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4話 年上の幼馴染み2
しおりを挟むイザークお兄様のおだやかな声で、常識的な話を聞くうちに、動揺していた私は少しずつ、落ちつきを取りもどすことができた。
「私もエミール様が信頼できない人だとわかったから… 婚約を解消をできないか、お父様に話すつもり」
「それが良い。 彼は、その… 見かけは理性的に見えたけれど、中身はまるで我がままな子供だね。 結婚後も問題をおこしそうな感じがする」
「ええ、そうなの! いくら私が説明しても、エミール様は聞く耳をもたないから… 本当にイライラしたわ。 それで、つい… 『お兄様が婚約者だったら良かったのに!』 …と言ってしまったの」
エミール様はアップトン男爵家の後継者なのに… あの調子では、男爵家の将来が不安だわ。
その点、イザークお兄様は周囲の意見をじょうずに取り入れ、バラスター公爵家の後継者らしく、成果をあげて地道に実績をのばしている。
うちのお父様がイザークお兄様のことを、そう言ってほめていた。
「同じ後継者でも、爵位が違うとここまで違うのかしら?」
チラリとイザークお兄様に視線を向けると…
「いや、性格の問題だと思う。 自分が何を背負っているか、いまだに自覚が無いなんて… エミール卿の楽観的な考えかたが、うらやましいよ」
「本当に… もっと思慮深い人なら良かった」
「…かわいそうに。 アンリエッタがどれだけエミール卿を愛していたか… 私は子供のころから見てきたからね」
「お兄様のはんぶんで良いから… エミール様が誠実なら良かったのに……っ…」
目の奥が熱くなり… 話をしている間はおさまっていた涙が、またあふれ出した。
そんな私を、見かねたお兄様はそっと抱きしめ、背中をトンッ… トンッ… と大きな手でたたき、なぐさめてくれる。
「アンリエッタ… 私はまきこまれたとは思っていないから、気にしなくて良いよ。 うちの家族も… 君の家族も… 私たちが兄妹以上の関係ではないと知っているし」
「うん。 ありがとう、イザークお兄様…」
「うちの母上はずっと私に、君と結婚して欲しいと言っていたけどね」
「お兄様のお嫁さんなんて、嫌よ」
私はグスッ… と鼻をすすりながら答えた。
「おいおい、アンリエッタ! それはさすがに傷つくよ?」
「だって、イザークお兄様。 私がバラスター公爵夫人なんて… 恐れ多くてなれないわ」
「はははっ… その気持ちはわかる。 私もバラスター公爵になんて、なりたくないよ」
「ふふふっ…」
ほらね! こんな冗談が言い合えるぐらい… 私たちは兄妹の関係以上にはなれないわ。
エミール様は間違っている。
イザークお兄様にさんざん愚痴を聞いてもらい、少しだけ気分が晴れた私は帰宅した。
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