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21話 両家の話し合い2 クレマンside

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 もっとミレイユと話し合おうと、学園の食堂で待ち合わせをしたら、パトリシアが乱入し、大騒ぎとなった。
 いくつもうそを重ね、パトリシアはミレイユを傷つけ… そしてクレマン自身をミレイユを傷つける道具のように、利用しようとしたパトリシアの本性を知り、クレマンはさとった。

「……っ」
 最初から僕は… パトリシアの問題に首を突っこむべきでは無かった!! パトリシアの両親に頼まれて、僕にはパトリシアを助ける責任があると、思い込んでいた。
 でも… 僕が中途半端ちゅうとはんぱに手を出したために、より複雑な問題になってしまった。

 ぼうぜんとするパトリシアの両親に、妊娠のことを報告した後、クレマンは早々に、オルドリッジ子爵家へ帰った。



 クレマンはちょうど執務室で仕事をしていた父親にも、パトリシアの妊娠と、学園でおきた騒ぎについての報告をする。

「このバカ者が―――っ!!」
「グッ…!!」
 報告を聞き終えた父親は、問答無用もんどうむようでクレマンの顔をこぶしなぐり、怒鳴りつけた。

「あれほど… 我がままな従妹のパトリシアには、注意しろと言ったのに… お前はどこまで、おろかなんだ?!」

「申… 申し訳ありません! 父上!」
 顔をなぐられ身体がふらつき、鼻血がでたが… クレマンは血をぬぐわず真っすぐ父親を見つめた。

「いくら幼馴染おさななじみで、仲が良い従妹でも… パトリシアが犯した、ふしだらなお遊びの後始末あとしまつにまで… お前は付き合うべきではなかったのだ!!」

「僕も… 後悔しています…! パトリシアの秘密を聞き… パトリシアを説得しようと夢中になっていたけれど… 結局、お腹が大きくなり目立ち始めれば、誰でも彼女の妊娠に気づくはずでした…」
 僕がしたことは… 全部、無駄むだなことだったんだ! あんなにミレイユを傷つけてまで… する必要なんてなかったのに、本当に僕はバカだった!!

「その通りだ、クレマン! ミレイユ嬢という婚約者がいるお前は、黙ってパトリシアを傍観ぼうかんし続けなければいけなかったのだ! そうしていれば、こんな大騒ぎにならなくて済んだかもしれない!」

「僕は本当におろかでした! 少しでも早く解決しないと… 大きな醜聞しゅうぶんでパトリシアが傷つくとそればかり考えて、あせって…」
 ずっと僕一人だけが、空回からまわりしていた…!
 パトリシアと約束をした時は、ミレイユを深く傷つけて、失うかもしれないなどと、少しも思いいたらなかった! ミレイユに愛されているから、大丈夫だと… 僕が傲慢ごうまんだったからだ!

「こんな… くだらないことに巻き込まれて…! お前はファーロウ家とミレイユ嬢に、一方的な婚約破棄をされても、文句は言えないと思え!」

「わかっています、父上…!」





 オルドリッジ子爵夫妻とクレマンは、ファーロウ家に訪問し謝罪すると… すぐにミレイユとの婚約を継続するか、解消するかの話し合いに入った。

「それで… このような問題を引き起こしたクレマンと、ミレイユ嬢の婚約について… 意見をお聞きしたいのです」

「ええ、まずはミレイユの気持ちを聞きましょうか…」
 ミレイユの父親は… 父オルドリッジ子爵から、息子のクレマンへと視線を移し、猛禽類もうきんるいたかを思わせるするどい目で、ジッ… 見つめる。 
 あからさまに、クレマンをにらんだりはしないが… 明らかにミレイユの父の瞳は、クレマンを非難する冷たさで光っていた。

「……」 
 クレマンは思わず、ミレイユの父親のするどい視線からのがれたくて、目をそらし… 人形のような無垢むくな美しさがある、ミレイユの顔を見る。

 ミレイユは華奢きゃしゃな身体を、密かに震わせながら… 口を開く。

「私は… 今までのように… クレマンを信じる自信がありません…!」

「……っ」
 ああ、本当にごめん… ミレイユ! こんなに君を傷つけてしまったんだね…?! ミレイユ、ごめん… ごめん……


 あまりにも自分がなさけなくて、クレマンは唇を噛んだ。





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