人さわがせな おくりもの

hanahui2021.6.1

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④しゃべるネコ

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その家は、わりと 学校から近かった。
和風…というか、(ちょっと言葉は 悪いけど…)
正直 言って 古くさい家だった。
門の所に、ちょっと低めの木が植っている。
チャイムを押すと、おばあさんが現れ すんなりと家の中に入れてもらえた。
そして今、丸いちゃぶ台のそばに 座らされている。

そのまま しばらく待っていると、
やがて 一匹ネコが、部屋に入ってきた。
驚いたことに そのネコは、動物特有の四足歩行ではなく、人と同じように 体を起こし、2本の足で立っている。
ボクは、自分の目がおかしくなったのではないか?と しつこく 目をこすった。

その状態のまま、ツカツカと 近くまで歩み寄ると、
ちゃぶ台の上に置かれていた湯呑みに手を伸ばし 当然のようにそのうちの一つ取り上げる。
そして、そこに ドッカと腰を下ろすと、
こちらの心情など おかまいなしに、
まっすぐにリク先輩に向けて 口を開いた。
「ひさしぶりじゃのぅ」 
『えっ‼ しゃべった…⁉…』 自分がおかしいのでは⁉   と、しきりに 首をふる。
でも 驚いていたのに、更なる追いうちに。
『ボクの心臓、平気かなぁ?』 少し不安になる。

「はい。ご無沙汰しちゃって スミマセン」 言いながら 先輩は、ネコに頭を下げる。
「こいつ、リョウタって言うんです。
オレの知り合いなんですけど。
コイツ、オレの言ってること全然信じないんですよ。
人間の価値は、【学力や運動能力で 決まるわけじゃない】 って言ってるのに。まったく、信じなくって。
困って、ここに連れて来ちゃいました」 
弱ったようにボクを紹介すると、
自分の出番は終わった というように、テーブルの上の湯呑みを手にとり 一気に飲み干した。
「そうか」 ネコは一言 そうつぶやくと
何かを思案するように 腕を組んだ。
………。
しばらく そのまま黙りこみ。
………。

「リョウタくんは……
ナゼ? 学校や学習塾などは、すぐにテストとかで 優劣ユウレツ をつけたがるのか 考えたこと、あるかのぅ?」
唐突トウトツ に ボクに質問してくる。

「当たり前だが、競争すれば 必ず 一番になる人も ビリになる人物も生まれる。
みんなで 仲良く一番というワケにはいかんのにじゃ」
「………」
「わからんか…
それは、のぅ…
【もしも〇〇だったら?】 で考えると、わかるのじゃよ」
目を合わせ、ボクに言い含める。
「【もしも、みんな平等で 争いのない世界】 だったら…
どうなると思う?」
「最初の頃は、良いと感じるじゃろう。
しかし、やがて時が経つと…
右を見ても、左を見ても。はたまた前も 後ろも…
 自分と変わり映えのしない生活をしていたら、心はどう変化すると思う?」
「自分は 一生懸命やっているのに、
評価が みんな同じだったら、どうじゃろう?
100%手を抜く ようになると 思わんか?」
「みんな、そんな風になってしまったとしたら、
世界は どうなっちゃうかな?」

「例えば、どこかに 食事に行こうと思った時。
どこに行っても 同じ味だったとしたら、どこに食べに行く?
その上、もし自分が お店側の人間だったとしたら?
お客さんを いっぱい入れても、ちょっとしか入らなかったとしても、
同じしか お給料が、もらえないとしたら…
しょうがなうけど…頑張らなくなっちゃうよね!」
「それどころか、飲食店すら 消えちゃうかもしれないよ」

「結局、【誰かにすごいって 認められたい】 とか
【他の人より、良い生活をしたい】 って気持ちが頑張ろうっていう意欲イヨク を 引き起こすんじゃないかな。 
だから、キソうことをやめさせる わけにはいかないのじゃ」
しゃべり続けたせいで 少し疲れたのか、
一息ヒトイキ 入れるように、手元のお茶を 口ヒトクチすする。

「ここまでの話で、競争の必要性は 理解できたじゃろうか?

確認するように、ボクの顔をのぞきこむ。

「【なら、やっぱり一番じゃないとダメじゃないか】 って思ってしまうかもしれん。
じゃが……。
あまり ワシは、おすすめできん!」
「それは のぅ…
一番にこだわるあまり、
性格破綻者セイカクハタンシャ になってしまう】 恐れがあるからじゃ。
運動も勉強もできる いわゆるというやつは、
まだ、昔の日本だったら 存在できたかもしれん。
しかし、これだけ勉学を重要視ジュウヨウシしている 現代の日本では、難しいじゃろうな。
小説やアニメの世界のように、【一度 読んだだけで記憶できる能力】 とか、
【チラッと見ただけで映像記録できる】 みたいなチート能力でも持っていないかぎり 無理じゃろうと思うぞ。
勉強に 一心不乱イッシンフランになっているうちに、友達の言動ゲンドウ すべてが、素直に受け取れなくなり、
シマいには 孤独 という結末にオチイ る危険性がある」
「それとも リョウタくんは、《《チート能力 保持者ホジシャ》》 かのぅ ?」
わかっているくせに、ちゃっかり 確認してくる。
「では、一番になれない自分は、終わりじゃないかとナゲ くかもしれない。
しかし、まだ 手はあるのじゃ」
「知りたいか?」
ボクが 「うん」 素直に意思をしめすと
「そうか…。
それじゃ 教えてやるかのぅ
ニヤリと 笑った。


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