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1話 結婚目前

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 セイフォード男爵家の長女ジュリーは、自分の結婚式が3ヶ月後にせまり、準備に追われていた。

 目が回りそうなほど忙しい時だったが、神殿で簡単な結婚式当日の打ち合わせを終え、母親とともに男爵邸に帰宅すると…

「ジュリーお嬢様、1時間ほど前から婚約者のジョナサン様が、いらっしゃっています」
 帰宅して早々に、まだ上着を着たままのジュリーに… 婚約者のファゼリー伯爵家次男、ジョナサンが約束も無しでたずねて来たと聞き戸惑とまどった。

「まぁ、ジョナサンが? 待たせてしまったかしら。 今日は会う約束はしていなかったと思うけれど…」
 どうしたのかしら… 何か問題でも起きたのかしら? もう、嫌だわ。 こんなに忙しい時に!

 ジュリーは上着とボンネット(婦人用の帽子)を脱いで、使用人に渡す。

 使用人はジュリーから上着を受け取ると、ニコニコと微笑んだ。
「裏庭の方でアリアーヌお嬢様が、ジョナサン様のお相手をされておりますから… ジュリーお嬢様、そんなに急がなくても良いと思いますよ」

「アリアーヌが? そう… 良かったわ。 ありがとう」
 ジュリーは外出着のまま庭に出て、屋敷の裏に回った。

 
 つるバラが咲き乱れるトレリスの奥で、ジュリーの婚約者ジョナサンと妹アリアーヌの話し声が聞こえる。

 咲き乱れる真っ赤なバラの前で、ジュリーは2人を見つけたが…

「ああ… ジュリーと結婚なんてできない!」
「ジョナサン」
「やっぱりダメだよアリアーヌ」

「お願い、それ以上言わないで…」
 妹アリアーヌは、大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼし… ジュリーの婚約者ジョナサンの腕の中から顔を上げた。


「…?!」
 婚約者と妹のただならぬ空気を感じ、ジュリーはピタリと足を止める。

 話し声がジュリーの耳に届くほど、近くに立っていたが… 自分たちの世界に入り込んだ2人は、ジュリーの存在に気付かなかった。 






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