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23話 兄ルドヴィクの提案
しおりを挟む迷いに迷い、答えを出せないミレイユのかわりに… 一番はしに座っていた、兄のルドヴィクが提案した。
「ルドヴィク…?」
「クレマンが変われば良い! ミレイユのために私がクレマンの性根をたたき直してやる!」
するどい視線を向ける父親に、兄ルドヴィクは瞳を不穏に光らせて、バシッ…! と音をたてて、自分の手のひらと拳を打ちつけて見せる。
「あっ…! もしかして、ルドヴィクお兄様… まさか…?!」
お兄様は先日の冗談を… 本気で実行すると言っているのかしら?!
『強制的に見習い騎士待遇で、騎士団の鍛錬に放り込んで、私が毎日、厳しくしごいて性根をたたき直してやろうか?!』
ミレイユは冗談だと受け取り、笑っていたが… ルドヴィク的にはかなり本気だった。
「学園を卒業したら、王立騎士団の入団試験を受けろ! 何年かかっても必ず合格しろ、クレマン!!」
王国でも選りすぐりのエリート騎士が、集まる王立騎士団の試験は、難関中の難関である。
子供の頃から、騎士になるための教育を受けているか… あるいは学園で騎士課を専攻した者でなければ、書類審査で確実に落とされる。
「そんな… お兄様! いくら何でも、無茶だわ?!」
普段は驚くほど聡明で賢いお兄様は… 時々、子供のような我がままを言うのよね…?
兄の乱暴な提案に… それまでの重々しい緊張感を忘れて、思わずミレイユは笑ってしまった。
「それは……」
ミレイユの決断をすべて、受け入れるつもりだったクレマンも、さすがに王立騎士団入りは、現実的ではないと言いたげに、口を開くが… そこで反論すれば、妹を溺愛する兄ルドヴィクが、烈火のごとく怒り狂うと予想でき、クレマンは複雑な表情を浮かべて言いよどむ。
「お兄様、さすがにそれは無理でしょう? それに何年も待たされたら、私… 嫁ぎおくれてしまうわ?」
ミレイユは自分のために、腹を立てている兄をなだめていると…
次は父が提案した。
「それなら… 下級文官の試験を受けてはどうだろう?」
これには、顔に?マークを浮かべたオルドリッジ子爵が聞き返す。
「下級… 文官…? ですか??!」
ミレイユの父親以外、その場にいた全員の顔にも、?が浮かんでいる。
「お父様…? それはどういったお考えで、おっしゃられているのですか?」
首を傾げてミレイユがたずねると… 隣に座る父はミレイユの手をトンッ… トンッ… とたたき、するどい視線を和ませる。
「ふふふっ… それはだね、ミレイユ…」
ミレイユの父は名案を思いついたらしく、ニコニコッ… と笑った。
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