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15話 苦い薬湯茶3

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 夫のマクシミリアンはベアトリスの前で… まるで子供が悪戯いたずらをするように、部下のファゼリー伯爵に苦い薬湯茶やくとうちゃを飲ませた。
 このようなお遊びが出来るのも、2人の間にしっかりと信頼関係が築かれている証拠である。


「……」
 やれやれ… 時々、マクシミリアン様は側近たちに意地悪をして揶揄からかうのよね… 今日のファゼリー伯爵は、運が悪かったわ。ちょうどマクシミリアン様が、薬湯茶やくとうちゃを飲んだ後にあらわれたから。

 ベアトリスが苦笑を浮かべていると… 薬湯茶を一口飲んだファゼリー伯爵が何やら考え込みながら、ジッ… と薬湯茶を見つめている。

「エドガー、遠慮するな! 全部飲みせ! このお茶はくのだそうだ」
 追い打ちをかけるように、マクシミリアンが苦い薬湯茶をもっと飲めと、ファゼリー伯爵にすすめた。

 ファゼリー伯爵はマクシミリアンの言葉を軽く聞き流して……
「殿下… 実は緊急の案件がもう一つありまして、人払ひとばらいをしていただけますか?」

「んん?」
「お願いします、殿下!」 

「皆、下がって良い!」
 マクシミリアンは伯爵に深く理由は聞かず、使用人たちを退出させる。

 使用人たちを下がらせてまでする話なら、きっと深刻しんこくな話し合いになるだろうと… ベアトリスは気をきかせて、自分も使用人たちと一緒に退出しようと席を立った。

「では殿下、私も失礼します…」
 私がそばにいると、2人の邪魔になりそうだから… 

「出来れば妃殿下にも、ご相談したいのですが…?」
 退出しようとしたベアトリスは、意外にもファゼリー伯爵に引き止められる。

「私もですか…?」
「はい、妃殿下」

「わかりました」
 何かしら…? ファゼリー伯爵とは、普段から親しくお話ししたことが無いから、どんなお話を聞かされるのか… まったくわからないわ。

 ファゼリー伯爵はまじめで冷静沈着れいせいちんちゃく無駄口むだぐちも少なく、マクシミリアンへの忠誠心も厚い。
 だが、伯爵に鋭い視線を向けられると、心の内側まで見透みすかされてしまいそうな、居心地いごこちの悪さを感じさせられる人物である。
 そんな印象を持っているため… ベアトリスはファゼリー伯爵のことが少し苦手なのだ。

 伯爵の要望にこたえるため、ベアトリスは黙って腰を下ろす。



 朝食室から使用人たちが退出し、3人だけになると… ファゼリー伯爵が口を開いた。


「殿下、妃殿下… 恐れながらこのお茶は、私の記憶が正しければ避妊ひにん用の薬湯茶です」

「……っ?!」
 薬湯茶が避妊ひにん用ですって…? 今のは聞き間違いかしら?!



 に効くお茶のはずが、に効くお茶だと聞かされ… ベアトリスは自分の耳を疑った。





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