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53話 王立騎士団2 クレマンside

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 ミレイユを兄のルドヴィクにたくしたあと、クレマンは騎士たちの待機たいき所に近い… テーブルと椅子が置かれただけの、窓に逃亡防止の鉄格子てつごうしが付けられた、簡素かんそな小部屋につれて行かれた。

「聞き取り調査をする、担当の者が来るまでお待ちください」

「はい」
 いよいよ僕の取り調べが、行われるんだな? 正確にくわしく説明できるように、些細ささいなことまで思い出しておかないと?! あの男に殴りかかった時は、僕もあせっていたから何もかもアッ… という間の出来事だったし……?

 椅子に座りフゥ―――ッ… と深呼吸を何度かしてから、クレマンは腕組みをすると目を閉じた。
 そして、騒ぎが起きた時の記憶を、最初から順番にたどってゆく。



 しばらくそこで待たされたあと… 聞き取り調査をするためにやって来た、騎士の姿を見てクレマンは驚き、思わず椅子から腰を上げ、直立不動ちょくりつふどうでビシッ…! と姿勢を正した。

「すまない、待たせてしまったな…?」

「い… いいえ…!」
 この人の騎士服… さっきまで一緒にいた騎士たちや、ルドヴィクきょうとはぜんぜん違う?! 騎士団の中でも、かなり高位の騎士ではないかな?! 

 ロイヤルブルーの地に金の刺繍ししゅうがほどこされた、王立騎士団の騎士服は、他の騎士たちと同じだが… 肩には金の房飾ふさかざりがついた肩章けんしょう
 腰に下げた剣にきざまれた紋章は、ガルフェルト侯爵家の当主を表す紋章だった。

「……っ」
 違う! 高位の騎士どころか、剣にきざまれた侯爵家の紋章…?!
 この人は王立騎士団の騎士団長だ!! そんな人がなぜ、たかが喧嘩けんか騒ぎの取り調べをするのだろう?!

 ファーロウ家が出した、ミレイユと婚約を継続するための、『騎士団付きの文官となり、王立騎士団の鍛錬たんれんを受ける』という条件を受け入れた時、クレマンは王立騎士団について調べた。
 そこで現騎士団長が、ガルフェルト侯爵家の当主であることも知ったのだ。

 騎士団長は質素しっそな椅子をガガッ… と引き出し、クレマンの向かいがわに座った。


「オルドリッジ子爵家の令息、クレマン君! 少し話が長くなるだろうから、君も立ってないで座りなさい」

 怒鳴られたわけでもなく… 向かいがわに座っただけなのに、ただならぬ威圧感いあつかんを騎士団長から感じ、クレマンは顔を強張こわばらせる。

「は… はい!」
 ああ… 何だかすごく、嫌な予感がする?! 騎士団長の気性が激しすぎて、文官がなかなか王立騎士団で長続きしないという話は、本当かなぁ…?!
 
 それまで冷静だったクレマンだが、自分の取り調べを行うのが、ただの騎士ではなく、気があらくて有名な王立騎士団の騎士団長、セイン・ガルフェルト侯爵だと知り、さすがに動揺を隠せなかった。




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