上 下
17 / 23

16話 うわさ話

しおりを挟む

 セイン・ガルフェルト侯爵とマリエルが結婚し、1年がすぎようとしていた。
 王立騎士団の部下たちは、騎士の待機たいき場所で、幸せそうな上司、セイン・ガルフェルト侯爵のうわさ話で、毎日のように花を咲かせていた。


「おい、見たか?! 奥様に子供が産まれたからって… 副団長が、1日じゅうニヤニヤ笑っていたぞ?」
「副団長のニヤニヤ笑いは、奥様と結婚した時からじゃないですか?!」
「前の結婚の時は、ずっと機嫌が悪かったけど… 本当に結婚は、相性が大切だってことだな! お前、気を付けろよ?!」
「アハハハハッ! その前に… 結婚相手を、私に紹介して下さいよ?」

「ああ! そう言えば、ギリスの話を聞いたか? あいつ… 近衛騎士団をクビになったらしいぞ?」
 ガルフェルト侯爵夫妻の浮かれたうわさ話とともに… 以前、王国騎士団に所属していた男の名前が、久しぶりに出た。

「え?! 何でまたギリスは、クビになったのですか?!」
 あれだけ、自分たちに近衛に行くことを自慢していた男が、たった1年しかもたなかったのか? と元同僚騎士たちは顔をしかめる。

「護衛対象の王女に、もっと美形の護衛騎士が良いと、ギリスは毎日、嫌味を言われて… それで耐えられずに、暴言ぼうげんをはいた… という話だ」

 王族に不敬ふけいな態度をとって、何らかの重い罪には問われず… 近衛騎士団をクビになっただけで済んだのだから、ある意味、ギリスは幸運だった。

「あいつ、口が悪かったから… だってほら! 副団長の奥様はあんなに美人で親切な良い人なのに… 地味だの、何だのと、聞くのも不愉快ふゆかいな悪口を言っていたでしょう?」
 話を聞いた騎士は、パチンッ… と指をならした。

 厳しすぎる副団長のたりない部分をおぎなうように…
 子供が産まれる前までは、ガルフェルト侯爵夫人は騎士たちの待機たいき場所へ、毎日、美味おいしいおやつを、差し入れてくれたため、王立騎士団の騎士たちには、とても受けが良いのだ。

「そうだな… あの時は、ギリスと一緒に私たちまで奥様の悪口を言っていると、副団長に誤解されたらどうしようかと、ヒヤヒヤしたおぼえがあるよ」

「自分の口の悪さが、結婚をだいなしにしたのに… ギリスのやつは、近衛に移籍いせきするまでずっと奥様の悪口を、言っていましたからね? あいつがいなくなって、どれだけホッ… としたことか!」

 騎士たちは、当時のことを思い出しただけで、うんざりとした気分になり…
 ハァ―――ッ… と大きなため息をつき、やれやれと首を横にふった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚式をやり直したい辺境伯

C t R
恋愛
若き辺境伯カークは新妻に言い放った。 「――お前を愛する事は無いぞ」 帝国北西の辺境地、通称「世界の果て」に隣国の貴族家から花嫁がやって来た。 誰からも期待されていなかった花嫁ラルカは、美貌と知性を兼ね備える活発で明るい女性だった。 予想を裏切るハイスペックな花嫁を得た事を辺境の人々は歓び、彼女を歓迎する。 ラルカを放置し続けていたカークもまた、彼女を知るようになる。 彼女への仕打ちを後悔したカークは、やり直しに努める――――のだが。 ※シリアスなラブコメ ■作品転載、盗作、明らかな設定の類似・盗用、オマージュ、全て禁止致します。

従姉が私の元婚約者と結婚するそうですが、その日に私も結婚します。既に招待状の返事も届いているのですが、どうなっているのでしょう?

珠宮さくら
恋愛
シーグリッド・オングストレームは人生の一大イベントを目前にして、その準備におわれて忙しくしていた。 そんな時に従姉から、結婚式の招待状が届いたのだが疲れきったシーグリッドは、それを一度に理解するのが難しかった。 そんな中で、元婚約者が従姉と結婚することになったことを知って、シーグリッドだけが従姉のことを心から心配していた。 一方の従姉は、年下のシーグリッドが先に結婚するのに焦っていたようで……。

幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。

完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫
恋愛
筆頭侯爵家の令嬢レティシアは、真実の愛に目覚めたと言い出した婚約者の第三王子に婚約破棄される。元々交流もなく、学園に入学してからは男爵令嬢に骨抜きになった王子に呆れていたレティシアは、嬉々として婚約解消を受け入れた。 そっちがその気なら、私だって真実の愛を手に入れたっていい筈!そう心に決めたレティシアは、これまでの他人に作られた自分を脱ぎ捨てて、以前から心に秘めていた初恋の相手に求婚する。 実は可憐で庇護欲をそそる外見だった王子の元婚約者が、初恋の人に求婚して好きになってもらおうと奮闘する話です。 誤字脱字のご報告ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。 R15は保険です。 番外編~レアンドルはBL要素を含みます。ご注意ください。 他サイトでも掲載しています。

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん
恋愛
精霊に護られた国ルテリアル。精霊の加護のお陰で豊かで平和な国ではあったが、近年ではその精霊の加護も薄れていき、他国から侵略されそうになる。戦いを知らない国王は、スネフリング帝国に助けを求めるが、その見返りに要求されたのは──。 精霊に護られた国の王女として生まれたにも関わらず、魔力を持って生まれなかった事で、母である王妃以外から冷遇されているカミリア第二王女。このカミリアが、人質同然にスネフリング帝国に行く事になり─。 ❋独自設定有り。 ❋誤字脱字には気を付けていますが、あると思います。すみません。気付き次第修正していきます。

処理中です...