異世界転移したアラサー~いきなりメスガキに襲われたけど、コイツに勝たないと元の世界に帰れないってマ?~

やまたふ

文字の大きさ
上 下
22 / 35

第22話 女の子にプレゼントしたこと? ……もちろんありますよ、当然じゃないっすか②

しおりを挟む
「……無理だ」
 俺は頭を抱えた。

 若い女の子へのプレゼント……バキバキの童貞には高すぎるハードルだ。

 なんだろう。女子って何が好きなんだ?
 イケメン? どうせイケメンだろ? うわぁ、そんなことしか浮かんでこねぇ。

 もうとりあえずなんでもいいから高級そうなものでいくか? ブランドもののバッグとか。
 一説によると女性はデザインより値札を見てプレゼントを判断するという研究結果もあるらしい。誠意は金額、みたいな。足りないセンスは金額で補う感じでいくか?
 いやでも、よく考えたらあんまり高価なモノは錬成できないんだよな……。

 実は一見万能そうな錬成魔法だが、消費魔力がエグいという致命的弱点がある。
 物の大きさや複雑さ、それと希少性に比例して必要な魔力がどんどん増大する。好きなものを作れる、なんてお題目だが、実際はかなり対象が絞られるのだ。

 あと当然っちゃ当然そうだが、おカネの錬成はできない。
 師匠の本曰く、強い煩悩に阻害されて失敗するらしい。本には適当な金属を集めてやろうとしたらグズグズのデロンデロンななにかできてしまったと書いてあった。
 ……やろうとはしたんだな、あのじいさん。

 あーあ。こんなとき元の世界なら『女子 10代 プレゼント オススメ』とか検索できるのに。
 自分の脳みその圧倒的なデータ不足が嘆かわしい。

「くそ。今までの会話にヒントでもあればなぁ……」
 なんかそれっぽいこと言ってなかったか? アレが欲しいとかコレが欲しいとか。
 もしくはそこまでピンポイントでなくとも、興味のあることとか……あるいは気にしていることでもいい。

 俺はとにかく手がかりを求め、メスガキの過去の言動を探った。

 そして、見つけた。

「……美容」

 口にした瞬間、これだと確信した。

 古今東西、女子なんて自分をかわいく見せることに余念がない生き物だ。
 ヤツらは基本『美』に飢えている。それは異世界人だって同じはず。
 その証拠に、ヤツは前回こんなことを言っていた。

 ――女子の髪を不用意に濡らすなッ!!!

 あれこそまさしく見た目に気を使っているがゆえに出た言葉。
 まあぶっちゃけあんなにずぶ濡れにされたら誰でもキレそうなもんだが……そこは置いておこう。

 で、肝心の何を作るかだが。
 これに関しては珍しくすぐに決まった。

 美容という単語が浮かんだ際、同時に俺の頭の中には“あるもの”が思いついた。
 というのも、経験がないと言ったが、実のところ俺はそれを一度女性にプレゼントしたことがあるのだ。

 それが――『美顔器』。

 手のひらサイズの、自分で顔に押し当てて使うタイプ。
 振動と熱で筋肉やリンパを刺激し、肌を活性化させる。マッサージ感覚でも使えて、当時あげた女性からは「けっこう気持ちいい」と好評だった。

 ま、女性と言っても母親なんですけどね。
 ごめんなさい、見栄を張りました。こんな成功体験しかない自分が悲しい……。

 ともあれ、これでなんとかプレゼントは決まった。
 あとは材料を用意して錬成を実行するだけ……なのだが。

「…………」

 俺は手に持った“スマホ”をジッと見つめた。

 ……ぶっちゃけた話、絶対にコイツを使わなければいけないということはない。
 モトとなる素材さえあれば、錬成自体はできるはず。この場合、美顔器なら金属とプラスチックとセラミックなどがそうだろう。その原料を町で調達してくれば事足りる。

 だが、錬成魔法は――ひいては魔法とはイメージが物を言う世界。

 美顔器の外観は想像できても内部構造を知らない俺にとって、今のままでは弱い。
 振動と熱で――という機能をいったいどういう仕組みで生み出しているのか、朧気な知識で想像するしかない。

 だがしかし、そのどちらの機能も有しているのがスマホこいつだ。
 であれば、こいつを素材にすれば俺の足りない知識と想像力を補ってくれるのではと考えたのだ。

「く……」

 しかし、如何せんもったいない。

 作ろうとしている美顔器は数千円程度。一方、スマホは数万円。
 明らかに価値が釣り合っていない。

 俺は悩んだ。悩みに悩み抜いた。
 そして決断した。

「……背に腹は代えられない、か」

 すべては、このデススパイラルから逃れるため。

 ならばこれは必要なコストと割り切るしかない。
 それに、この世界じゃスマホなんてたいして役に立たない。せいぜい時計代わり。もしくは文鎮。
 であるならまあ……惜しくは……うん……その――。

「ええぃ――【錬成魔法アルキマイズ】!」

 もういいヤケクソだ。やったらぁ!

 魔法が発動する。
 地面に置いたスマホが緑色に発光し、徐々にそのフォルムを変えていく。

 結果は……成功だった。

 そこにあったのは、紛れもなく以前見た記憶のある美顔器だった。
 ディテールこそやや異なるものの、かなりイメージしたものに近い。

 ただ、代償もあった。

「ハァッ……! ハァッ……!」

 やばい……なんだこれ……!?
 めちゃくちゃ苦しいっ……!!!

 全身を激しい疲労感が襲う。マラソン直後にさらに100メートル走をさせられたみたいだ。
 呼吸ができない。肺が張り裂けそうなくらい痛い。
 死ぬほど脱糞を我慢しているときみたいな嫌な汗が噴き出してくる。

 くっ、これが魔力が枯渇した反動か……!

 やはり錬成魔法は魔力を喰うらしい。
 想定はしていたが、このサイズでもこれほどとは。機能が単純とはいえ、やはり機械のように複雑な物体を錬成するのは無茶な行為だったようだ。

「……ふぅ。まさかたかがプレゼント一つで死にかけるとは……」
 やっとこさ起き上がりながら汗をぬぐう。
 未だかつて、プレゼントひとつでこんなに身を削った人間が他にいるだろうか。

「しかし、我ながら見事な出来栄えだな」
 試しにスイッチを入れてみると、ちゃんと問題なく動作もした。
 いける。市販のものにも全く見劣りしない。

「クク……」

 これで準備は整った。

『ねぇキミ、ちょっとイイものあるんだけど……ほしい?作戦』――発動だっ!! 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...