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③いろいろと 思ってたより…
しおりを挟む暑くはないが、ゆるーく冷房がかけられた部屋で
ことの一部始終、朝起きてから今までのことをと じいちゃんにはなした。
話し終えると、それまで 黙って聞いていたじいちゃんが一言。
「まさに 【禍福(かふく)は あざなえる 縄(なわ)のごとし】 じゃな!」
と わけ知り顔で、ウンウンと うなづいた。
しかし ぼくは、なんのことか? ワケがからず
キョトンと 固まっていると、
「わからんか?」 やや不満そうに じいちゃんが聞いてくる。
ぼくが素直に コクン。
クビを縦(たて)に動かすと、
[そう、さ なー…」
しばらくウデ組みをして 考え込んでいたじいちゃんが、ポン!と手を打ち
「オマエにわかるように言うとすると…
【楽ありゃ苦あり】 だな。
意味は、人生とは コインの裏表のように 【良いこと】や【楽なこと】というのは 【悪いこと、苦しいこと】とセットになっておる。
だから 単純に【悪いことが起きた!】と騒ぎ立てるものではない。
まさに水戸黄門の世界じゃのぅ」と言って
♪♬じ~んせい ラクありゃ ♬♩ク~も~あるさー♪♬ と歌い出した。
そのまま続くものだと 思ってぃたら
「あっ! ちなみに 言っておくけれど、
【良いことの後に 悪いことが起こる】といって、
それをさけようと、
事前に 万引きなどの悪い行為をするというのは、次元の違う話じゃ。
そんなことで 防げるはずがないし、
第一、そんなことをしたら、お縄になっちまうじゃないか‼」
ブルル…と体をふるわせるじいちゃん。
「なんの防御にもならないだけでなく 【恥の上ぬり】、【泣きっ面にハチ】 といった 苦行を さらに重ねることにつながってしまうのじゃ」 そこで一度 言葉をきると、
「ところで、今回のオマエの件じゃが」
顔を真剣なものへと変化させ、ぼくへと あらためて向き直る。
「おきてしまったものは仕方がない。
戻る方法も不明なのだから、むやみやたらに騒ぎたてず
とりあえず 楽しむことじゃ」
「とても…そんな気に 慣れないよぉー」
ぼくが弱々しく吐き出すと
「【天は、乗り越えられる試練しか 与えないもの】じゃ。
オマエなら乗り越えられる と判断したから、与えられた。
そして その試練を乗り越えた後には オマエは必ず成長しておる。
言いかえれば、【成長しろ!】と 天から オマエは、さいそくされておるのじゃよ。
そう思えば、【ガンバル気力も起きてくる】と いうものじゃろ!
ま、今回のソレは試練というほどのものではないがな」
一瞬、何かの宗教? と疑いたくなるようなことを言い出した。
「わかったよ…」
頼みの綱(?)だった じいちゃんにまで、追い打ちをかけるように見放されて ぼくは、うなづくこと しかできなかった。
++++++++++++++
「ところで…」
ぼくは 気を取りなおし、先ほどから疑問に感じていたことを 口にした。
「めっちゃ暑いワケじゃないんだけど…
なんで? こんなにゆるーくしか クーラー 着けてないの?
ぼくの質問に、
「うーん…」 しばらく腕組みをしたまま 考えこんでいたじいちゃんだったが。
「【百聞は一見にしかず】 じゃ。
まず、自分の部屋で 試してみるがよい。
それに、ワシとオマエでは 感じかたも違うかもしれん からのぅ」
返答を聞いて、さらに突き放されたような気分になり
「わかったよ…」 わずかに むくれながら、自分の部屋へと向かう。
ピッ…。 ドアを閉めて リモコンでエアコンを起動する。
しばらくすると…
『ウルサッ‼』 さっきリモコンで起動させた時にも感じたが…やたらと音がうるさい。
いつも使っている時に感じたことないのにな?なんて呑気に思っていたら、今度は
『さむっ‼…いったい何度に設定されてるんだよ?』 あわててリモコンの温度設定を確認すると。
25℃ 適温だ。
決して 寒さを感じるはずのない温度を示していた。
『もしかして、こわれた?』
その間にも ゴォー ゴォー と吹き出し口から ひっきりなしに風が出ていて…
ピッ…。
ぼくは、エアコンを停止させ、逃げるように部屋からとび出した。
++++++++++++++
じいちゃんは、部屋から渋い顔をして 飛び出してきたぼくを 目にすると
「やっぱり、同じか…」
ヤレヤレ…というように クビを横にふりながら つぶやいた。
目まぐるしい状況の変化についていけず、ぼくは ヨロヨロとへたり込む。
じいちゃんは、そんなぼくから目をはなさず
「どうやら ワシもオマエも、人からネコに変わってしまったことで、あらゆる面に違いが出てるようじゃのぅ」
目を細め、しみじみと語るじいちゃんに
「えっ じいちゃんも?」 思わず つめよる。
そんなぼくに じいちゃんんは、しっかりと目を合わせ
「ワシも同じじゃよ」 と やわらかく言った。
「話をもどすが…
オマエも感じたようじゃが、掃除機やエアコンといった生活家電の出す音が さりげなく苦手だし、快適だと感じる温度も 人とは異なる。
おまけに 人間と同じようには食べられない。
もし、同じように食べるとしたら、その量はごく少量。
もし?調子づいて食べすぎると、その後 気持ち悪くなって吐くことになったり、下痢をしたりと 苦しむことになる。
人と同じように 【毎食 違うものを食べる】 という行為には無理がある。たいがいが、ペットフードじゃ。
ちなみに、人のように 共に食卓を囲むのも好きじゃない。
食事の時間は、一人で…自分のペースで食べるのが好ましい」
「じゃ、じいちゃんも一人で食べてるの?
それって、すごく さみしくない?」
物心ついた時から、食事
は 誰と一緒にすることが 当前だった ぼくからすると、それは非常に悲しく思えた。
「いや。ワシは梅さんと 一緒に食事しとる。
だって…梅さんからの誘いじゃからのぅ。
そうそう無下に 断るわけにも いかんじゃろう?」
『まったく、このジジイは‼』 って 頭を抱えたくなった。
このじいさまは…自分の嫁である【梅】に、
結婚してから ○十年も過ぎているというのに、今でも まだベタ惚れなのである。
まぁ、それで なにか不都合が生じるわけではないから 別にかまわないのだけれど。
「じゃが他のやつは別じゃ、
たとえオマエであっても、共に食事したいとは思わん」
キッパリと言い放つ。
しかし。
それまでの発言のせいで、まったく いげんが無くなってること。
『自分で 気がついてる かなー?』
ぼくは、ヤレヤレ!と 天を あおいだ。
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