人さわがせな おくりもの

hanahui2021.6.1

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③ 魔の体力テスト

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今日は一日中、体力テストだそうで、非常に休みたかった。
しかし残念ながら、朝 鉢合わせしてしまった母親に みごと 見抜かれてしまい、しぶしぶ 登校するハメになった。

学校に到着するなり 体操服に着替えさせられ、順番に 先生の待つ競技を回らされた。
まず、【50メートル走】で 軽くパンチされたょうな衝撃を受け、続けて 次の【ソフトボール投げ】で 大幅なダメージがプラスされた。
その後。体育館に移動しての 【反復横跳び】
そこで 決定的な事件が、発生した。
自分なりに 順調にこなしているつもり だったのだが。
『あっ‼』  気づいた時には 遅かった。
ドッテーン‼   派手に すっ転んでしまった。
その音はワリと ヒビいてしまい 
あっという間に、皆んなの視線はボクへと 集中する。
今までわりと静かだった館内は 
「「「あはははは」」」 とたんに笑いの渦にのみこまれた。。
言うまでもなく、
ボクの顔は、真っ赤に変化し 穴があったら入りたい という気分におちいる。

そんなことがあった数分後の現在。
時刻は、昼休みへと突入していた。
たぶん、みんなは 教室へと戻り、給食を食べているだろう。
食欲が気分に引きずられ、みるみるうちに食べる気の失せてしまったボクは、体育館の片隅で 体育座りをしていた。
『やっぱり くるんじゃなかった…』
『どうにかして 学校から抜け出す方法は無いかなー?』
そんなことばかりを 考えていた。
初めの頃は、ボクだけで シーンと静まりかえっていた館内も 
今では、パラパラと人影が 見えるように変わっていた。
『人、増えてきたな…』   まわりを見渡し、そんなことを思った時だった。
「あれ?リョウタ??」
不意に声をかけられ
 『は?』 怪訝ケゲンに眉を寄せ、その人物へと視線を移すと… 
【リク先輩‼】   しっかりと 知っている人だった。
リク先輩は、委員会活動がエンで知り合った 2つ年上の男の子。
いつも明るくて 何事にもめげない、そんな身がまえに ひそかにアコガ れていた。
ひそかに リョウタの憧れの人でもあった。
「やっぱリョウタじゃん!
おまえ、こんなとこで何してんだ?
ってか、おまえ…メシ 食った?」

矢継ぎばやに 質問してくる先輩に 
「うわーん! センパーイ!」 と言って 泣きつく。
「おいリョウタ どうしたんだよ」 先輩は 狼狽えながらも、少しでも落ちつけるように ボクの背中をさすってくる。
「まぁ、とりあえず 落ち着けよ! 、
ほら、深呼吸…スー…ハー、スー…ハー…」 
深い呼吸をウナガしながら、
背中では、変わらず温かな手が 上下する。
「運動も勉強も ダメダメなんだボク…」 弱音を吐いた。
「実はさっきも 【反復横跳び】で 転んじゃって…「アハハハハハ」 言い終わらないうちに 先輩は、声をあげて笑った。
「なっ‼」 
瞬間、カッ!と頭にきて 先輩の胸元をつかみかかったボク。
「殴りたきゃ、殴れよ。
でもな、なんで?【面白けりゃ 笑う】っていう当たり前の行為を、オマエにトガ められなきゃならないわけ?
ソレに 笑わなかったら、オマエ 逆に 気にしちゃうんじゃないの? 
本当はオレも、自分のことを バカにしてるんじゃ無いのかって」
その指摘に ボクはハッとする。
確かにそのとおりだ。目からウロコが落ちた 気分だった。
「ついでに言っとくけど。
オレが笑ったのは、それだけ じゃないから」
「それだけじゃない…?」
おうむ返しで タズ ねながら、ボクは胸元から手をはなした。
「なんで? そんなくだらないことでそんなに落ち込んでるんだ?」
「くだらなく なんかないよ‼」 一度は おさめたコブシ を、再び、くり出しそうになる。
「しょせん…先輩も、他の人と同じなんだ…
他人事だから そんなに呑気ノンキなことが言えるんだよ!」
ボクの怒号ドゴウに、一瞬 たじろいだ先輩だったが。
 くだらないよ! 
そんなことで人の価値は決まるもんじゃない‼…違うか?」
強く 言い返すのではなく、ボクという ように おだやかな話し方をする。
「それに オレも苦手だよ。勉強も、運動も。
さっき、実はオレも…オマエと同じように 転びそうになったんだ。【反復横跳び】
アレ、くり返すうちに 足もつれてくるよな!
ダカラ…けっこういると思うぜ 
『そう、なるよな~』って、オマエに賛同サンドウ したヤツ」
「でも…実際、やっちゃったボクとは ちがうよ…」
いつまでも 自虐ジギャクの泥沼から 浮上しようとしない リョウタ。
そんなボクの頭を、ポンポンとあやすように叩いた先輩は
「じゃ、放課後、オレに付き合え。良い所に連れてってやる」
ボクの都合も尋ねず、やや強引に 言いはなった。
「良いところ?…?」
ボクは、インコのように マネしながら、首をかしげた。


そうして…放課後、ボクたちは ある家のドアを叩いていた。




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