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29話 クレマンの友人3
しおりを挟むミレイユはネリーと2人で、クレマンと待ち合わせをした食堂へ行くと… クレマンも友人を1人連れて、奥のテーブルに座っていた。
「待たせてしまったかしら、クレマン?」
あら、今度は誰かしら…? 珍しいわね、クレマンが昼食にお友だちを連れて来るなんて? 私がネリーを連れて来ると言ったからかしら?
「ミレイユ、そんなことは無いよ!」
クレマンはミレイユとネリーの姿を見つけると、ニコリッ… と笑って席を立つ。
クレマンの友人も一緒に立った。
「ごめんなさいクレマン様、私もご一緒しても良いかしら?」
恋人たちの邪魔をするのは気が引けると、ネリーは先にクレマンの許可を求めたが… ミレイユがクレマンと昼食をとる約束をした時点で、ネリーが同席することを先に話していた。
テーブルの上には、クレマンが注文した4人分のランチセットがならんでいる。
「もちろんだよ、ネリー嬢! 僕もちょうど、友人を君たちに紹介したくて、連れて来たんだ!」
クレマンたちが確保していた席に座る前に、ネリーがたずねると… クレマンは隣に立つ友人を、ミレイユとネリーに紹介した。
「ミレイユ、ネリー嬢、僕の友人メリダン男爵家のドミニクを、紹介するよ!」
「初… 初めまして、クレマンとは入学したばかりの時にやった、共同で研究する課題を一緒にやった時からの、友人なんだ」
あまり社交的ではないのか、緊張したようすで、ドミニクは頬を赤くして、クレマンとの出会いを話した。
「ドミニク… 僕の婚約者のミレイユと、ミレイユの友人のネリー嬢だよ!」
続けてクレマンはドミニクにミレイユとネリーを紹介し… ミレイユとネリーは順番に、握手の手を差し出した。
「初めまして、ドミニク様」
「こんにちは、ドミニク様!」
「こんにちは… あの、ミレイユ嬢、ネリー嬢… 僕のことは、気軽にドミニクと呼んでください! 緊張してしまうから…」
ドミニクはおずおずとだが礼儀正しく、2人の手を軽くにぎり、握手にこたえる。
「あらっ…!」
「ふふふっ…」
ミレイユとネリーは顔を見合わせてほほ笑みあう。
「でしたらドミニク… 私たちも、気軽にミレイユとネリーと呼んでくださる?」
「はい…!」
「なら僕もネリーに、クレマンと呼んで欲しいな」
クレマンが口をはさんだ。
「ふふふっ… ミレイユがそれで良いなら?」
ネリーは笑いながらミレイユを見つめる。
「ネリー、私に反対する理由は何もないわ? 今までそうしなったのが不思議よね?」
思慮深いネリーは、今までクレマンを友人あつかいはしないで… 1歩引いた親友の婚約者という立場の、知人としてあつかってきたからだ。
(間違ってもクレマンとネリーの浮気のうわさが出ないように)
敬称をはぶいて名前を呼ぶということは、クレマンとネリーはお互いを友人としてあつかうことに決めたらしい。
ミレイユたちが向かいがわの席に座るのを、男子2人は行儀よく待ってから静かに座る。
昼食を半分以上、食べ終わったところで、クレマンが口を開いた。
「実は2人にドミニクを紹介したのは… ドミニクも卒業したら、下級文官の試験を受ける予定なんだ! それで試験のことを相談したら、いろいろ助言をもらってね!」
「あら?!」
なるほど! 確かに、同じ道を進もうとしている人に、助言をもらえるなら、心強いわね?! たくさん友人がいる、クレマンだからできる方法だわ!
「ドミニクはね、すごく賢いんだ! 男子学園生の中で3年連続で首席なんだよ?!」
クレマンは自分のことのように、自慢げにドミニクをほめた。
「…3年も?! すごいわ、ドミニク…!」
「いや… 僕は貧乏な男爵家の次男だし、それに妹たちの持参金の問題もあって… 学園を卒業したら、僕は実家を頼れないから」
ネリーが驚いていると、ドミニクはもじもじと家庭の事情を話す。
「妹さんのことまで考えて…?」
まぁ… ドミニクは優しい人なのね?
ドミニクの話を聞き、ミレイユとネリーがほんわかとした気持ちで、感心していると…
「それと… ドミニクが僕に『ギヨームが間違ったウワサを流している』と警告してくれた友人なんだ!」
「ええっ…?!」
「ええっ…?!」
ミレイユとネリーは同時に驚きの声をあげた。
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