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第三十二話 知らなくていい真実 2

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「侵入者がいるな」
 アサキシは管理所から帰り、屋敷の玄関に着いたと同時に使用人以外の者が屋敷内に紛れ込んでるのを悟った。アサキシが侵入者に気付いたのは、普段から身を守るため自身の肉体を強化しており嗅覚は犬に劣らぬものにしているからだ。そして屋敷に招いておらぬ者の匂いがした。

「侵入者は了に、葉月にブルーと誰だ。……アトジの五人か」

 侵入者に動揺せず庭から自分の部屋に思案しながら向かう。

 (ブルーがここに来たのわかる。人里でメイドに大災害やアカネについて何か調べさせてた、それが理由だろうな。大方手詰まりで私の屋敷に直接きたのだろう。了や葉月に誰かはそれについてきたのだろう。アトジは匂いがするがどこに居るかわからん。呼べば来るかな?)

 アサキシはスカートのポケットから黒いブレスレットを取り出して、腕にはめた。

―――

「そんなことが、こんなことが……」

 アサキシの部屋にいる四人は日記を読み、驚愕と混乱していた。

「そんな…… そんな」

「葉月しっかりしろ」

 了は葉月を心配する。葉月は日記を読み茫然自失で狂乱を起こしかねないと三人から危険視した。それほどまでに彼女にとって日記の内容は残酷なものであった。そんな中ブルーはいち早く落ち着きを取り戻し、了にどうするか話し合う。

「日記はどうする。持って帰るか」

「それは、流石に」

「そうだ、私の日記を持っていくのはやめてもらおう」

 四人は驚いた。障子は開けられ庭からアサキシが現れたからだ。

「そこの君日記を置いてくれないか」

「あ…… あ…… あ」

 アサキシは恵みに向かって殺気を放った。恵みはこれまでの人生殺意といったものを受けたこともなく、腰が抜け座り込んでしまう。アサキシは恵みを見て鼻で笑う。

「ビビッて腰がぬけたか。まぬけが」

「アサキシ、この日記に書いてあることは本当か」

 了はアサキシを問い詰める。了にとって彼女は冷たい人間だと思っていたが、善人であると信じてたからだ。だがアサキシは了を無視し、恵みに近づき日記を拾う。

 他の者は突如の事に固まっている。しかし了は叫ぶ。

「アサキシ!」

「うるさいな。本当のことだ」

「! ……なぜやったかは聞かない。罪悪感はないのか!? 多くの者が苦しんだんだぞ!」

 アサキシは日記を拾い、庭の桜の木の下に歩く。そして了達を見つめ、さも当然に答える。

「だからなんだ。私は私が望むことをしただけのこと」

「おまえにだって良心ぐらいあるだろう!? そうだ! 日記にこれまでの事をわざわざ書くくらいだ。本当なら隠すはずなのに!」

「何がいいたいんだ。了?」

「アサキシ、お前は心の底で今回の事はやってはいけないことだって、わかっていたはずだ。だから日記にかいたんだ。誰かに見られるように! 懺悔するかのように」

 アサキシに良心があるという可能性にすがりつくかのように、了はまくしたてた。彼女はアサキシが善人だと信じたかったのだ。
 アサキシは了にとって人間性と人間の心を得る機会をくれた恩人で、今日のまで面倒を見てくれた人だからだ。 
 日記のことでアサキシのすべてを判断したくなかったのだ。

 了の言葉にアサキシは、
「なるほど…… 人間、無意識に罪を自覚して何かに書くということもあるかも」 

 そう語って日記を一瞥し、躊躇なく破り捨てた。

 何度も何度も破く。日記は細切れになって地面にハラハラと落ちる。

「何を!?」

 その行動に動揺する了に対してアサキシは冷静に伝える。

「私が日記を書いたのは親のためだ、良心うんぬんではない。それに大災害を起こしたのは、親を思う正しい気持ちだ。だから罪悪感何てこれっぽちも無い」

「そんな……」

 アサキシの否定の言葉に了は泣き出しそうな顔になるほどショックを受け、葉月は激怒した。

「貴様ァ!」

「葉月!?」

 刀を抜き、アサキシを殺そうと突撃しようとするが、了とブルーに止められる。葉月は泣き叫ぶ。

「離せっ! こいつのせいで…… こいつのせいでな!」

「落ち着け、ここで今ことを荒立てても意味が無い」

「そうだ、今の私たちは不法侵入者だ」

 了とブルーは葉月に対し説得の言葉を投げかける。しかし葉月の耳には届かない。

「くそがああああ」

 葉月は何とか振り放そうと暴れる。その動きを見てアサキシは侮蔑するかのように笑う。

「そうだ。落ち着けよ葉月、私を殺しても意味はないぞ。まあ戦っても負ける気はないがね」

「……アサキシさん私は記者です、日記に書いてあったことを世間にばらしますよ」

 恵みは何とか立ち上がりアサキシに対して脅しをかける。しかし、アサキシは動揺しない。

「ばらしてみろよ。この夢幻界が混乱に陥るぞ」

「強がりを……」

「強がり? これは事実だ。人間の手によって先導師は生み出され、大災害を起こし人間と妖怪は和解し今の平和な世の中になった」

 アサキシの口から事実が語られてゆく。

「しかしバラしてみろ。葉月の様な人間や人間に不満を持つ妖怪は確実に争いを起こす。そして今の平和な世が乱れる。仮に起きなくても妖怪と人間の間に深い溝ができるだろう」

「うう…… それは」

 アサキシの言葉に恵みは動揺する。そんな恵みに対してここぞとばかりにアサキシは疑問を投げかける。

「今君は幸せか、大災害で何か失ったか」

「私は何も失ってませんし、今この状況を除けば幸せです……」

「ならばらすのはやめた方が良いな。今の幸せな生活は崩れ、大切なものを失ってしまうかもな」

「…………」

 恵みは脅しをかけられて口を閉ざしてしまう。そして生活の事を考えた。

(アサキシさんの言う通りだ。もし世間にばらしたら私にとって良いことより、悪いことが多く降り注ぐだろう……)

 妖怪と共に仕事をしている彼女は真実を背負いきれなかった。アサキシは二回手を叩き、周りに伝える。
 
「今日のところは見逃してやる。さっさと帰れ」

「アサキシ! お前に言いたいことがある!」

 了は叫びアサキシに問いかける。その声はアサキシに対しての深い悲しみで震えていた。それに対するアサキしは何も思わず、淡々と言葉を返す。

「何だ了」

「お前は本当に何も感じてないのか。傷ついた人を 見ても……」

 了の脳裏には葉月や菫といった傷つき失った者の事がよぎる。アサキシは心底めんどくさそうに答える。

「くどいな。何も感じてないよ」

「そうか、なら私はあんたを許さない……」

「許さないだと? 何も失っていない了が?」

 了の言葉にアサキシは失笑した。

「だけどもだ。私は多くの悲しみがあることを知ったからだ」

「じゃあ何か<エンド>のエルカードを使い私を消すか? お前を保護し人間性を与えてやった私を」

「それをどうしてお前が!?」

「どうして? 間抜けなことを言う。菫の報告書にかいてあったのさ。薄々かんずいていたがね、了が終わらせる者だということには」

「クッ」

「それにお前は何も失っていない部外者だ、いくら何を言おうがな。ブルーに記者を含めて、葉月意外な」

 アサキシは恵みを見据え敵意をぶつける。ぶつけられた恵みは恐怖で、アサキシの顔を直視できない。

「もしここで争えばその記者は確実に死ぬだろう。それでも戦うか、もちろん私は大いに抵抗するし貴様らを犯罪者として扱う。人里及び夢幻界での生活が苦しくなるなあ」

 彼女の言葉に四人は沈黙し、恵みは死の恐怖で顔から冷や汗を流し、即刻この場から去りたい衝動にかられた。アサキシは四人に問いかける。

「さあどうする?」

「……おいお前たちここは退くぞあまりにもこちら側に分が悪い」

 ブルーは三人を見渡し、退くことを唱える。了と恵は頷く。葉月は黙ったままだ。

「ふむ賢明な判断だ。蝙蝠もどきのくせに」

「ありがとうよ。クソ人間」

 ブルーは悪態をつき、その様子にアサキシは笑みをこぼした。了は<グリフォン>のカードを使い翼を生やして恵みを背負い、ブルーは何も言わない葉月を背負いこの場を後にしようとする。了は飛び立つ前にアサキシに声をかけた。

「アサキシ貴様に言いたいことがある」

「何だ、了」

「私は管理所を抜ける、あんたの下につかない」

「そうか、残念だ。気が変わったら戻ってこいよ」

 その言葉に了は何も言わず、空に飛び出してブルーの館に向かった。ブルーも後に続き飛ぼうとするが葉月が暴れ、離れる。葉月の行動にブルーは声を荒げる。

「葉月お前!?」

「私に構うな吸血鬼!! 私一人でやる」

「そうかい!」

 ブルーは、葉月の行動に顔をしかめながら、空へ舞い上がりこの場から離れた。場にはアサキシと葉月だけになった。葉月はエルカードを取り出し発動する

<アサルト>

 葉月の周りに雷が発生し、鎧へと変化し、刀は青く染まる。その様子を見てアサキシは少し驚いた。

「エルカード持っていたのか」

「ああもらった。見知らぬ奴からな」

「……おそらくアトジだな。何でこいつに渡したんだか」

 アサキシは深いため息を吐いた。 そんな彼女に対して葉月は刀を向けて殺意をぶつける。

「さあアサキシ! 死の覚悟はできてるよなッ!」

「ふん、しかたないな、少しだけ戦ってやる」

 アサキシは腕に身に着けた黒いブレスレットに向かて、ドスが効いた声でつぶやく。

「装着……」

 ブレスレットは光を発しアサキシを覆う。そして光が止み現れたのは、赤いドクロが描かれた黒のパワード―ツを身にまとったアサキシであった。

「死に装束をまとったようだな!!」

 葉月は叫び斬りかかる。刀は相手頭部を目掛け振り下ろされる。殺意のこもった一撃は葉月が繰り出した中で、一番の速さだ。刃が頭部を切断寸前に、アサキシのスーツから機械とエルカードの音声が響く。

〔エルカード発動<アクセル>〕


 その瞬間、アサキシは刀の速さをこえる動きで、紙一重で回避。そのまま葉月の腹部に目掛け拳を放つ。<アクセル>は使えば高速移動が可能になるカードだ。葉月は腹部に拳をもろに喰らった。その時、再びスーツから音声が鳴り響く。

〔エルカード発動エコー〕

 響かせる力を与える<エコー>の力で拳の衝撃が腹部だけでなく、体全身に伝わり葉月は思わず膝から崩れた。それをアサキシは見逃さない。

「フンッ!!」

 アサキシは葉月の首を掴み、<アクセル>の力で高速で塀の方へ投げ飛ばす。余りの速さに葉月は対処できない。葉月は塀に勢いよく叩き付けられて、葉月の手から刀が落ちる。

「グフッ」

 葉月は口から血を吐き出す。血は庭に飛び散る。それを見たアサキシは葉月に近づいて髪を掴んで持ち上げる。
「なに汚してるのかなぁ」

 その苛立ちを孕んだ言葉とともに葉月の頭を塀に何度も何度も叩き付ける。
「ギャアアア」

 葉月は叩き付けられるたびに頭から血を流し、痛みで悲鳴をあげる。こんな目に合う葉月だがまだ闘志を失っていなかった。叩き付けられる瞬間。

「死にやがれ!!」

 服に隠してある短刀を繰り出してアサキシの首を狙う。

〔エルカード発動<アクセル>〕

 しかし、三度スーツから音声が流れアサキシに高速移動の力を与えた。
 アサキシは短刀をもつ葉月の腕をつかんでへし折った。へし折られた腕から白い骨が飛び出す。その片腕を持ちながら葉月を再び放り投げる。葉月は空高くあがり、顔から地面に衝突。
 そんな葉月を見てアサキシはつぶやく。

「おいおい、死んでしまったか?」

「……まだだぁ」

「おっと生きていたか。さすが封魔に居ただけにある」

 葉月はアサキシの言葉に何とか立ち上がって睨み、闘志を表す。闘志を燃やす彼女にアサキシはため息をついた。

「葉月ィお前に話したいことがある。戦いよりもな」

「貴様とは話したくない!」

 アサキシの言葉に激高し声を荒げて否定する。そんな彼女を諭すかのようにアサキシは話す。

「死んだ家族を蘇らせる事が出来るといってもか?」

「なにを言って!?」

 葉月の戸惑いにアサキシは笑みを浮かべ、「おい! アトジ居るんだろ隠れてないで出てこい!」とあたりに向かって叫ぶ。すると空間が裂け、二人の目の前に女が現れる。女の姿は白い髪黒いジャケットにスカートをはいた怪しい笑みを浮かべた美しい女だった。
 葉月はこの女に見覚えがあった。

「こいつは夢の中で私にエルカードを渡した!?」

 動揺する葉月に女は悠々と会釈する。

「おやおや葉月さんにアサキシさんこんばんわあ」

「久しぶりだなアトジ」

 そう言いながらアサキシはスーツを解除して、生身を露わにする。

「こいつがアトジ!? エルカードを作り騒ぎを起こしてる者!?」

 葉月は突如現れた女の正体に驚くも、アトジも敵と認識し刀を向ける。アトジは刀を向けられても平然としていた。

「あらやだあ怖い。ところでなんですか私を呼んで」

 言葉で怖る素振りを診せるが、葉月を見て笑っている。余裕を持つ者の笑みだ。あとじの問いにアサキシはぶっきらぼうに答える。

「お前が勝手に居たのだろう。葉月、こいつがアトジだ」

「だから何だ!?」

「こいつはエルカードを作りばらまいている。そして私は回収しているこの意味はわかるか」

「何が言いたい」

「私がエルカードを集めているのは単に危険だからというだけでは無い。死者を蘇らせる力を持つカードを探すためだ」

 アサキシの言葉に即座に反論する。

「そんな死んだ者を蘇らせる事はできない! お前の妄想だ!!」

 蘇生、人間を生き返らせる事。不思議な力が存在する夢幻界においても、人間が生き返ったなどと話は無く。力を持つ人間や、妖怪たちからも不可能だと思われている。故に葉月も不可能だと断じた。しかしアサキシは葉月の言葉を否定する。

「私の日記を読んで、なぜそう断言できる。この世界にはアトジや了の様な力を持つ者や、不可思議な力で満ち溢れているのに」

「だからといって!!」

「……現に私は死者を蘇らせる可能性を持つカードを一枚所有している」

「なに……」

 そのアサキシの言葉に葉月の体は思わず硬直してしまう。

 (聞くな聞くな相手は私のすべての元凶だぞ)

 葉月は心の中で何度も自分に言い聞かせる。アサキシの言葉は続く。

「私の下に着けばお前の大切な人も蘇らせてやろう。今ここで戦いもし私を殺せば蘇らせる道はなくなる」

「世迷言をッ」

「本当ですよお。葉月さあん」

 ニタニタと笑いながらアトジが言葉を補足する。

「アサキシさんは持っていますよ、確かにね。作った私が言うのですから」

「なあ葉月、ここで血迷うなよ。今お前は全てを取り戻せるのだぞ」

「なぜおまえは、アトジから直接貰わない?」

「私なんども頼んだが駄目。エルカードの騒動を解決してカードを自分で手に入れろだとさ」

 アサキシはそう言ってアトジを睨む。しかしアトジは居に返さず、まるでピエロの様に身振り手振しながら、渡さないわけを話す。

「ただであげたらつまらないだもん。それにゲームみたいなものですよ、私がエルカードを使って騒動を楽しく起こしそれをアサキシさんたちが解決しようとする。事件を解決したアサキシさんはエルカードを手にする」

 楽しげに語るアトジの言葉に、アサキシはため息をつき、葉月に話しかける。

「この通りだ 事件が起きたのならエルカードを存在を疑い解決しなければならない。しかし力を持った了は私の下から離れた。それを埋めるために私の下に来い」

 アサキシは葉月を勧誘する。葉月は差し出された話に、言葉を詰まらせながら答える。

「お前は…… お前は私の全てを奪った」

「そうだ。だがお前の家族を殺したのは私じゃあ無い、妖怪だ。私が直接関係したわけでもない」

「うるさい……」

 葉月は絞り出したようなか細い声で否定する。そんな葉月とは違い、はっきりとした声でアサキシは話す。

「葉月、頭を使え。今私に従わなかったら何が残る。つまらん復讐心に、誰もいない家」

「もうやめろ……」

「だが私の下に着けばそれらの不安が全て無くなる。家族を蘇らせる道に行ける、それは復讐とは違い正しい道だ」

「…………」

「どうする? 葉月これが最後だ」

 アサキシの言葉に葉月の頭に死んだ者たちの影が浮かび上がる。

 (私の家族、友達 恩人死んでしまった者全てが、私は何も得ることができなかった。たとえ家に帰っても誰もいない。何もない……)

 アサキシは足踏みしながら葉月の返答を尋ねる。

「どうする?」

よみがえる道はあるだな……」

「あるとも」

 その言葉で刀を鞘にしまいエルカードの力も解除した。それを見てアサキシは笑みを浮かべる。

「従うってことでいいのかな」

「……ああ」

「そうか、良い判断だ。アトジ、葉月の傷を治を家まで送ってやれ」

「はーい」

 葉月はアトジを見てなぜ自分にエルカード渡したのかを尋ねる。アトジは葉月の言葉に笑みを浮かべ言い返す。

「それは戦い続けるあなたを見てて面白かったからです、滑稽で。恩人とまでねえ。いやはや実に愉快痛快楽しいなあ。おっと喋り過ぎましたねウフフ」

 (私の人生は…… 私は……)

 アトジの言葉に葉月は絶望に叩き落とされた。

「では葉月さんまた今度」

 アトジはエルカードを葉月に向け取り出し発動した。
 <ヒーリング> 傷を治す。
 <テレポート>瞬間移動

 すると葉月の体殻傷は消え、屋敷からも姿を消した。二人になりアサキシがアトジに話しかける。

「なあ、アトジなんで私の家に居たんだ」

「おいしそうなお菓子がありましてねえ。というのは嘘で、葉月さんを観察していたのです。彼女は滑稽で面白い」

「どこで葉月の事を知ったんだ?」

「私は封魔という貴方の被害者たちを、監視しているのですよ」

「なぜそんなことを、意味は無かろう?」

「いいえあります。封魔は妖怪に親しき者を殺された者の集まり。そんな者達に妖怪を殺せるほどの力を与えたら絶対騒ぎを起こします。そんな面白い人たちに力を与えるのが私の役目であります」

「そうかい、まあ、会えてよかったよ」

「私もです。アサキシさんが使ったスーツを見れましたから。スーツにエルカードを組み込んでカードの負荷を減らした上に、スーツの力で組み込んだカードを場に合ったものを自動的に選ぶ。大変便利です」

「戦いをみていたのか?」

「ええ、良かったですよ」

「見ただけでスーツの機能がわかったのか。さすがだな」

「ふふんさすがです。ではまた今度」

 アトジは褒められて嬉しくなり笑いながら後を去った。アサキシは了達に屋敷を簡単に入られたことにため息をついた。

―――

 人里 葉月の家
 葉月は気がつくと自宅にいた。そして今日知った事とアサキシやアトジに言われた事を思い返し、

「……私の人生は誰かの物なのか」

 と涙を流した。 

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