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16話 うわさ話
しおりを挟むセイン・ガルフェルト侯爵とマリエルが結婚し、1年がすぎようとしていた。
王立騎士団の部下たちは、騎士の待機場所で、幸せそうな上司、セイン・ガルフェルト侯爵のうわさ話で、毎日のように花を咲かせていた。
「おい、見たか?! 奥様に子供が産まれたからって… 副団長が、1日じゅうニヤニヤ笑っていたぞ?」
「副団長のニヤニヤ笑いは、奥様と結婚した時からじゃないですか?!」
「前の結婚の時は、ずっと機嫌が悪かったけど… 本当に結婚は、相性が大切だってことだな! お前、気を付けろよ?!」
「アハハハハッ! その前に… 結婚相手を、私に紹介して下さいよ?」
「ああ! そう言えば、ギリスの話を聞いたか? あいつ… 近衛騎士団をクビになったらしいぞ?」
ガルフェルト侯爵夫妻の浮かれたうわさ話とともに… 以前、王国騎士団に所属していた男の名前が、久しぶりに出た。
「え?! 何でまたギリスは、クビになったのですか?!」
あれだけ、自分たちに近衛に行くことを自慢していた男が、たった1年しかもたなかったのか? と元同僚騎士たちは顔をしかめる。
「護衛対象の王女に、もっと美形の護衛騎士が良いと、ギリスは毎日、嫌味を言われて… それで耐えられずに、暴言をはいた… という話だ」
王族に不敬な態度をとって、何らかの重い罪には問われず… 近衛騎士団をクビになっただけで済んだのだから、ある意味、ギリスは幸運だった。
「あいつ、口が悪かったから… だってほら! 副団長の奥様はあんなに美人で親切な良い人なのに… 地味だの、何だのと、聞くのも不愉快な悪口を言っていたでしょう?」
話を聞いた騎士は、パチンッ… と指をならした。
厳しすぎる副団長のたりない部分を補うように…
子供が産まれる前までは、ガルフェルト侯爵夫人は騎士たちの待機場所へ、毎日、美味しいおやつを、差し入れてくれたため、王立騎士団の騎士たちには、とても受けが良いのだ。
「そうだな… あの時は、ギリスと一緒に私たちまで奥様の悪口を言っていると、副団長に誤解されたらどうしようかと、ヒヤヒヤしたおぼえがあるよ」
「自分の口の悪さが、結婚をだいなしにしたのに… ギリスのやつは、近衛に移籍するまでずっと奥様の悪口を、言っていましたからね? あいつがいなくなって、どれだけホッ… としたことか!」
騎士たちは、当時のことを思い出しただけで、うんざりとした気分になり…
ハァ―――ッ… と大きなため息をつき、やれやれと首を横にふった。
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