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9話 成長したジュリー エドガーside
しおりを挟む『ジュリー、久しぶりに馬で丘の上まで行かないか?』
…とジュリーを誘った。
約束の時間にエドガーは、セイフォード男爵邸の玄関ホールで待っていると… 階段をおりてきたジュリーの姿に、思わず見惚れてしまう。
エドガーの前にあらわれたジュリーは… 太陽に愛されたらしい肌は金色に輝き、弱々しさとは無縁に見える、活力が満ちあふれる大人の女性になっていた。
「……っ?!!」
2年前、父上の葬式で会った時は、ジュリーはまだ“成人の儀”を受ける前で、どことなく少女のような、子供っぽさが残る印象だったのに…?! たった2年で、こうも変わるものなのか?!
王都で見かける判で押したような、青白い肌で弱々しさや清楚さを演じて媚びを売る、似たような個性の令嬢たちとはあきらかに違う?!
初夏の空のように澄んだ瞳を細め、ニコニコと嬉しそうに笑うジュリーは… ジュリー自身が思うよりも、ずっと良い印象をエドガーにあたえた。
ドキッ…! と胸の中でエドガーの心臓がはねる。
ジュリーから目が離せなくなり… エドガーはポツリとつぶやく。
「……驚いたな!」
本当にあのジュリーなのか?! 子供のころ… 弟のジョナサンとケンカをしては、2歳も年下なのに言い負かしていた… あの生意気なジュリーが、本当に目の前にいる美女と同一人物なのか?!
腰までのばした髪は、夕暮れ時の美しい小麦畑を思わせる色をしていて…
そんな赤みが強い艶やかな金髪を、ジュリーはうなじのうえで1つにまとめ、馬の尻尾のようにゆらゆらと背中でゆらしながら歩いて来る。
「やっと会えたな、ジュリー!」
エドガーは自分が緊張していることを、ジュリーに悟られないよう気安さをよそおい、普段よりもほんの少し高めの声で、先に声をかけると… ジュリーの細い手を取り、礼儀正しくキスをした。
「お久しぶりです、ファゼリー伯爵様…!」
ジュリーも礼儀正しく挨拶を返す。
思わずエドガーがジッ… と見つめると、ジュリーの瞳はよりいっそうキラキラと輝く。
「やめてくれよ、ジュリー! ファゼリー伯爵様だなんて! 幼馴染の君にまで、そんな呼ばれ方をされたくないよ」
ジュリーは思っていたよりも、あまり落ち込んでは見えないな…?! ジョナサンのせいで、婚約解消になったジュリーがどれだけ傷ついたかと、心配していたけれど…? どうやらジョナサンの言い訳は、正しかったようだ!
『兄さんが心配しなくても大丈夫さ! ジュリーは僕を愛していないから平気だよ! 彼女のプライドを、少しだけ傷つけたかも知れないけれどね?』
ジュリーが乗馬の誘いを受け入れた、感傷的な理由とは違い… エドガーは、昔を懐かしんで乗馬に誘ったのではなかった。
ファゼリー伯爵家の当主として、弟が迷惑をかけたことを謝罪するために、責任と義務からジュリーを誘ったのだ。
元気そうなジュリーの顔を見て、心の中でエドガーは、ホッ… と安心し胸をなでおろした。
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