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30話 クレマンの友人4

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 クレマンの友人ドミニクは、学園で1位の成績を3年連続でキープするほど優秀だが… 学園内では浮いた存在であり、ふだんから孤立こりつしていて友人も少ない。 

「ドミニクは成績を維持いじするために、休憩時間も静かに1人で勉強していることが多いから… たぶんギヨームは、僕とドミニクの仲が良いことを知らないんだ」
 苦笑したクレマンが、普段のドミニクのことを気まずそうに話す。
 2人が友情を深めているのは、学舎がくしゃ内ではなく… おもに人が少ない別館の図書室だった。

「僕に友達がいないからって… そんなに気をつかわなくても良いよクレマン! 僕は1人でいる方が好きだからさぁ…! 誰かに学園に住む幽霊ゴーストだって、言われても別に気にしないよ」

「…3年続けて首席しゅせき幽霊ゴースト? 私ならそんな賢い幽霊ゴーストがそばにいたら、ずっと何かしら質問してしまいそうだけれど?」
 ネリーを見たら、ウンウン… とミレイユにうなずき、話を追加した。

「男の子たち… て変ね? 女の子の首席のなんて、みんなに尊敬されて、友達になりたがる子が多いのに…?」

「……っ」
 どうやらドミニクはほめられるのが苦手らしく、ポッ… と頬を赤くした。
 そんな友人を見て、クレマンは苦笑する。

「僕もそう思うから、他の友人に紹介しようとすると、ドミニクが嫌がるんだ…」
 ミレイユもギヨームの犠牲者ぎせいしゃだから、話してやってくれないか?とクレマンに頼まれて、しぶしぶ食堂に来たドミニク。
 
「とにかく、そ… それで講義室のはしっこで、僕が前の講義の復習をしていると、ギヨームが何人かと一緒に来て、クレマンのうわさ話をしていたんだ」
 ドミニクは友達のいない幽霊ゴーストと同じだと、ギヨームはバカにして… ドミニクの存在を無視し、クレマンの間違った話を、他の友人たちに面白おかしくばらいたのだ。

おろかで不快な人!」
「ええ、本当に! そんな人には天罰てんばつが下れば良いのよ?!」

 女の子2人は嫌悪感をあらわに、きすてた。

「その場にクレマン本人がいないから、ギヨームは言いたい放題ほうだいで、どんどん好き勝手なことを言って… なんか盗み聞きしたみたいで、嫌だったけど、それでクレマンにだけは報告したんだ」
 話し終わるとドミニクは、デザートの果物をシャリシャリと食べる。

「それを聞いて信じるやつらも、どうかと思うけど…! ギヨームはいったい何が面白くて、僕のうわさなんて流したんだ?」

「たぶん… クレマンが誰にでも、好かれるからだと思うけどね?」
 首をひねるクレマンに… ドミニクは果物を食べながら、さらりと答えを出す。 

「つまりギヨームはクレマンに嫉妬して、あんなうわさを流したの?」

「だってミレイユ… クレマンには美人の婚約者がいて… 男子に人気がある従妹もクレマンを好いている… それに僕みたいな人間もふくめて、たくさん友だちがいるだろう? ギヨームとは違って…」
 人形のような繊細せんさい無垢むくな美しさをもつ、クレマンの婚約者ミレイユに、『誰だってうらやましくて嫉妬するよ?』とドミニクはチラリと視線をむける。

 ミレイユはドミニクと目が合い、『美人の婚約者』と言われ恥ずかしかったが大きくうなずいた。
「確かに… ドミニクの言う通り、クレマンはたくさんの人に好かれているわ…?」
 
「ううぅ―――んんん…」
 眉間にしわを寄せ、クレマン本人は腕組みをして、うなり声をあげた。

「まさか… あんなうわさを作り出して、流す人がいるなんて… ミレイユに聞いた時は、信じられなかったけれど… でもそうやって、醜聞しゅうぶんは作られるのかしら?」
 ネリーは残ったお茶を飲みほすと、気持ち悪そうに空になったティーカップをにらみ、カチャッ… と皿にもどす。

 
 ネリーの言う通り、ギヨームは間違えて思いこんだのではなく… 自分勝手な嫉妬で、クレマンとパトリシアが浮気したと、うその話を作ったのだ。





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