ネコになっちゃった⁉︎

hanahui2021.6.1

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④しかけられたイタズラ

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夕方になり、おまちかねの母さんが 仕事から帰ってきた。
「あら! 今朝のネコちゃんじゃない‼
おまえ、ウチが気に入ったの?」
母さんは、顔をほころばせ、ヒョイと ぼくを抱き上げる。
しかしーーーそれがジゴクの始まりだった。
「じゃあー ご飯の前に お風呂入っちゃおうねー」 と、にっこり笑顔。
そのまま 強制的にお風呂場に 連れていかれる。

昔からの習性が、根強く 残っているのか?。
猫は基本的に 体がぬれることを きらう。
特に 今日なんか 暑くて、ほとんどの時間 室内だったのだからそんなに 汚れているはずがないのだ。
こんなの なめておけば 十分なのに…
そう思ってしまい
『イヤ、コレ 人間だったら なめて体をキレイにするなんて、そんなこと思いやしない。
逆に汚い。シャワーをあびた方がサッパリするって 絶対 思ってる!』
あーぁ、しっかり…ネコになっちゃってるんだなーしみじみ…
ワリと、しっかり…落ちこみながら
母さんが、好意?でかけてくれているであろう ぬるめのドライヤーの風に その身をゆだねていた…


『…ホント…ツカれた…』 ヨロヨロ…と おぼつかない足どりで、居間へともどる。
「どうしたー?」
とたんに じいちゃんの間のびした声が 飛んできた。
「どうもこうもないよ…」 ぼくは返事しながら、
「ハァー…ヒドイ目にあった…」 
へたり込むように、顔から 座布団へと ダイブした。
ハァー…母さんに お風呂に入れられたんだ
ため息が 止まらない。
くぐもった声で ゲンナリと答える ぼくを尻目に
「なんだ、そんなことか」 じいちゃんは、なんでもないことのように あっけらかんと言いきる。
その言葉を耳にして ぼくに、フッと 疑問が わいた。
「アレッ⁉ じいちゃんは、平気なの、おふろ?」 
不思議に思い たずねてみると 
「ワシは、毎度 梅さんに誘われとるからのぅ。 
風呂ごときに負けてたまるか! と ガマンしとるのじゃ。
いゃ~! もてる男は、困るのぅー」 恥ずかし気もなく 言ってのける。
『そうだった…この色ボケじじぃ…ばあちゃんに弱いんだった…』 
ガツンと 大きなハリセンで 後頭部を殴られたようなショウゲキを受け、ぼくは 怒る気力も無くし
「ふーーーん…」 あいまいに 答えつつ、さらに 奥を求め、しつこく 座布団に顔をこすりつけるのだった。

++++++++++++++

その夜、無事に食事も終わり、部屋のすみでうずくまって眠っていた。
かろうじて 部屋の空調であるエアコンは、消されることを まぬがれたが、それ以外のものは、全て 動きを止めていた。部屋の照明も同様で、ある。
さっきまで 共に居たハズのじいちゃんは、ばあちゃんの部屋へと 当然のように引きあげていったのである。
ポツン…。
真っ暗な部屋の中、ぼくは さびしく一人で取り残されていた。
その時…
ギシッ、ギシッ、ギシッ…
床をきしませ、誰かが近づいてくる。
その音に反応し、ぼくは顔を上げ、体をこわばらせた。

数分のち。
そこには、見たこともない 尾っぽが二つに分かれた猫が 姿を見せていた。
『猫又だ‼初めて見た!』 ぼくは、その姿に 一瞬 コウフンしたものの、
『アレ?…』 首をかしげる。
『もしかしたら、知ってる…かも⁇』 
なんとなく、体のモヨウに 見覚えある気が…する…。
頭をフル回転させ、最近、二、三日の記憶を引きずり出していた

ほどなく…思い出した。
昨日の朝、家を出る時に見かけた猫であることを。
たしか、あの時…『なにもして、ない…よ…なあ?』
あまりにも おぼろげで、断言することができない自分に やや 腹が立つ。
しかし…ぼくが…自分自身に良いように かいしゃくしちゃてるダケ かもしれない。
そう思って ぼくは、すかさず 猫にたずねてみた。
「ぼく、キミに 何かしちゃったかな?」 
ところが…返ってきた答えは、予想もしてないものだった。
「なにもしてない にゃあ。
ただ 面白そうだったから、イタズラした だけにゃあ」 っと、こともなげに 言いはなつ。
『お、おもしろそう…』 って。
あまりの 理不尽な言い草に、口をパクパクさせたまま 動けずにいると 
「おまえ 私見て、ヒマでいいなあって…うらやんでるの ダダもれだった にゃあ。
だから、オマエに イタズラするって決めた にゃあ」 ケタケタと笑い転げている猫又。
「えっ⁉ たった、それだけ‼」 すっとんきょうな声が出た。
正直 言って けっこう 頭にきていた。
だって…面白そうだった って 理由だけで。
しかも、ただそこにいたから的な理屈で ひょうてきにされた こっちは たまったものではない!
怒るな!という方が、‘無理だろう。

変わらず 彼女の高笑いがひびく中、ぼくは、そんな猫又に飛びついた、。
「もどせるんだよね⁉ 人間に?」 必死なぼくを  あざ笑うように 静かに 猫又は告げる。

「そんなこと、無理なのにゃあ」


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