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第三十七話 かわりのかわり 2

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きぬが殺され数日後。

 管理所の所長室にて、アサキシと葉月が居た。アサキシが葉月を呼んだのだ。アサキシは険しい顔で話す。
「今、起こっている殺傷事件は知っているな」

「ああ、いつの間にか誰かがやってきて、人間妖怪問わず殺すといものだろ」

「そうだ」

 アサキシは深いため息をついた。現在この世界で連続殺傷事件が起きていた。殺害された者は人間魔物問わずで、被害者はつながりもなく、なんらかの怨恨も罪もなかった。
 そのため無差別と思われている。 被害者の中には力をもった者がいたが、無惨にも殺されていた。多くの者たちは訳のわからない殺傷事件に怯えていた。

「葉月にそれを防いでほしい」

「かまわない。だがこの事件に関して私は詳しく知らない。情報をくれ」

「管理所の調査でわかったことは犯人は銀髪で褐色の肌をした女で、犯行時刻は夕暮れ時限定だ。恐らく女は特別な力を持っている」

「そうか、犯行時刻を教えて住民に家にこもる様、伝えたか?」

「これから伝えるつもりだ。葉月お前は人里の警護を頼みたい」

「……菫の奴は」

「奴は妖怪の里の警護だ。了の奴も自主的に今回の事件を解決しようと奔走しているらしい」

「了が? なぜ」

「知り合いの子供が殺されたんだと。そんなことはさておいて、お前は人里の警護だ。いいな」

「ああそれは良いが、人里を警護するのは私だけか?」

「お前だけ使って多くの情報を得たいんだ。下手に数を増やすと被害が出たとき面倒なことになる」

「私は情報への生き贄みたいなものか」

「そうさ。だがお前なら平気だろう。力があるのだから。菫の奴もお前と同じ条件だ。受けるよな?」

「……情報への犠牲者が私だけならいいか」

「正確にはお前と菫だな」

「そうか……」

 葉月は自嘲ぎみにつぶやきアサキシの頼みを受けた。

 管理所は犯行時刻を発表。すると夕暮れ時になると二つの里から誰もいなくなった。皆自宅に引きこもったのだ。


 そのころ了は事件の被害者たち、死体が安置されている寺に来ていた。死体は寺の境内の茣蓙の上に老若男女の死体がずらっと並んで火葬を待っていた。死体は犯人の手がかりを探るために火葬を待たされているのだ。

「きぬ……」

 その中から了は小柄なきぬを見つけた。きぬの遺体は首を折られていて、頭はあらぬ方向を向いていた。そんなきぬの遺体を抱え頭を正しい位置に戻し顔を見た。
 きぬの死に顔は茫然とした顔で自身の死を受け入れていない顔だった。だが彼女は死んでいる。了が首を支えなければ首は垂れ下がるのだ。
 了に希望を持てと言ったきぬ。そんなきぬはもう希望を持つことは出来ない、もう死んでるのだから。彼女から目をそらすかのように他の死体に目をやる。

 他の死体もきぬ同様の顔した者や苦痛、苦悶に歪んだ顔、恐怖で絶望した顔様々であった。了はきぬを元の位置に優しく戻し、死体たちに誓った。

「かならず、仇は討ってやる」

 犯行を止めるため了と葉月に菫の3人は里を駆け回った。しかし犯行を止めることが出来ず犠牲者を増やしていった。
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