上 下
23 / 59

22話 両家の話し合い3

しおりを挟む
 ファーロウ家とオルドリッジ子爵家の面々に見守られながら…
 父親にクレマンとの婚約をどうしたいかを問われ、『私は… 今までのように… クレマンを信じる自信がありません…』とミレイユは今の正直な気持ちを伝えた。


「……っ」
 私自身も、何の疑いもなくクレマンを純粋に信じていた、以前の自分に戻りたいわ…? だって、クレマンはパトリシアと浮気はしていなくて… クレマンが私を裏切ってはいなかったとわかったから。
 でも…?!

 それ以上の言葉を、ミレイユは上手く伝えることが出来なくて、黙りこんでしまう。
 そんなミレイユに、父親はおだやかな笑みを浮かべて、もう一度たずねた。

「ミレイユ… それはクレマン君と婚約解消を、したいという意味かな?」

「いえ、それは… お父さま… あの…っ?!」
 浮気していないのは理解したわ! でも、また何かあれば私よりも、他人を優先するのではないかと…? あんな風にされるのは、もう2度と嫌だわ!

「クレマン君を信じられないなら、婚約は解消した方が良い… さいわいにも、この婚約は政略的なものではないし、お前たちの気持ち次第しだいで、決めても良いんだよ?」
 おだやかに笑っていても、父も兄も母も… 今回のクレマンの行動にがっかりしていて、かなり怒っている。
 本心ではミレイユの婚約を止めさせたいが… ミレイユの気持ちを尊重そんちょうしてくれた。

「婚約解消したら、後悔しそうで… お父様… 私、怖くて簡単には決められないの……?」
 結婚したいと思うほど好きになったクレマンを、こんなに簡単にあきらめても良いのか? そんな疑問が、心の底からきあがってきて… 本当にどうすれば良いのか、わからないの?!

「ミレイユ…」

「クレマンを嫌いになったわけではないから… 迷ってしまうの…!」
 ここで別れてしまったら、すぐに後悔して… さびしくて苦しい思いをするのではないかと… とても怖いわ?!

 クレマンの行動で、また傷つけられるのではないかという不安。
 クレマンを失うのが怖いと思う、恋愛感情を多くふくんだ執着心しゅうちゃくしん
 2つの思いが、グルグルとミレイユの中で回って、心が迷っているのだ。

 当のクレマンは下を向き、ギュッ… と瞳を閉じて… どんな内容でも、ミレイユの決断をすべて受け入れようとひたすら待っている。
 オルドリッジ子爵夫妻も、静かにミレイユの決断を待っている。


 ファーロウ家の応接間にシーン… と沈黙ちんもくが広がった。


「ミレイユが決められないのなら… ミレイユが決められるように、クレマン自身が変われば良い!」

 迷いに迷い、かわいそうなほど、追いつめられてしまったミレイユを見て… 
 それまで黙って事のきを傍観ぼうかんしていた、兄のルドヴィクが口を開いた。





しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

【完結】名ばかり婚約者だった王子様、実は私の事を愛していたらしい ~全て奪われ何もかも失って死に戻ってみたら~

Rohdea
恋愛
───私は名前も居場所も全てを奪われ失い、そして、死んだはず……なのに!? 公爵令嬢のドロレスは、両親から愛され幸せな生活を送っていた。 そんなドロレスのたった一つの不満は婚約者の王子様。 王家と家の約束で生まれた時から婚約が決定していたその王子、アレクサンドルは、 人前にも現れない、ドロレスと会わない、何もしてくれない名ばかり婚約者となっていた。 そんなある日、両親が事故で帰らぬ人となり、 父の弟、叔父一家が公爵家にやって来た事でドロレスの生活は一変し、最期は殺されてしまう。 ───しかし、死んだはずのドロレスが目を覚ますと、何故か殺される前の過去に戻っていた。 (残された時間は少ないけれど、今度は殺されたりなんかしない!) 過去に戻ったドロレスは、 両親が親しみを込めて呼んでくれていた愛称“ローラ”を名乗り、 未来を変えて今度は殺されたりしないよう生きていく事を決意する。 そして、そんなドロレス改め“ローラ”を助けてくれたのは、名ばかり婚約者だった王子アレクサンドル……!?

(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?

青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。 エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・ エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・ ※異世界、ゆるふわ設定。

本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。

待鳥園子
恋愛
とある誤解から、白い結婚を二年続け別れてしまうはずだった夫婦。 しかし、別れる直前だったある日、夫の態度が豹変してしまう出来事が起こった。 ※両片思い夫婦の誤解が解けるさまを、にやにやしながら読むだけの短編です。

あなたの婚約者は、わたしではなかったのですか?

りこりー
恋愛
公爵令嬢であるオリヴィア・ブリ―ゲルには幼い頃からずっと慕っていた婚約者がいた。 彼の名はジークヴァルト・ハイノ・ヴィルフェルト。 この国の第一王子であり、王太子。 二人は幼い頃から仲が良かった。 しかしオリヴィアは体調を崩してしまう。 過保護な両親に説得され、オリヴィアは暫くの間領地で休養を取ることになった。 ジークと会えなくなり寂しい思いをしてしまうが我慢した。 二か月後、オリヴィアは王都にあるタウンハウスに戻って来る。 学園に復帰すると、大好きだったジークの傍には男爵令嬢の姿があって……。 ***** ***** 短編の練習作品です。 上手く纏められるか不安ですが、読んで下さりありがとうございます! エールありがとうございます。励みになります! hot入り、ありがとうございます! ***** *****

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。 傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。 そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。 自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。 絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。 次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

処理中です...