上 下
15 / 35

第15話 ハプニング……そう、これはハプニング。俺は決してロリコンでも変態でもない②

しおりを挟む
「なんでだよっ!!!」

 そこにあったのはまたしてもブーメランだった。
 違いと言えば金色なだけ。

 なんなんだこの店、実はブーメランの専門店なのか??
 あの剣やら槍はただのオブジェで、本当は観光地によくある旅行客を騙して稼ぐお土産屋みたいにブーメランを売りつける店なんじゃないか???

「【魔法排除マジックリジェクトブーメラン】――略して“MRBエムアールビー”だ」
「……ああ、はい」
 すごい。普通に解説し始めた。
 しかもちゃんとした名前まである。うっとおし。

「フ。それにしても驚いたぜ」
「はい?」
「まさかブーメランをあんな応用のさせ方で使う奴がいるなんてな。俺にはわかる。兄ちゃんにはブーメランを使いこなす才能がある」
「いや才能ってそういうことっ……!?」
 とんだぬか喜びじゃねーか!

「これで名実ともに兄ちゃんは立派なブーメラン使いだ。さあ、勝利をその手に掴んで来い。手から離すのはブーメランだけ……ってな」
「……はい」
 め、めんどくせぇ……! てゆーかその顔でウインクはやめてくれ。

 ま、まあいいさ。
 別に何の武器であるかはそこまで大事ではない。

 要は強いかどうか。それがすべてだ。
 見栄えなんてものは所詮オマケよ。

 実際、効果だけを見ればこいつは間違いなくチート級だ。
 むしろよくぞ提供してくれたまである。

「ちなみに代金は200万だ」
「たっっっっかッ!!!!」

 こうして、俺は人生で初めてローンを組んだ。



 ――そして昼。いつもの草原。

 対峙したメスガキの視線は、やはり俺の右手に注がれていた。

「またブーメラン持ってる……」
 呆れた表情。ものすごくドン引かれてる。

「え? どうしたの? おじさんブーメラン屋さんになりたいの?」
 うるさいな。俺だって好きでブーメラン使いやってるわけじゃないんだよ……。

「しかも金色とか趣味悪。それじゃ売れないよ? 観賞用にしたってダサすぎるもん」
 ……やばい。なんか泣きそうになってきた。

「あと――」
「うるさい! いいから始めるぞ!」

 ダメだ。これ以上アイツにしゃべらせたら本当に泣いてしまう。
 ここは一気に片を付けるしかない……!

 勝負開始。
 俺は小細工なしに、とにかく全力でブーメランを放り投げた。

「あらら。懲りないね、おじさん。武器は効かないってば」

 弧を描き迫るブーメラン。
 だが、やはりメスガキに避ける気配はない。自分の魔法に絶対の自信があるのだろう。

 大丈夫だ……性能は申し分ない。
 当たれば勝てる。そのはずだ……!

 俺はすべての運命をMRB(200万G)に託した。
 あとはもう、祈るしかない。あのくそダサブーメランが俺に勝利をもたらすことを。

 いけ……いっちまえ!

 そして――ついに“そのとき”はやってきた。

 パリィイン――。

 まるで窓ガラスを野球ボールが壊すように、MRBはメスガキの【対物理障壁アンチマテリアルバリア】を粉砕した。

「なっ……!?」
 まさか絶対の信頼を置くはずの防御魔法が砕かれるなど想像すらしていなかったのだろう。
 驚愕するメスガキ。無論、それは俺も同様だった。

 すごい……! 本当にあのバリアを無効化した……!
 やった……ついにやったぞ。今度こそ俺はついに――。

 だが、そこで事件は起こった。

 勢いそのままに強襲したMRBは、わずかだが直撃コースを外れメスガキの衣服を掠めた。
 場所はちょうど上半身、且つ身体の正面。
 高速で回転する刃に、薄い布地が為す術なく切り裂かれる。

 必然、露出する肌――。

「……ッ!!!!!」
 その光景に、俺は思わず目を奪われた。

 そこにあったのは……山だった。

 決して大きいとは言い難い。標高にして数センチ程度。
 けれど、たしかな膨らみが双つ、そこには存在していた。
 いや、それだけでない。丘の頂上にはピンク色をした小さな謎の建築物が建っていた。

 そうだ、あれはたしかTKチク――

「死ねッッッ!!! この変態ッッッ!!!!!」


 ザシュッ!!!


 余談だが、その日の手刀はこれまでで一番の速さを記録したという――。



☆本日の勝敗
●俺 × 〇メスガキ

敗者の弁:はい、何も考えられませんでしたね。布が破れてはだけた瞬間、頭が真っ白になってしまいました。


 ……でも、いい思い出にはなりました。明日も頑張れそうです。(吉川)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...