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56話 平穏な日々2
しおりを挟むミレイユとクレマンの婚約が破棄寸前にまで、陥った日から半年の月日が過ぎた。
その間に、学園で行われた卒業試験で、クレマンの成績は上位9位にまでのぼりつめる。
「快挙だわ?!」
「いいえ奇跡よ!!」
「おめでとうクレマン!」
ミレイユも親友のネリーも、うれし涙を流しながらクレマンにお祝いの言葉を贈った。
…だが、ドミニクからは少々辛口の意見が出た。
「9位ぐらいは当然だね! クレマンはあれだけ猛勉強していたし、ぼんやりやってる覇気の無い連中を、蹴散らすのは簡単だよ…? でもまぁ… 6位より上は、ちょっと難しいけど?」
ドミニクが言う、『ボンヤリやっている連中』とは、数ヶ月前に退学したアルブライトン公爵家のジョゼフのような… 幼い頃から勉強する環境を大金をかけて整えられてきた、裕福な高位貴族出身者のことである。
「ふふふっ… まぁ、ドミニクったら!」
「何年も首位を独占してるから、言うことが辛口ねぇ?!」
当然、今回も首位はドミニクである。
ミレイユとネリーが苦笑していると… クレマンがカラカラと笑っ
た。
「あはははっ… ドミニクに言われると、耳が痛いなぁ~…? だって僕も半年前までは… その、『ぼんやりやっていた連中』の1人だったからさぁ…?」
「僕から見れば、クレマンはやる気になれば、これだけのことを半年で出来るのだから… 『もっと早くやれよ!』 …て、気分だよ?!」
「いや… さすがに僕もここまで、成績があがるとは思わなかったから!」
いくら辛口意見を言われても、クレマンのために心を砕き、一番多く勉強に関する助言をくれたのも、ドミニクだったから… クレマンとしては何を言われても、ドミニクには感謝の気持ちでいっぱいである。
「それよりクレマン…? まだ下級文官の試験が終わってないから、いつまでもお祝い気分でダラダラ油断していると、肝心な時に失敗するかもしれないぞ?!」
学園に入学してから首位を独占してきたドミニクらしい、最後まで慎重で手抜きしない姿勢は、クレマンが見習うべきところだ。
「確かに… 最後まで手は抜けないね?!」
「クレマンは次の論文… 出したのか?」
「うん、これからだよ!」
「ああ、私も論文出さないと!」
男子2人のやり取りを見ていたミレイユからも、急に負けん気が出て来る。
「そうね… 私ももう少しでできるから… 図書室で仕上げてから、今日中に出そうかしら?」
ネリーもミレイユに続き、やる気が出たらしい。
「私もネリーと図書室へ行こうかなぁ…? クレマンとドミニクはどうするの?」
「もちろん僕は、ミレイユが行くなら一緒に行くに決まっているよ!」
「僕は毎日、図書室に行かない日は無いけどね?」
卒業まじかの日々を、4人は最後まで猛勉強を続行することにした。
ちなみに、ミレイユとネリーの成績も… 女子学園生の中では上位に食い込んでいた。
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あらすじ
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登場人物
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