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第八話 吸血鬼の異世界探索

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  五年前、夢幻界に大きな爆発が起こり、キノコ雲を出現させた。多くの者が死に、天からは黒い雨が降り、大地を地獄に変えた。

現在の夢幻界
 吸血鬼の館のテラスで、パラソルをさしたブルーと了が話をしていた。設置されているテーブルにはケーキや紅茶が並び、了はそれを口にして満面の笑みを浮かべていた。そんな了に、腕を組みながらブルーは尋ねる。

「了、この世界はどんな世界だ?」

「いきなりなんだ」

 紅茶を飲みながら疑問に思う了にたいして、ブルーは前髪を指でいじくりながら話す。

「なに、この世界に住むにあたってどんな世界か知りたくてな」

「なら人の街にある管理所に行けばいい」

 了の口から出た管理所という聞きなれない言葉に、首を傾げるブルー。了はそんな彼女に説明する。

「治安を守ったりしている組織。私もそこに所属している。そこにいけば『アサキシ』という人間がこの世界について詳しく教えてくれるぞ」

「そうか、管理所とはどんな建物だ?」

「赤レンガでできた建物。人里の中では大きい建物だからすぐにわかるよ」

「私の様な吸血鬼が人が住む里に行って平気か?」

「数少ないが人の街にも妖怪は住んでいるし、平気さ。念のため私の紹介状を渡すよ」

「お気遣いありがとう。明日行ってくるよ ……質問したついでに何だが、了はなんで男の口調なんだ?」

 美少女の了が男の口調であるのは、ブルーの目から見てもおかしかった。

「ん、それは友人からこうした方が、戦う者として威圧感でるぞっていわれたから」

「確かに、男口調の方が威圧感は出るが、年頃の娘だろ? それに女なのに男らしい了って名前気にしてないのか?」

「私にとって男口調でも女口調でもどうでもいいのし、名は体を表しているのさ」

 そう言って、ケーキを食べ、紅茶を飲み干し、今日五回目の、おかわりをディナに申し出た。
―――

 翌日の昼
 日光除けのパラソルをかざし、赤いドレスを着たブルーが人里に居た。

「ほほう。これは」

 ブルーは人の街の昔のヨーロッパ風のレンガや石造りでできた街並みに感嘆のため息をもらした。

「夢幻界とはこの場所は西洋に存在する場所なのか? ……ん?」

 そう言いながら通りを歩いていると、ブルーにとって知らない東洋建築のパン屋をみつけた。
 窓ガラスから店内を見てみるとそこには、エプロンをつけた着物の男性が働いていた。西洋建築のなかに東洋の服があるその異質さに首を傾げる。またその近くには寺が建築されていた

「西洋なのか、東洋なのかはっきりしないな。どこなんだここは」

 そうつぶやきながら再び歩き出した。歩いているとブルーにとって異質な者を見た。

「なんだあいつ……」

 ブルーが見た者は、現代の服を着た若い女性の姿だった。女の姿は紫色のシャツを着ておりジーパンをはいていた。先ほど見た着物や自分が知る西洋のファッションとは違う物をみて、パラソルを思わず手から落としてしまいそうになるほど困惑した。
 これは彼女が現代の服装を知らないことを意味しており、古い時代出身であることの表れでもあった。

「本当なんなんだ?」

 困惑しながらも彼女は、人里を回った。
 歩いていると人里の中心ともいえる大きな広場にきていた。広場にはベンチが設置されていて人々が座り談笑していた。
 そんな広場の中心には、四角い石碑が立てられていた。人里を見て回って疲れたブルーは談笑する人々と同じようにベンチに座る。

「ふう疲れたわ…… あの石碑はなんだ」

 ベンチに座った彼女の視界に石碑がうつる。よく見てみると石碑には慰霊の文字と無病息災と書かれていた。
(何かあったのか?) と思いながらしばしの間休息して、再び里を見て回った。
 見て回ったことで、人の街は古風な洋風の建築や文化が基本で、東洋の建築物や現代の物は特殊だとわかった。
 ブルーはこの世界について歴史や文化をふくめて気になりだしていた。

 「さて、当初の目的の目的地、管理所とやらに向かうか」

―――


 赤いレンガでできた三階建ての管理所の所長室に、吸血鬼ブルーが椅子に座って居た。

 話を聞きに来たと伝えると、この部屋に通され、所長のアサキシはしばらくしたら来るので待っていていてほしいと言われて用意された椅子に座り待っていた。
 所長室の内装は様々な書物が壁の本棚に並べてあり、この部屋の主の知識量を物語っていた。部屋の窓の前に大きな机が備えられており、その上は古ぼけた地球儀が置かれていた。
 部屋にかけられた時計が鳴ると、ガチャリと扉が開く音が部屋に響く。
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