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11話 休養
しおりを挟むクレマンとの話し合いで衝撃を受けたミレイユは、その翌日… 学園を休んだ。
その次の日も… ミレイユは学園には行かなかった。
そんなミレイユに会いに、クレマンがたずねて来たが… 体調が悪いからと、ミレイユは会わずにクレマンを追い返す。
「ミレイユ、大丈夫? いつも元気なあなたが、学園を休むなんて珍しいわね?」
クレマンは会わずに追い返したが… 友人のネリーが会いに来ると、ミレイユは喜んでネリーを自分の部屋にむかえ入れた。
優しいネリーの顔を見たら、ミレイユは思わず泣きそうになる。
「ネリー… 私… どうしたら良いと思う?」
「まぁ、ミレイユ… どうしたの?!」
「それが……」
私はクレマンとは違い、パトリシアが婚約破棄されたことを、黙っている義理なんてないもの! 全部、ネリーに話してしまっても、少しも気にならないわ!
学園を休む原因となった、クレマンとパトリシアとのやり取りを、ミレイユはすべてネリーに話した。
「嫌だわ! そんなことが、あったの?!」
ネリーはミレイユの話を聞き、嫌悪感で顔をしかめる。
「ええ…」
「自分のことを好きだと言っている女の子と… 婚約者の前で、仲良くするなんて… 嫌な人ね? クレマン様がそんな人だとは、思わなかった?! 確かに彼はステキだけど… でも、嫌だわ?!」
「うん……」
「どうするの、ミレイユ? このままクレマン様と、婚約を続けるの? お父様には話したの?」
「まだ、お父さまには言ってないの… だって、こんな話をするのは、恥ずかしいから… 私も、本当に浮気をされたのなら… このままは嫌だわ…! でも、浮気をした証拠が、何も無いでしょう?」
クレマンはずっと… 『僕は、何も疚しいことはしていない』と言い続けていたし…?! まだ、そんなクレマンを信じたいという、気持ちもある。
パトリシアのことを思い出すと、怒りがこみ上げて来るけれど… でもやっぱり、クレマンのことは、もう少し考えたいわ!
「そうね… 確かに、ケンカをした時の言葉だけで、何かを決めるなんて… おたがいが怒って興奮している時の言葉だから、あまり信用しない方が、良いかもしれないわね?」
婚約解消となると… それなりにミレイユにも傷がつく。
たとえクレマンの浮気が真実で、それが婚約解消の原因だったとしても… ミレイユにもっと魅力があれば、浮気なんてされなかったと言う人たちが出てくるだろう。
社交界とは、そういう意地悪で冷たい人たちが、たくさんいる場所なのだと… ミレイユとネリーも、デビューした時に学んだ。
だからクレマンも、パトリシアが婚約破棄をしたことを、ギリギリまで黙っているのだ。
「ねぇ、ネリー…? 私が休んでいた2日間… 学園はどんな感じだった? やっぱり私とクレマンのうわさ話は、流れていた…?」
パトリシアの勝ち誇った顔が、目に浮かぶわ…?! きっと、私からクレマンを奪えたと、大喜びしているのでしょうね!!
学園を休んでいた2日間で、ミレイユは何度もパトリシアが、自分を嘲笑った顔を思い出して、悔しくて、腹がたって仕方がなかった。
「ああ… 実はね? 今日のお昼、食堂でクレマン様に会ったの… 彼がミレイユのことを、心配していたから… まさか、こんなことになっているなんて、思わなかった」
「少しはクレマンも、反省しているのかしら?」
「私には、そう見えたけれど…?」
「……」
休む前はパトリシアのために、クレマンは私に怒鳴ってきたから、少しも罪悪感を感じていないと、思っていたけれど?! でも、そうね…? これで私との婚約がダメになれば、クレマンも傷つくはずだから……
ハァ―――ッ… とミレイユは憂鬱なため息をついた。
「でも、クレマン様とミレイユのことを話していたら、パトリシアがやって来て、話を邪魔されてしまったから… 結局、あまり話せなかったの」
「……っ」
またパトリシア?! ああ、嫌な人!!
このままパトリシアにクレマンを奪われたら… 本当に私は魅力が無くて捨てられた、惨めな娘にされてしまうわ?! 何とかならないかしら?!
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