婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された

みみぢあん

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2話 衝撃

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 近くでジュリーが見ているとは気付かない、婚約者のジョナサンは… ジュリーの目の前で、躊躇ちゅうちょなく妹のアリアーヌを抱きしめた。


「僕は… こんなに君を愛しているのに…?!」

「そんなこと言わないで… ジュリーお姉様は、あなたの婚約者なのよ?」
 アリアーヌは悲し気に、華奢きゃしゃな白い手でジョナサンの頬にふれる。

「だけど、アリアーヌ… ジュリーと結婚すれば、僕たちは義理の兄妹となって、セイフォード男爵家で、暮らさなくてはいけないんだぞ」

 セイフォード男爵家は男子に恵まれなかった。
 そこで、母方の従兄いとこにあたる伯爵家の次男ジョナサンを、長女のジュリーが結婚し婿養子むこようしとして迎え… 2人で男爵家を継ぐことになっている。

「わかっているわ、でも…」

「僕は耐えられないよ! ジュリーを愛すことなんて、できないよ。 それに彼女も僕を愛していないし…」
 1歳年下の妹アリアーヌと婚約者のジョナサンは抱き合い… ジュリーの目の前で、熱烈ねつれつにキスをした。

 ジュリーは息をのむ。

「……っ?!!!」
 いったい、何が起きているの?! キスをするなんて、信じられないわ! 信じられない?!!!
 何をしているの、ジョナサン?! アリアーヌ?!

 無意識でジュリーはよろよろと後ろに下がろうとして…
「きゃっ…!」
 足がもつれ、小さなさけび声をあげて、ジュリーは転んでしまう。

「…?!」
「…っ!」
 ジュリーのさけび声に気づいたジョナサンとアリアーヌは、パッ… と離れ、2人一緒に振り向いた。

「……ぅ」
 もう、嫌っ…! 私ったら、なんてドジでマヌケなの!
 
 地面に座り込んだジュリーは、自分を見つめる2人と目が合い… サッ… と視線をそらす。

「お姉様!」
 自分たちのキスを、ジュリーに見られたと知り、妹のアリアーヌはひどく動揺し、涙を浮かべて謝ろうとするが…
 婚約者のジョナサンは開きなおり、図々ずうずうしくジュリーに、婚約解消をせまった。

「悪いがジュリー、僕たちの話を盗み聞きしていたのなら、わかるだろう? 僕は君とは結婚できない」

「……」
 衝撃があまりにも強く、ジュリーの頭の中は真っ白になり、2人に何も言い返せない。

「ああっ! ごめんなさい、お姉様… お願い、許してぇ―――っ!」

「…いやっ! 放して… アリアーヌ、私に触らないで!!」
 子供のように泣きじゃくり、しがみつくアリアーヌの手を振りほどくと… ジュリーは屋敷の中に走ってもどり、自分の部屋に閉じこもった。



 姉のジュリーを追って男爵邸内にもどったアリアーヌは、パニックにおちいり泣いたりさけんだりと大騒ぎをした。

「許して、ジュリーお姉様ぁ―――っ!」

「落ち着くんだアリアーヌ! どうせジュリーは僕を愛していないし… 僕は彼女と婚約解消をするつもりだった」
 そんなアリアーヌを抱きしめ、ジョナサンは熱心になぐさめ頬にキスをする。


「ア… アリアーヌお嬢様?!」
 アリアーヌとジョナサンのただならぬ様子を見ていた、男爵家の使用人たちは… すぐに2人が親密な関係であること気づく。

 
 2人が恋人同士であることを、今までのように隠すことが出来なくなった。
 





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