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② とんでもない真相
しおりを挟むじいちゃんが 死んだ。
N県に住んでた じいちゃんは、【自分は海の男だ】 が口ぐせだった。なんのことはない ただの漁師である。
なんの兆候も無い、突然死だったらしい。
薄情なようだが、実を言うと、あまり悲しくなかった。
確かに ボクの【おじいちゃん・おばぁちゃん】ではあるけれど、それぼど ひんぱんに交流してたわけじゃない。
良くて 年に一度、正月に言葉を交わす程度である。それも、受話器を通して。
とくべつ敬遠していた訳では無い。
だが、たた単に存在を知っている人物。ぶっちゃけていうと、血が濃いだけの よく知らない人という状態だからかも知れない。
一人、とり残されてしまった ばあちゃん。
かつては、じいちゃんと一緒に 船に乗りこむくらい活発な人だったらしいけど
一人では 何かと不自由だろうと、急いで N県に駆けつけている というところ。
++++++++++++++
高速を下りて しばらく走ると、じいちゃん家に着いた。車から降りて 玄関に足を踏み入れると、ばあちゃんと一緒に一匹のトラ猫が出迎えてくれた。
その後、バタバタと一連の行程(通夜や葬儀など)を 無事に終え、ようやく落ちついて話が出来るようになった頃。
なぜか ボクは、ばあちゃんの部屋に呼ばれた。
不思議に思いながらも 部屋を訪れると、そこには 何故か あのネコがいた。
しかも、部屋の中央に座っているばあちゃんの隣りを デンと陣取っている。
『ばあちゃん、ずいぶんと、あのネコ可愛がってるんだなー』なんて思いながら、話がしやすいように 近くに座った。その際」何故だか、ネコからの強い視線を感じ 仕方なく わずかに 距離をおく。
ところがネコは、それまで閉じていた目を 勢いよく開けて、ボクを凝視した。
『うわっ‼』
予想外な行動に、ボクは、のけぞる。
一連の行動に 若干の違和感を感じたものの、ばあちゃんと話しているうちに そのことを 忘れてしまっていた。
ばあちゃんは、2、3こと たわいのない話題で話した後、
ソレ(本題)を切り出した。
++++++++++++++
ことの始まりは、漁の最中。網にかかった魚を選別している時のことだった。
魚の口から、鎖が、飛び出していた。要するに 魚の歯に、チェーン部分が引っかかっていたのである。
ソレは、石(宝石)をつけたペンダントで。
その石は、光を受けてキラキラと綺麗だったが 見るからに華奢な作り。
様々な工具を使い、やっと口から取り出すと、その全容が明らかになり、予想通り 先端に宝石がついたペンダントだった。
二人して ぼぉーとソレを眺めていると、
突然、その宝石部分が光り出し その光線が じいさんを捕らえた。かと思ったら、そのまま足を伸ばし 船の隅でうずくまって寝ていたネコまで 光線を伸ばしピタッと止まると、やがて 消えてしまった。
目の前で起きた不思議な現象に 微動だにせず見入っていた二人だったが…。
一連の現象が終わった時、はじかれたように ネコにかけよろうとして………異変に気がづいた。
それまで 意思をもって動いていたじいさんが、ヘナヘナとその場に倒れた。
ばあさんは、慌てて その体を抱きおこし、ゆすったり、叩いてみたり…思いつく限りの行動を試してみるが、何をしても…されるがまま、いっこうに動く気配がない。
最後の足掻きとばかりに、胸に耳を当ててみて 目を見開いた。無音なのである。心臓の鼓動が ちっとも聞こえない。
これには、流石のばあさんも動揺を隠しきれず、ヘナヘナと腰から崩れおちる。
その時、トントンと誰かに 肩を叩かれた。
ウツロな目で振り向くと、さっきまでうずくまっていたネコが そばに立っていた。
しかも、何か違和感を感じる。それが、ナゼかはわからないから、うまく説明できないけれど…
『何だろう?』 首を傾げていると
「どうした?」
!!!ネコがしゃべった!!!!
驚くと共に 違和感の正体が判明する。
『高さだ‼』
ネコの目線が高いのだ。
座ってる自分と あまり大差がないのである。
よく見るとネコは、体を起こし 2本足で立っているのだ。
こちらの心情 そっちのけで
なおも、「大丈夫か?」 顔を覗きこみ 尋ねてくる。
その行動が、さらなる驚きを生んでいるとも知らずに…。
目を白黒させたまま、変わらず 何も発せずにいる ばあさん。
ところが「おいっ!」
じいさんは、焦れたように体の上に乗り上げ、顔に両手(?)をあて 覗き込んでくる。
とりあえず、「大丈夫」だと伝えると、体から下りてくれた。
そして、今までに起こったことから なんとなく予想していたが、あまり信じたくなかった事態を 聞くことになる。
「落ちついて聞いてくれ」 まず、前置きをするじいさん。
「どうやらワシ、ネコに閉じこめられてしまったみたいなんじゃ」
あらためて聞かされると 不思議なもので、ネコが発しているのに 口調がじいさんのものだと思えてくる。
反面、現実にあり得ないだろうと頑なな自分もいて、素直に頷くことが出来ない ばあさん。
その後、そんなばあさんを なんとか説き伏せて、下船してきたという。
++++++++++++++
一部始終を聞き終え、ボクは改めて ネコであるじいちゃんを凝視する。
するとーーー
「ナニ,人のことジロジロ見てオル‼」
挨拶がわりに 人を一括したネコは
「ということで ワシがジジイじゃ」
何故か 胸を突き出し(どうやら胸を貼ってるつもりらしい)威張っている。
「………」 沈黙
「…オイ!聞いとるのか⁉」
じいちゃんは、怒り露わに 声をあらげるけど
「そんなの…【はい、そうですか】って、すぐ受け入れられるわけないよ」 ボクは、弱々しく反論した。
「それに たぶん?だけど、このこと父さんと母さんには、言ってないよね? それはどうして?
【じいちゃんがネコってこと】 ボクだけに打ち明けて どうしろっていうの?
まさかボク一人に、元に戻るように解決しろってわけじゃないよね?
試してないけど、そんなのたぶん無理だよ」
ボクは、表面ではそう言いつつも、
『ボール7つ集めなきゃいけないかな?』とか『薔薇が枯れるまでがタイムリミットかな?』なんて 内心考えていた。
ところが
「初めから、そんなこと、期待しとらん!」
失礼にも、じいちゃんは言い切った。
「運よく、被害にあったのはワシだけじゃ。
これが、もう少し若かったり、ばあさんも巻き込まれていたりしたら 違っていたかもしれんが、
もうこの歳じゃ。棺桶の方が近かろうって。
じゃから、このままで構わんと思っとる」
「では、何故オマエにだけ 打ち明けたのか?ということじゃったな」
それまでと態度を一変させ、フニャリと締まりのない顔になると
「だだのよまいごと。年寄りのワガママじゃ。
難しい理由など無く ただ純粋に、オマエにだけは 知っておいて欲しかったのじゃ。
だから、他の奴には教えとらん。
それに言ったところで、たぶん信じてくれん。
大人は、子供と違って 頭が硬いからのぅ。理解させるのに 骨が折れるのじゃ」
最後の理由が、一番 納得だった。
たぶん、ばあちゃんを理解させるのに 大変 苦労したのだろう。
「でも、これからどうするの?
じいちゃん、こんなじゃ もう、漁とか 出れないだろうし…」
ボクの発した問いかけたに
「「うーん。…それなんじゃよー…」」
顔を見合わせ、悩み出す二人(じいちゃんとばあちゃん)。
「とりあえず、生活の方は年金で何とかなるじゃろうが、
ワシ こんなんじゃから、
何かと ばあさんに負担かけちまうじゃろうが…
とりあえず 様子見しか無いじゃろうなー?」
じいちゃんが、締めくくるけど…
当然、その姿は ネコなわけで…。
『うーん…なんだかなぁー…』
違和感を 拭いきれないボクがいた。
その後、おひらきとなり、ボクは ばあちゃんの部屋から開放された。
++++++++++++++
ボクが知らなかっただけで、以前から両親の間では もち上がっていた話だったらしい。
【じいちゃん】と【ばあちゃん】との 同居話である。
ただ 仕事の関係で、なかなか足を踏み出せずにいたと 言っていた。
ところが、今回の件で。
はあちゃんを一人ぼっちには、させておけないと いうことになり 重かった腰が ようやく上がったという訳。
大人って 色々と 大変だよね。
なんて、他人事みたいに呑気に 考えてたら。
ボクも 転校なきゃならないことに 気づかされた。
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hanahui2021.6.1
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