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16話 話し合い3

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「……っ?!!」
 クレマンは信じられない言葉を聞いたと… 驚愕きょうがくの表情を浮かべ、パトリシアを支えるのを止めて離れた。


「あなたたちは…っ…?!」

「そうよ、ミレイユ! 私のお腹の子は… クレマンの子よ―――っ!」
 青ざめてひるむミレイユを、もっと傷つけようと… パトリシアはかん高い声で、大きなうそをき続けた。

「やっぱりクレマン…… 浮気をして…」
 ドクッ… ドクッ… ドクッ… と心臓があばらの内側で、激しくあばれ、ミレイユはナイフで胸を刺されたような、痛みを感じる。    

「ミレイユ、しっかりして…?!」 
 動揺しふらつくミレイユを、隣にいたネリーが、友人を支えようと声をかけ、肩を抱く。

「……っ」
 ネリーに支えられながら、ミレイユは自分の胸をおさえ… 大さわぎするパトリシアから、クレマンに視線を移す。

 クレマンはぼうぜんとパトリシアを見つめ、名前を呼んだ。
「パトリシア……」

「私とクレマンは、愛しあっているのよぉ?!!」
「パトリシア…」
「私たちは子供の頃から、ずっと愛しあって来たのぉ!!!」
「パトリシア…!」
「それなのに、あなたが私からクレマンを奪って…!!」

「パトリシア―――ッ!!!」
 強い怒りがこもった声で、クレマンが怒鳴った。

「あっ?!」
 ミレイユを傷つけることばかりに、気を取られていたパトリシアは… 怒鳴られて初めて、クレマンに呼ばれていたことに気づいた。

「止めるんだ、パトリシア…」

「ク… クレマン! 教えてあげて…?! あの人に、あなたは私を愛していると?!」
 パトリシアはミレイユを指さし、クレマンの顔を見あげて、切実せつじつうったえた。
 『子供の頃からずっと、兄妹のように仲が良かったクレマンなら、私を助けてくれるはず』 …とパトリシアはそう思っているのだ。

 ……だが、パトリシアの望みとは別の答えを、クレマンは出した。

「パトリシア、君は…… そんな卑劣ひれつなことができる人間になれと、本気で僕に、言っているのか?!」

「クレマン…?!」
 冷ややかなクレマンの声を聞き、ミレイユを攻撃することで、熱くなっていたパトリシアの頭が、いっきに冷める。

「僕には、婚約者のミレイユがいるのに… 君を妊娠させるような… 僕はそんな卑劣ひれつで、不誠実な人間だと… 君は僕にそんな屈辱的くつじょくてきなことを言えと…?! 君は僕を侮辱ぶじょくしているのか?!」
 クレマンの目に、パトリシアを軽蔑けいべつする暗い影が浮かんでいる。

「……クレマン… 私は…っ?!」
 パトリシアは、ミレイユに反撃しようとするあまり、判断をまちがえた。

 ミレイユを傷つけるのではなく、クレマンのほこりを傷つけてしまったのだ。




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