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11話 温かい胸
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ジュリーはエドガーの広い胸でなだめられ、涙と一緒にあふれ出した悲しい気持ちを、ようやくおさえることができた。
エドガーの温もりに名残惜しさを感じつつ… そっと離れる。
「ごめんなさい、エドガー… すっかりあなたに甘えてしまって…」
これ以上、抱きしめられたら… 心地良すぎて離れられなくなってしまうわ?!
「いや、かまわないさ! 幼馴染とは、そういう気安いものだろう?」
「それにあなたは従兄だし? ふふふっ… 昔からエドガーは、本当の兄のように… 私に優しかったわね?」
私たちの中で1番年上のエドガーは、分け隔てなく優しかった。
身体が弱い妹を気づかう、私の両親よりも……
ジュリーは泣いて赤く腫れた目で笑った。
「出来れば私も、我がままな弟ではなくて、少々生意気でも可愛い妹が欲しかったよ!」
愚痴をこぼしながら、エドガーはさりげなく、ジュリーの額に慰めのキスを落とす。
エドガーの前で泣いてしまった気恥ずかしさを隠すため、ジュリーはおどけてエドガーの広い胸を、指でツンッ… ツンッ… とつついた。
「もう…! エドガーったら、罪作りな優しさだわ?! こんな風に優しく慰めたりして…! 私ではなく他の令嬢だったら、きっと勘違いしてしまうわよ?! 気を付けて、伯爵様?!」
本当にダメよ! また、エドガーを好きになってしまいそう…?! お願いだから… 私を誘惑しないで、エドガー!!
ジュリーの言葉でエドガーはムッ… とする。
「こんなことを、誰にでもするわけでは無いさ…! 私がジョナサンと同じだとは思わないでくれ?」
「あら、そうなの? ごめんなさい… だって、あなたが大人になってからの事は、ジョナサンの話でしか知らないから…?」
ジョナサンから、エドガーがいまだに結婚しないのは、令嬢たちに人気があり過ぎて、選べないからだと聞いたわ?!
そんな令嬢たちはきっと、優しいエドガーにほんの少し親切にされただけでも、私のように好きになってしまうのではないかしら…?
「こら! 生意気だぞ、ジュリー?! そんな奴は、昔みたいにくすぐってやろうか?!」
エドガーは長い5本の指を、ジュリーの前でムカデの足のように動かして見せる。
「やっ… やめて、エドガー?! ダメよ?! 私は大人のレディーよ?! あなたは紳士でしょ?!」
逃げようとするジュリーは後ずさるが…
「ダメだ、許さないぞジュリー! 悪い子はお仕置きだ!」
「やっ…?!」
腕をつかまれたジュリーはグイッ… と引きよせられて、ふたたびギュッ… と抱きしめられ、エドガーの胸に捕まってしまう。
だが、ジュリーの予想に反して、くすぐられはしなかった。
「悪かった、ジュリー…!」
なぜかエドガーは謝罪の言葉を口にして、ジュリーの頭にコトンッ… と顎を乗せる。
「エドガー…?」
「君を傷つけたこと… ジョナサンに代わって謝るよ、ジュリー……!」
「ああ……」
「私にできることがあったら、何でも言って欲しい」
「……」
私と結婚してエドガー!!
思わず心の中でさけんだが… ジュリーは口には出さなかった。
「ジュリー? 子供のころのように、私を頼ってくれて構わないよ?」
「ありがとう… でも、エドガーが悪いわけではないから、気持ちだけ受け取るわ…」
ああ、エドガーに会えて良かった…! 昔と変わらないエドガーの優しさで、私の胸の痛みが少しずつ癒されてゆくのがわかる。
本当にあなたの気持ちだけで、私はじゅうぶんだわ……
ジュリーは静かに瞳を閉じた。
こうした触れあいは、きっとこれが最後だろうと… エドガーの温かい胸を堪能し、ジュリーは心に刻み込む。
エドガーの温もりに名残惜しさを感じつつ… そっと離れる。
「ごめんなさい、エドガー… すっかりあなたに甘えてしまって…」
これ以上、抱きしめられたら… 心地良すぎて離れられなくなってしまうわ?!
「いや、かまわないさ! 幼馴染とは、そういう気安いものだろう?」
「それにあなたは従兄だし? ふふふっ… 昔からエドガーは、本当の兄のように… 私に優しかったわね?」
私たちの中で1番年上のエドガーは、分け隔てなく優しかった。
身体が弱い妹を気づかう、私の両親よりも……
ジュリーは泣いて赤く腫れた目で笑った。
「出来れば私も、我がままな弟ではなくて、少々生意気でも可愛い妹が欲しかったよ!」
愚痴をこぼしながら、エドガーはさりげなく、ジュリーの額に慰めのキスを落とす。
エドガーの前で泣いてしまった気恥ずかしさを隠すため、ジュリーはおどけてエドガーの広い胸を、指でツンッ… ツンッ… とつついた。
「もう…! エドガーったら、罪作りな優しさだわ?! こんな風に優しく慰めたりして…! 私ではなく他の令嬢だったら、きっと勘違いしてしまうわよ?! 気を付けて、伯爵様?!」
本当にダメよ! また、エドガーを好きになってしまいそう…?! お願いだから… 私を誘惑しないで、エドガー!!
ジュリーの言葉でエドガーはムッ… とする。
「こんなことを、誰にでもするわけでは無いさ…! 私がジョナサンと同じだとは思わないでくれ?」
「あら、そうなの? ごめんなさい… だって、あなたが大人になってからの事は、ジョナサンの話でしか知らないから…?」
ジョナサンから、エドガーがいまだに結婚しないのは、令嬢たちに人気があり過ぎて、選べないからだと聞いたわ?!
そんな令嬢たちはきっと、優しいエドガーにほんの少し親切にされただけでも、私のように好きになってしまうのではないかしら…?
「こら! 生意気だぞ、ジュリー?! そんな奴は、昔みたいにくすぐってやろうか?!」
エドガーは長い5本の指を、ジュリーの前でムカデの足のように動かして見せる。
「やっ… やめて、エドガー?! ダメよ?! 私は大人のレディーよ?! あなたは紳士でしょ?!」
逃げようとするジュリーは後ずさるが…
「ダメだ、許さないぞジュリー! 悪い子はお仕置きだ!」
「やっ…?!」
腕をつかまれたジュリーはグイッ… と引きよせられて、ふたたびギュッ… と抱きしめられ、エドガーの胸に捕まってしまう。
だが、ジュリーの予想に反して、くすぐられはしなかった。
「悪かった、ジュリー…!」
なぜかエドガーは謝罪の言葉を口にして、ジュリーの頭にコトンッ… と顎を乗せる。
「エドガー…?」
「君を傷つけたこと… ジョナサンに代わって謝るよ、ジュリー……!」
「ああ……」
「私にできることがあったら、何でも言って欲しい」
「……」
私と結婚してエドガー!!
思わず心の中でさけんだが… ジュリーは口には出さなかった。
「ジュリー? 子供のころのように、私を頼ってくれて構わないよ?」
「ありがとう… でも、エドガーが悪いわけではないから、気持ちだけ受け取るわ…」
ああ、エドガーに会えて良かった…! 昔と変わらないエドガーの優しさで、私の胸の痛みが少しずつ癒されてゆくのがわかる。
本当にあなたの気持ちだけで、私はじゅうぶんだわ……
ジュリーは静かに瞳を閉じた。
こうした触れあいは、きっとこれが最後だろうと… エドガーの温かい胸を堪能し、ジュリーは心に刻み込む。
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