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25話 毎日送迎 クレマンside
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広い領地を所有する、由緒正しい貴族の家に生まれた、クレマンのような長男ならば…
基本的な教養を学園で学んだ後は、現当主から後継者として領地の運営法を学び、少しでも早く立派な領主へと、成長することを求められる。
だが…
「クレマン、領地の運営も大切だが… お前はその前に、もう少し人を見る目と、付き合う方法を、学ばなければならない」
ファーロウ家との話し合いを終え、オルドリッジ子爵邸に帰宅し、夕食をすませた後で… お茶を飲みながら父と息子は、今後の話しあいをした。
「はい、父上… 今回のことで僕も目がさめました! 2度とこんな失敗は、繰り返しません!」
子供の頃から仲が良かったという理由で、パトリシアを信頼していた自分が、情けない! 今回のことで僕は、ミレイユの信頼だけではなく… 僕自身の自信までうしなってしまった! 他人とかかわることが、すごく怖いよ……
「今のような経験不足のまま、領地の運営にかかわっても… 結局は領地民たちとうまく付き合えず、最後には信頼をうしない、そのうち大きな失敗を犯すだろう」
「はい…」
「今回のファーロウ家とミレイユ嬢との約束を、けして違えることなく、必ず下級文官の試験に受かり、最後まで成し遂げなさい!」
ミレイユの父と兄に挑発され、下級文官になると決意した息子の意志を… クレマンの父オルドリッジ子爵は、大いに歓迎した。
未熟な息子が、自分の知らない人たちと、積極的にかかわることで… クレマンが大きく成長することを、オルドリッジ子爵は期待しているのだ。
「はい、父上!」
「そこでクレマン、私からもいくつか助言がある」
今までは、よほどのことが無いかぎり、父親はクレマンの行動に口を出す人ではなかったが… どうやら、これからは口を出すつもりらしい。
「何でしょうか?」
「お前は毎日、学園までパトリシアの送りむかえをしていたのに… 婚約者のミレイユ嬢に何もしないのは、あまりにも不公平ではないか?!」
「あっ?!!」
父親に言われて、初めて気がついたクレマン。
翌朝。
ファーロウ邸の前にとめた、オルドリッジ子爵家の馬車にミレイユが乗りこむのを… クレマンはミレイユの小さな手を取り手伝った。
「それで、クレマンは… お父さまに言われて、私をむかえに来たの?」
「いきなり来て、ごめんよミレイユ… やっぱり迷惑だったかい?」
でも、こういうことは少しでも早く、始めたほうが良いかと思って… 早くミレイユと以前のように、仲良くなりたかったし… やっぱり自分勝手だったかなぁ?
クレマンは父に夕食の後で助言されたため… ミレイユをむかえに来ることを、今朝になってから手紙で知らせた。
クレマンは顔を赤くする。
「いいえ… 突然だったから驚いただけ」
「本当に?!」
「ねぇ、クレマン… 本気で毎朝、私をむかえに来るの?」
「もちろんだよ! 帰りもファーロウ邸まで送るよ?」
「帰りも? でもあなた… 勉強をしなければ、いけないでしょう?」
ミレイユは心配そうにクレマンにたずねる。
「僕はミレイユの送りむかえをしたいから! 君は嫌かなぁ?!」
わぁ… 僕の心配をしてくれるなんて、ミレイユは優しいな…!
「嫌ではないわ…」
「本当に?」
「ええ…」
「良かった!」
これで学園までの馬車の中、ミレイユと2人だけの時間ができる! なぜ、今までやらなかったのだろう?!
思わずクレマンはニヤニヤと笑った。
基本的な教養を学園で学んだ後は、現当主から後継者として領地の運営法を学び、少しでも早く立派な領主へと、成長することを求められる。
だが…
「クレマン、領地の運営も大切だが… お前はその前に、もう少し人を見る目と、付き合う方法を、学ばなければならない」
ファーロウ家との話し合いを終え、オルドリッジ子爵邸に帰宅し、夕食をすませた後で… お茶を飲みながら父と息子は、今後の話しあいをした。
「はい、父上… 今回のことで僕も目がさめました! 2度とこんな失敗は、繰り返しません!」
子供の頃から仲が良かったという理由で、パトリシアを信頼していた自分が、情けない! 今回のことで僕は、ミレイユの信頼だけではなく… 僕自身の自信までうしなってしまった! 他人とかかわることが、すごく怖いよ……
「今のような経験不足のまま、領地の運営にかかわっても… 結局は領地民たちとうまく付き合えず、最後には信頼をうしない、そのうち大きな失敗を犯すだろう」
「はい…」
「今回のファーロウ家とミレイユ嬢との約束を、けして違えることなく、必ず下級文官の試験に受かり、最後まで成し遂げなさい!」
ミレイユの父と兄に挑発され、下級文官になると決意した息子の意志を… クレマンの父オルドリッジ子爵は、大いに歓迎した。
未熟な息子が、自分の知らない人たちと、積極的にかかわることで… クレマンが大きく成長することを、オルドリッジ子爵は期待しているのだ。
「はい、父上!」
「そこでクレマン、私からもいくつか助言がある」
今までは、よほどのことが無いかぎり、父親はクレマンの行動に口を出す人ではなかったが… どうやら、これからは口を出すつもりらしい。
「何でしょうか?」
「お前は毎日、学園までパトリシアの送りむかえをしていたのに… 婚約者のミレイユ嬢に何もしないのは、あまりにも不公平ではないか?!」
「あっ?!!」
父親に言われて、初めて気がついたクレマン。
翌朝。
ファーロウ邸の前にとめた、オルドリッジ子爵家の馬車にミレイユが乗りこむのを… クレマンはミレイユの小さな手を取り手伝った。
「それで、クレマンは… お父さまに言われて、私をむかえに来たの?」
「いきなり来て、ごめんよミレイユ… やっぱり迷惑だったかい?」
でも、こういうことは少しでも早く、始めたほうが良いかと思って… 早くミレイユと以前のように、仲良くなりたかったし… やっぱり自分勝手だったかなぁ?
クレマンは父に夕食の後で助言されたため… ミレイユをむかえに来ることを、今朝になってから手紙で知らせた。
クレマンは顔を赤くする。
「いいえ… 突然だったから驚いただけ」
「本当に?!」
「ねぇ、クレマン… 本気で毎朝、私をむかえに来るの?」
「もちろんだよ! 帰りもファーロウ邸まで送るよ?」
「帰りも? でもあなた… 勉強をしなければ、いけないでしょう?」
ミレイユは心配そうにクレマンにたずねる。
「僕はミレイユの送りむかえをしたいから! 君は嫌かなぁ?!」
わぁ… 僕の心配をしてくれるなんて、ミレイユは優しいな…!
「嫌ではないわ…」
「本当に?」
「ええ…」
「良かった!」
これで学園までの馬車の中、ミレイユと2人だけの時間ができる! なぜ、今までやらなかったのだろう?!
思わずクレマンはニヤニヤと笑った。
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