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36話 物思う2
しおりを挟む4冊目の課題図書を読み終わり、クレマンが学園長に4度目の小論文を提出した頃…
ミレイユとネリー、クレマンとドミニクの顔ぶれで、食堂にあつまり一緒に昼食をとっていた。
「当時の宰相だったべリス公爵がとった、見て見ぬふりをした政策は、ジャガイモの疫病で凶作が続いた南部地方の大飢饉を、より深刻な状態にしただろう?」
「いや、クレマン…! べリス公爵もだが、むしろ南部地方の領主たちが、小作人たちから小麦を搾取し続けたうえに… 南部に小麦を流通させる時にも、王都と同じ高い値段を設定したのが、餓死者を大量に出した原因なんだ!」
モリモリと食事をとりながら、クレマンとドミニクは課題図書で読んだ内容で議論をかわしていた。
「驚いたわね! クレマンがすごく………」
議論が白熱する男子2人を見つめながら、ネリーは何かを言いかけるが… ハッ…! とミレイユを気にして、とちゅうで話すのを止めてしまう。
ネリーの言葉をとちゅうから引き継ぎ、ミレイユが続きを話す。
「クレマンがすごく、賢そうに見える? ドミニクみたいに…?」
本当に、ドミニクと議論を始めてから、顔つきまでキリリッ… として、春の陽射しのような、優しい雰囲気なんてまったく無いのよね?
ミレイユはため息をついた。
「ええ… 印象が大きく変わったわ?!」
「……」
ネリーはこの光景を始めて目にするから、驚くでしょうけれど… 私が図書室へ行くと、毎日この光景に出会うから、だんだん見なれてきた。
オルドリッジ子爵家の馬車で、クレマンと一緒にファーロウ家へ、帰宅するようになったミレイユは… 毎日、図書室でクレマンと待ち合わせて、正門前の通りで待つ馬車に向かうようにしていた。
「急にクレマンは、どうしたのかしら?!」
ネリーは不思議そうに、クレマンとドミニクを見つめる。
「課題図書を熱心に読み始めてから、クレマンはずっとこんな感じよ? 論文を提出すると学園長から、学園生同士で、自分の論文の内容で議論させながら指導するらしいの」
「ずっと?」
「…本を読んでいない時の彼は、論文に自分の考えをどう書くか、考え続けているから… 私の前でも時々、こんな話題が飛びだすのよね… でも私はドミニクみたいに、議論できないから…」
前はニコニコと笑っていたけれど… 今は厳しい表情で、心を何処かに飛ばして、考えこんでばかりだわ。
「ねぇ、ミレイユ? それって、すごく………」
ネリーはまた、何かを言いかけて、途中で止めてしまう。
ミレイユがまた、話の続きを予想して引き継ぐ。
「クレマンと一緒にいても、つまらない?」
「……っ」
ネリーは気まずそうに、上目づかいでミレイユの顔を見た。
「……」
この短い間に、クレマンは本当に変わったわ…? それだけ成長しようと、真剣に取り組んでいるからだけど…
このままだと本当に、私はクレマンに置いて行かれてしまう! クレマンがこんなに頑張っているのに… やっぱり私だけが、のんびりしてはいられないわ?!
ミレイユは焦りを感じ、自分の手をギュッ… と組み合わせてにぎりしめる。
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