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17話 秘密の約束 クレマンside

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 ミレイユと婚約した時に、幼い頃から本当の兄妹のように、クレマンと仲が良かった、従妹のパトリシアに『愛している』…と告白された。
 クレマンもパトリシアを愛していたが、それは『家族をいつくしむ愛情』でしかない。
 ミレイユに感じている、『胸を熱くする恋愛感情』とはまったく別のモノだった。

 クレマンは『妹のようにしか思えない』と、パトリシアの愛情をはっきりとこばんだ

 その後すぐに、パトリシアの両親は裕福なコッドソール伯爵家のシャルルとの婚約を決めた。
 クレマンはそれ以来、パトリシアとはなるべく距離を置き、会わないようにして来た。


 ――― 1ヵ月ほど前。

 コッドソール伯爵家のシャルルに浮気をされ、婚約破棄をした従妹のパトリシアが、学園を休み自室で泣き暮らしていると…
 クレマンは母方の伯父(パトリシアの父)に聞いた。

「クレマン… パトリシアが会いたがっているんだ… あの子を少しだけ、はげましてやってはくれないか?」 
 パトリシアの両親は、自分たちの娘がずっとクレマンを好きだったことを知っていて… クレマンがミレイユと婚約した後、落ち込むパトリシアのために、急いでシャルルと婚約させたのだった。

「わかりました、伯父さん… 僕で良ければ、愚痴ぐちの聞き役にでもなりますよ」
 子供の頃から仲が良かったパトリシアの愛情を、こばんだという罪悪感が、重くのしかかっていたクレマンは… パトリシアの両親に頼まれ、訪問することにする。


 久しぶりにパトリシアの部屋をおとずれると… 伯父が言ったとおり、パトリシアは目を真っ赤にして泣いていた。

「ああ、クレマン! やっと会いに来てくれたのね?! あなたに会えなくて、ずっとさびしかったわ?!」

「パトリシア… 僕が愚痴ぐちでも、悩みでも、我がままでも… 何でも聞いてやるから、泣くのは止めるんだ… それでは目がとけて無くなってしまいそうだ」
 泣き続けるパトリシアの姿があまりにもあわれで… クレマンは何でも言うことを聞くと言った。

「今は、何も言いたくないわ!」
「パトリシア… そんなことを言わないで、ご両親も心配しているよ?!」 
「嫌よ…!」

「ならパトリシア… 僕が毎朝むかえに来るから、一緒に学園へゆこう?」
 クレマンは根気強こんきづよく、パトリシアを説得しはげました。

「どうせ… クレマンも私を置いて、他の人と仲良くするんでしょ?」

「……」
 困った…! これは… 僕の婚約者ミレイユのことを、言っているんだな?! これを言われると弱いんだ! 僕はパトリシアを、受け入れることは出来ないから…!

「でも… クレマンが誰にも言わないと、言うのなら… 私の悩みを話しても良いわ…?」
「ああ、もちろん!よ!」
「本当に?」

「本当だよ、パトリシア… 僕は君の元気を取り戻したいんだ!」
 クレマンは愛しあうことが出来ないかわりに、他のことならパトリシアのために、何でもする気でいた。


 この時かわわした、パトリシアとのが… クレマンをしばり、ミレイユを傷つけることになった。





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