくてたまらない!
 王都に戻ってから… 彼女のことが頭を離れず、仕事も進まない! ジュリーを手に入れなければ…?! 絶対に誰にも渡したくない!! 私なら彼女を幸せに出来る!

 幼い頃から長男長女同士、エドガーとジュリーは子供ながら、お互いの義務や責任についてよく知り、理解し合って来た。

 何年も離れて暮らし、大人になって再会した2人だが、エドガーがジュリーをすぐに理解したように… ジュリーもエドガーをすぐに理解した。
 2人には時間のへだたりが作用する、障害などほとんどなかったのだ。


 フゥ―――ッ… と大きく息をき、少し興奮気味ぎみだと自覚があるエドガーは、自分を落ちつけようと瞳を閉じた。
  
 ギュッ… とこぶしをにぎり自分に気合きあいを入れる。

「殿下! 急用を思い出したので、私はここで、失礼します!」
 溜まった仕事が、山のように積まれた執務机を離れ、王太子マクシミリアンの前を大股おおまたで横切り、エドガーは執務室の扉に向かう。

「ええっ?! おい、エドガー?! ちょっと待てっ…?!!」
 仕事を放り出し帰宅しようとするエドガーを、あわてて同僚のブリュノが引き止めようとするが…

「申し訳ないが、一刻いっこくも早く求愛の準備をしたいから…!」 
 まずは弁護士と会う。
 それから、セイフォード男爵が一目見て、ジュリーと私の結婚を即決そっけつで受け入れそうな、完璧な婚前契約書を作らないと?! 


 興味津々きょうみしんしんでエドガーをながめる王太子マクシミリアンに、扉の前から一礼し…
 あわてるブリュノの肩をトンッ… トンッ… とたたくと、エドガーは自分の執務室を出た。





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